てんかん食ワークショップに参加しました
平成28年6月12日(日)午前10時45分から午後4時45分の予定で、国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター 3階講堂にて、「てんかん食ワークショップ」が、全国てんかんセンター協議会(JEPICA)の主催(後援:国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター)で開催されました。
当会も午後3時30分から25分間の予定で「てんかん食の普及活動に携わってきて」という内容でお話をしてきました。
詳しい内容は、以下のとおりです。
1. 開会の挨拶
講師 | 内容 |
全国てんかんセンター協議会 代表 井上 有史 (国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター 院長) |
「てんかん食」は平成28年度より診療報酬で認められました。この「てんかん食」についてのよりよい理解、質の向上、そして課題の検討を目的として、このワークショップを開催いたします。 このワークショップが、日々の臨床実践に少しでもお役にたてば幸いです。 |
2. 午前の部
講師 | 内容 | ||||||
国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター 管理栄養室 竹浪 千景 |
【てんかん食の食材と調理】 先ず、「てんかん食」の定義について説明されました。「てんかん食」とは、グルコースに代わりケトン体を熱量源として供給することを目的に炭水化物量の制限及び脂質量の増加が厳格に行われた治療食をいうとされ、ケトン食、修正アトキンス食、低炭水化物指数食(低グリセミック指数食)があるとのことです。 印象的だったことを2つご紹介します。 一つ目は、「てんかん食の食材」です。主食としても活用可能な「糖質ゼロ麺」です。最近は、丸麺等様々な麺が手軽に手に入るようです。また、ナスはケトン食で処理に困る油を吸ってくれるので使い勝手が良いとのことです。 二つ目は、オリジナル計算ソフト「つくってみよう」です。このソフトは家族が「ケトン比」等を計算する手間を少なくするために、オリジナルで考案されたソフトです。海外では計算ソフトは一般的ですが、日本では未だ開発中のようです。当会もアイデアを練っている最中です。 |
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グループ1:国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター 栄養士 | 【てんかん食調理の実際】
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グループ2:国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター 今井克美先生(司会) | 【症例紹介】 すみません。参加しなかったので、お伝えできません。 |
3. 午後の部
講師 | 内容 |
滋賀県立小児保健医療センター 小児科 熊田 知浩 |
【てんかん食の種類と機序】 先ず、「てんかん食がてんかん発作を迎えるメカニズム」について説明がありました。てんかん食を実施すると体内では「ケトン体が産生」し「抑制系の神経伝達物質が増加」するとともに「グルタミン酸放出を抑制」することのみならず、「糖質制限」、「中鎖脂肪酸」、「多価不飽和脂肪酸」等の様々なメカニズムでてんかん発作を迎えており、決してケトン体だけが活躍しているわけではないとの説明がありました。 次に「てんかん食の種類」について、「古典的ケトン食」、「中鎖脂肪酸(MCT)ケトン食」、「修正アトキンズ食」、「低グリセミック指数食」を具体的な献立を使った説明がありました。 最後に「どの種類のてんかん食を選ぶべきか?」という課題について、それぞれの食事療法に特徴があり、ライフスタイルに合わせた食事療法を選ぶべきとの意見を述べられていました。 |
東京女子医科大学 小児科 西川 愛子 |
【てんかんの適用と効果】 最初に食事療法の位置づけについて説明がありました。先ず「抗てんかん薬治療」が行われ、次の選択肢として「てんかん外科治療」、「ACTH療法」、「ケトン食療法」があるとの説明でした。 次に「ケトン食療法の種類と成績」について説明があり、東京女子医科大学では「古典的ケトン食療法(4:1)」は最も制限が厳格であるが、有効性が高く、現在最もよく使用されている食事療法であるとの説明がありました。 続いて「当課におけるケトン食療法」として、ミオクロニー失立てんかん(MAE)、Dravet症候群等の症状ごとのケトン食療法の成績について説明がありました。 最後に、ケトン食療法は難治性てんかんに対して有効であり、継続的な実施には専門栄養士による家族支援、教育が不可欠であり、今後は数多くの施設で実施が可能となることに期待するとのメッセージが発せられました。 |
大阪大学 小児科 青天目 信 |
【てんかん食の調整と副作用】 てんかん食により「ケトン体が作られるきっかけ」は、炭水化物の変動が少なく、インスリンが出ていないことであり、血糖値、インスリンのコントロールが重要であるとの説明がありました。 てんかん食を実施する上で、副作用を抑制するために必要に応じて「ビタミン・ミネラル」をサプリメントとして摂取することが重要であるが、ケトン比が2.5以下程度であれば、特別な補充は通常は必要ないとの説明がありました。 退院後はモニタリングが重要であり、てんかん食中にてんかん発作があった場合には、先ずは「尿ケトン体」をチェックし、何か変化がないか確認することが重要との指摘がありました。 てんかん食には、様々な副作用が起こる可能性があり、専門医の監督下で、専門栄養士の指導に従って実施する必要があることを再度確認できました。 |
聖隷浜松病院 てんかんセンター 藤本 礼尚 |
【成人てんかんとてんかん食】 成人の場合は「治療オプション」を自分で選択することができ、最初の「抗てんかん薬」という選択肢の次のオプションとしては、「開頭手術」、「迷走神経刺激術(ペースメーカー)」より「食事療法」を選ぶ傾向があるとの説明がありました。(やはり、手術は怖いと思います。) 成人になると炭水化物を多く含んだ食材の味を知っているので、一気にケトン食療法というのは難しく、「低グリセミック指数食」から「修正アトキンス食」へ強めていくことが一般的だとの現状が報告されました。 現在は、「浜松ブランド」で、低糖質な食材を発信していく準備をされているそうです。 |
株式会社 明治 金子 哲夫 |
【ケトンミルクについて】 「てんかん食」に使われるケトンミルク(817-B)は一般的には「ケトンフォーミュラ」と呼ばれています。「ケトンフォーミュラ」は、
「てんかん食」に使われる場合は、「登録外特殊ミルク」となり、国庫助成の対象外であり、全額竃セ治の負担となります。 最近、「登録外特殊ミルク」としての「ケトンフォーミュラ」の使用量が急増し、817-Bの年間供給量が生産能力の限界に達している状況にあるとのことです。 また、ケトン食などが「てんかん食」という治療食として認められたことから、今後、「ケトンフォーミュラ」の使用量が増加することが予想されています。 このような状況において、817-Bを含めた全ての特殊ミルクの安定製造及び安定供給を維持するため、「特殊ミルク事業」という仕組みの見直しが求められています。 竃セ治の金子氏からは、このような現状報告と課題の提議がなされました。 |
ケトン食普及会 中蔦 弘行 |
【てんかん食の普及活動に携わってきて】 3年半のケトン食の実践により、「ケトン食の奇跡」を体験したことが「てんかん食」の普及活動に携わってきた理由であるとの説明をしました。 難治性てんかんを患い、将来への希望を失った患者さん、家族に「ケトン食の奇跡」を体験談を通じて伝えることがそもそもの動機でした。 約10年間の普及活動を通じて、今、感じている課題について、次のように提言させていただきました。
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国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター てんかん科 今井克美先生(司会) |
【今後の展望と課題(議論)】 以下のような意見がありました。
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4. 総括
平成28年度からケトン食等が「てんかん食」として保険適用となったことで認知度は上がったと思われますが、このワークショップを通じて、「てんかん食」を正しく理解し、「ケトンフォーミュラ(817-B)」を適正に使用する仕組みを構築することが重要であることが認識されたと思います。