腎機能検査
「腎臓の構造と働き」の項で説明したように腎臓には様々な働きがあります。それでは腎機能検査とは、どのような働きを調べるのでしょうか。
腎機能検査とは?
腎臓の最も重要な働きは、体液の量や組成(特に電解質)を一定に保つことです。
これは体液の量や組成が変動すると生命にかかわるためです。しかし、このように重要な働きであるが故に、末期腎不全になるまで、様々なメカニズムによって維持されます。これが無ければ、人類は太古の昔に滅んでいたでしょう。従って、体液の量や電解質の変化から、腎機能低下を知るのは非常に困難です。
このため実際には、機能しているネフロンの割合を調べることによって、腎機能の評価としているのです。もちろん、病気によってネフロンの傷害部位が異なり、糸球体の病気と尿細管や間質の病気では病状も非常に異なります。しかし、どの部位の病気であっても、結局個々のネフロン全体の機能が無くなるわけですから、機能しているネフロンの割合を評価することによって腎機能を知ることが出来ます。
この目的からは、糸球体からろ過される血液(血漿)の量(糸球体ろ過値;正常では約100ml/分)を調べるのが最も理にかなっています。最も簡単な方法は、糸球体からろ過されて尿に排泄される老廃物の血液の濃度を調べます。よく調べられるものに、クレアチニン、尿素(習慣で尿素に含まれる窒素の濃度《BUN》で表されます)などがあります。これらは糸球体からろ過されて尿に排泄されるため、糸球体ろ過値が低下すると血中濃度が上昇します。これは腎機能低下を意味します。
クレアチニンは自分の体の筋肉の中で産生され、筋肉の量が変わらない限り、その産生量は変化せず、食事の影響も殆ど受けず、尿細管での再吸収もあまり受けないためクレアチニンの血中濃度は糸球体ろ過値の良い指標となります。一方、尿素は蛋白質が体内で代謝された老廃物ですから、蛋白質の取り方で血中濃度は大きく変わります。また、水分を制限されたり、下痢や、非常にたくさんの汗をかいたりして脱水状態になると、尿細管で尿素の再吸収が亢進し、腎機能障害が無くても上昇することがあります。
血液検査で異常なければ安心ですか?
腎臓を片方摘出したとしても、クレアチニンなどの老廃物の血中濃度はほとんど上昇しません。
すなわち腎臓が片方しか無くても糸球体ろ過値はほとんど低下しないのです。これは、腎臓が大きな予備力を持っており、残っているネフロンが2〜3倍にも頑張ってくれるからで、片方の腎臓を摘出しても腎機能はほとんど正常に保たれます。
逆に考えると、クレアチニンの濃度が正常でもネフロンの数は半分以下、と言う場合もありうるわけで、血液検査が正常だからと言って、腎臓が正常だという保障は全くありません。予備力を使い果たしてはいないという状態に過ぎません。。
従って、クレアチニンの血中濃度が正常範囲以上に上昇している状態は、ネフロンの数が1/3以下に減少した状態と考えなければなりません。血液検査で腎機能が低下しています、と言われた場合は、腎不全がかなり進行していると判断する必要があります。ですからクレアチニン濃度が上がらないうちに治療を行う必要があるわけです。
最も正確な腎機能検査は?
クレアチニンの検査は、実はかなりの個人差が有ります。
これはクレアチニンの産生量に個人差が大きいためです。クレアチニンはほとんど体内の筋肉の中で産生されるため、その産生量は筋肉量によって大きく左右されます。筋肉の多い若い男性と、筋肉と少ない高齢の女性では、クレアチニンの産生量が非常に違うため、同じクレアチニン値でも本当の腎機能は非常に異なります。
より正確に判定するためには、糸球体ろ過値(GFR)を算出する必要があります。糸球体ろ過値は、クレアチニンから推算式を使って推定する方法(推算GFR)と、クレアチニンクリアランスを測る方法があります。クレアチニンクリアランスを測るには、血液のクレアチニンと1日尿に排出されるクレアチニンの量(1日に産生されるクレアチニンの量)を測定する必要があります。
クレアチニン値の注意
測定法や正常値にも注意しましょう。
クレアチニンの測定には酵素法とヤッフェ法という2種類の方法が使われています。2種類の測定法にはそれぞれ長所・短所がありますが、最近は酵素法が主流です。この二つの方法の間には、わずかですが正常値に差があることに注意する必要があります。
片方の検査(ヤッフェ法)は1.3mg/dlまで正常、他方の検査(酵素法)では1.0mg/dlまで正常と言うように差があるのです。1.0mg/dlまで正常という検査法で1.3mg/dlであれば、既に腎臓が2/3以上障害されていることを示しているわけですから、我々は腎不全と診断します。
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