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腎臓専門医からの忠告

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我が国では3歳児検診から始まって、死亡するまで無料で検尿を受ける機会が保証されています。学生は学校検診、職場では職場検診、その他の方は住民検診として検尿が行われています。これは検尿と言う簡単な検査によって、様々な病気発見の糸口となるためです。

しかし問題は検尿で異常を指摘された方が、その後どのような対応を取られているか、です。このホームページに来られた方の中には、多分最近の検尿で異常を指摘された方や長年異常を指摘されつつも無症状なため放置されている方が多いと思われます。だからこそ、このホームページのタイトルが目に付いたのでしょう。しかし我々専門医の所に来られて、「いつから検尿異常を指摘されたのですか?」と質問すると、もちろん正確に記憶されている方もおられますが、大半はうろ覚えです。

何故でしょうか?

症状がほとんど無いからです。また検尿異常の怖さを知らないからでしょう。 ちなみに検尿異常(蛋白尿や血尿)が長く続く方の中には慢性糸球体腎炎と言う病気が隠れていることが多く、この病気が長く続くと慢性腎不全となり、最終的に透析療法が必要となることもあります。また検尿で糖尿病を疑われて(尿に糖がおりる)、精密検査で糖尿病と診断されている患者さんが我が国で実に約700万人もおられると推定されています。糖尿病も初期には症状がないため放置されがちですが、長期間の間に全身の動脈硬化が進行し、網膜症によって失明する方や、自律神経障害によるインポテンツを始めとした様々な症状に加えて、腎臓にも病変が起こり(糖尿病性腎症)、ネフローゼ症候群(尿に蛋白が多量に漏れることによって浮腫を呈する)などを呈しながら、最終的に慢性腎不全となり透析のお世話になる方が急増しています。

透析を必要とする患者さんの数は年々増加し、2007年末には27万人以上患者さんが透析療法のお世話になりながら、苦しい生活を送っておられます。また年間約37,000人の慢性腎不全の患者さんが新たに透析を始めておられます。透析を始める患者さんの平均年齢は66.8歳で、70歳代の方が最も多く透析に導入されています。

透析が必要となる慢性腎不全の原因も従来は慢性糸球体腎炎がトップでしたが、1998年には糖尿病性腎症が上回りました。しかし慢性糸球体腎炎の患者さんが減少している訳では無く、年間約1万人の患者さんが透析を始めておられます。さらに問題なのは、透析を始める患者さんの大半が専門医による治療を受けておられないという悲しい事実です。

もし蛋白尿や血尿の段階で我々腎専門医を受診すれば、進行する可能性の有る場合には腎生検(背中から針を入れて腎臓の組織を採取する検査)を行って正確に診断し、必要に応じた薬物療法を行い、透析を避ける、あるいは避けることは困難でも遅らすことは出来る治療は可能です。しかし実際に透析を始める年間約1万人の慢性糸球体腎炎の患者さんで腎生検を受けて、適切な治療を受けられた患者さんは10%以下です。ほとんどの患者さんは積極的な治療が困難である慢性腎不全となってから、専門医や透析病院に紹介されているのが実状です。糖尿病も同様で合併症が出てから慌てても手遅れなことが多いのです。

このような現状から、「検尿異常」は症状が無くても怖い病気の前兆と考えて、専門医を受診されることをお勧めします。もちろん現在かかりつけの先生を受診されている方は、よくご相談されて、必要が有れば紹介状を書いていただいて専門医を受診して下さい。いつから検尿異常や腎機能の低下があるか、などの情報が役立つことが多いのです。

忙しい、忙しいと検尿異常を無視しないで、是非専門医を受診される事をお勧めします。

大阪府立急性期・総合医療センター
腎臓・高血圧内科
主任部長 椿原美治

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