「第1回東京女子医科大学ケトン食セミナー」に参加しました

 平成30年2月17日(土)の午後3時30分から約2時間にわたって、「第1回東京女子医科大学ケトン食療法セミナー」が、東京女子医科大学病院の総合外来センター5階大会議室において、医療関係者、栄養士・調理師、患者さん・ご家族などを対象に開催されました。
 このセミナーは、参加費無料で、定員50名の事前申込制で参加者を募ったところ、全国から多数の申し込みがあり、当日は93名の方々が参加されたそうです。
 これまで約10年間にわたってケトン食の普及活動をしていますが、ケトン食について専門医から「ケトン食療法の知識」を向上させる講義が行われるとともに、実際にケトン食療法に取り組んでおられる管理栄養士や患者さん家族から「ケトン食療法の実際」について講義がおこなわれるようなセミナーが一般向けに企画され、行われたのは初めてだと思いますので、全国の多くの方が興味を持たれ、参加されたのだと思います。
 当日は、講義に併せて、おからトルティーヤを使った軽食やロールケーキ等の”ケトスイーツ”の試食会も行われ、実際にケトン食を味わうこともできました。どれも患者さん目線の美味しい料理で、管理栄養士さんやケーキ屋さんの熱意を感じることができました。
 昭和43年(1968年)から約50年のケトン食の歴史を持つ東京女子医科大学だから、このようなセミナーを開催することができたのだと実感しました。来年もケトン食療法セミナーが開催されるのであれば、「第2回」も是非参加させていただきたいと思っています。

 セミナーの概要について少しご紹介させていただきたいと思います。

セミナーの申込様式
(イメージ)
第1部 ケトン食療法の知識
1. ケトン食療法の歴史
  -世界の100年と女子医大の50年-
 小国教授からケトン食の起源が「ヒポクラテス」や「聖書」の時代の「断食がてんかん発作を抑制する」という記述にあり、世界のケトン食は1921年にアメリカから始まり、女子医大のケトン食は1968年に始まったとの説明がありました。ケトン食療法は1970〜1990年代は新しい抗てんかん薬の導入やてんかん外科手術の増加等から一時的に衰退しましたが、1993年頃からアメリカにて復興が始まり、女子医大においても2007年に新たにアトキンス食変法を導入する等古典的ケトン食療法やアトキンス食変法を中心に実施されるようになったとの講義がありました。
2. 難治性てんかんと古典型ケトン食療法  伊藤(進)助教から難治性てんかんの治療の「3本柱」の一つとして「食事療法」が選択肢となった背景について講義がありました。最も印象に残ったのは、2016年に医学的根拠の評価機関である「コクラン・レビュー」により「薬剤抵抗性難治性てんかんがありてんかん外科治療の適応のない患者において有効な選択肢である」との見解が示され、ケトン食療法が、医学的根拠の明確でない「補完代替療法」ではなく、医学的根拠の明確な「標準療法」に位置づけられることとなり、日本において2016年4月から「てんかん」における食事療法も正式に認可されたとのことです。
 続いて、「食事療法の種類」、「ケトン食療法の仕組み」、「ケトン食療法の禁忌」、「ケトン食療法の開始前評価」等、医療従事者向けの専門的な講義が行われました。
3. GLUT1欠損症と修正アトキンス療法  伊藤(康)先生から最初に「GLUT1欠損症の概要」として「どのような病気なのか」、「症状」、「診断」、「表現型スペクトラム」について講義がありました。まだ歴史が浅い「GLUT1欠損症」について参加者は知識や理解を深めることができたと感じました。
 続いて、「GLUT1欠損症」の治療法としてケトン食療法が有効とされる根拠について、脳のエネルギー代謝とケトン食療法の関係から詳しく説明がありました。また、「GLUT1欠損症のケトン食療法の実際」として「修正アトキンス食療法」の講義が行われ、参加者は「修正アトキンス食はGLUT1欠損症の治療として期待できる」ことが理解できたと思います。
 更に、「今後の治療の展望」として「トリヘプタノイン」、「遺伝子治療」にも触れられました。
第2部 ケトン食療法の実際
1. ケトン食療法の献立作成と調理方法
  -栄養士の立場から-
 女子医大の管理栄養士から10年間の試行錯誤の末に到達した「ケトン食療法の献立作成と調理方法」について実践的な講義が行われました。最初に女子医大で採用している「ケトン比」と計算が複雑な「ケトン指数」の違いについて説明があり、ケトン食療法を実施する際には「どちらを使うのか主治医に確認を取りましょう」との注意喚起がありました。
 続いて、古典的ケトン食と修正アトキンス食とを比較しながら「献立作成のポイント」として「たんぱく質→糖質→脂質の順序で調整すると簡単」との説明や、「献立作成の工夫」として「使用する油の種類」や「ビタミンやミネラルの補充の仕方」についてのアドバイスが行われました。
 最も印象に残ったのは「家族の取り組み」として献立を記録することの重要性です。ケトン体の産生量が下がる等の患者さんに何か変化があった際に、記録に基づき管理栄養士と一緒に食事を振り返ることができるそうです。
 最後に、管理栄養士から「ケトン食療法の認知度を上げ、取り組みやすい食事療法になるように普及に努めていく」とのお言葉を頂きました。
2. ケトン食療法の工夫
  -患者家族の立場から-
 実際に「修正アトキンス食療法」を10年以上続けている患者さん家族から「ケトン食の工夫」について講義がありました。
 最初に印象に残ったのは「ケトン食の食材は高価である」ということです。低糖質食材、人工甘味料、MCTオイル等の食材は高価であり、「松竹梅コース」を設けて、誕生日等の特別な日に贅沢するようなメリハリを持った楽しみ方を実践されているそうです。
 次に印象に残ったのは、特別支援学校における「食事支援」の大切さです。小学部から高等部へステップ・アップする中で、様々な試行を学校側との交渉の中で行い、給食、修学旅行、職場実習、調理実習等の行事を思い出深いものとしていったとのお話に感動しました。