甲状腺腫

どんな病気?

くびの前面にある甲状腺が、様々な原因で大きくなったものを、甲状腺腫といいます。甲状腺の腫れ方は原因により様々で、甲状腺全体がびまん性に腫大すること(バセドウ病や橋本病などの場合)も、部分的に腫大すること(甲状腺に結節や腫瘍などの「できもの」がある場合)もあります。

甲状腺の腫れに気が付いたり、健康診断で指摘された場合には、甲状腺(内分泌)専門の医療機関の受診をお勧めします。

甲状腺結節・腫瘍にはどんなものがあるの?

甲状腺結節・腫瘍の頻度は多く、健康な人でも詳しく調べれば10人中約3人の割合で甲状腺内の「シコリ」が見つかります。その多くは「腺腫様甲状腺腫」という良性のものです。もともと甲状腺が全体的に肥大しやすい性質があり、その結果、甲状腺の中に結節や液体の袋(嚢胞)がいくつもできてしまうものです。大部分は心配いりませんが、悪性の「シコリ」が若干生じやすいとされています。また、良性でも大きくなってきて自覚症状を伴うようになることもあるので、主治医の方と相談して、経過観察が必要といわれた場合は、定期的に医療機関に受診し、診察を受けて下さい。

その他に、甲状腺の中に単発の「シコリ」ができる場合があります。この場合は「甲状腺腫瘍」が疑われます。多くは良性(腺腫)ですが、検査をして経過を見たり、場合によっては悪性(癌)の可能性がないか調べる必要がありますので、甲状腺(内分泌)専門の医療機関に受診して下さい。

このように大部分は良性の疾患ですが、稀に悪性腫瘍(癌)が見つかる場合があります。しかし甲状腺癌は、ごく一部の例外を除き大部分は性質のおとなしいもので、他の臓器の癌と比べ、治療成績は良好です。適切な時期に甲状腺(内分泌)専門の医療機関を受診し、検査を受け、治療されることが大切です。

なお、きわめて稀ですが、急速に大きくなる甲状腺腫もあります。甲状腺が急に大きくなってくる場合には、早急に専門の医療機関を受診してください。

必要な検査は?

画像検査として、甲状腺超音波検査・CTスキャン・MRI・放射線シンチグラムなどがありますが、もっとも簡単で有効なのは甲状腺超音波検査です。ベッドの上で仰向けになり、首を伸ばした姿勢をとって頂き、首の前面にゼリーを塗って、測定装置(プローブ)を表面から当てて甲状腺の中の様子を観察します。超音波を使って観察しますので、痛みや放射線被曝の心配はいりません。

甲状腺超音波検査の結果、細胞の性質まで詳しく調べた方がよさそうであれば、穿刺吸引細胞診という検査を行うことがあります。これは超音波で内部を観察しながら、腫瘍に向かって針(血液を採る時に使うものと同じ、細いもの)を穿刺し、腫瘍から一部の細胞を吸引して、その細胞の性質を調べるものです。この検査は良悪性の診断に比較的有効なのですが、一部の腫瘍(濾胞腺腫と濾胞癌の鑑別など)では診断能に限界があるため、主治医の先生とよく相談して、検査を受けるべきかどうか決めるようにして下さい。

血液検査では、主治医の先生の判断により、甲状腺ホルモンや甲状腺が作っているもの(サイログロブリン)を測定することがあります。甲状腺結節が稀に甲状腺ホルモンを過剰に作ってしまうことがあるので、甲状腺ホルモンに異常がないか調べるために検査します。またサイログロブリン値の変動は、病気の強さの判断の目安になることがあります。

治療は?

良性と判断できるものでも、ある程度の大きさがあり、自覚症状を伴うものや、次第に大きくなる傾向が続くものは、治療の対象になります。

「嚢胞」の場合、針を穿刺し内容液を吸引して小さくすることができます。ただし、吸引して一旦小さくしても、また液体が貯留して元の大きさに戻ってしまうこともありますので、主治医の先生と治療法についてよく相談して下さい。

良性の結節(腺腫)の場合、甲状腺ホルモン剤を内服して結節を小さくする方法もあります。しかし、充分な効果が得られる確率は高くないので、主治医の先生とよく相談し、治療法を選択して下さい。

悪性の場合やその可能性がある場合、あるいは良性でも腫瘍が非常に大きかったり、ホルモン分泌が強く健康を害すると判断される場合には、手術をお勧めすることになります。手術を行う方針となった場合は、甲状腺を専門とする外科の医師に相談し、治療を進めていくことになります。