韓国ケトン食事情

 平成22年10月にイギリス・エジンバラで開催された「GLOBAL SYMPOSIUM ON THE DIETARY TREATMENTS FOR EPILEPSY AND OTHER NEUROLOGICAL DISORDERS」で、
・ 韓国のキム教授(KIM, Heung Dong, MD, PhD)が「韓国では、年間約300のケトン食実施実績がある。」と発表されたこと
・ 韓国からは、キム教授をはじめ、カン先生(KANG, Hoon-Chul, MD, PhD)、キム先生、リー栄養士、ソン看護師など多くの方々が来られていたこと
・ 韓国のケトン食用のフォーミュラ(液体状)である「KETONIA」が展示されていたこと
などから、エジンバラから帰国してから韓国のケトン食の実態を勉強してみたいと考えていました。
 静岡てんかん・神経医療センターの今井先生がカン先生の友人であるとのことでしたので、今井先生のご紹介のもと、カン先生に「韓国のケトン食の実態を勉強させてほしい」とメールしたところ、快諾頂いたところです。
 日程を調整した結果、平成23年4月8日(金)にカン先生が勤めている
   Severance Children's Hospital, Yonsei University College of Medicine, Seoul, Korea
を見学させていただけることとなりました。
 今回は、私が見てきた「韓国ケトン食事情」をここにご紹介したいと思います。

カン先生が勤務しているSeverance Hospitalです。
Severance Children's Hospitalは、Severance Hospitalの中の
小児科専門病棟です。
現在、がん患者専門病棟が工事中でした。
カン先生が勤務するDepartment of Pediatricsのオフィスです。
この会議室の横にカン先生のオフィスがあります。
この会議室で、カン先生、キム先生、3名の栄養士、数名の研修医の方々
とケトン食等の食事療法について意見交換を行いました。
まず、私がケトン食の体験談を踏まえて日本のケトン食事情を説明し、
ケトン食専門栄養士であるリー栄養士(左から2人目)からこの病院での
ケトン食等食事療法の現状について説明がありました。
リー栄養士からの説明内容
1.食事療法実施件数(2010年1-12月)



2.ケトン比

3.実施期間

4.家族からの主な要望




5.献立開発チーム



6.第1回ケト・クッキング・クラス
(スポンサー:ナムヤン社、サムスン社)
 ナムヤン社:KETONIA製造販売者






7.今後の取組み

1(1)ケトン食 93名(男性:52名、女性:41名)
 (2)修正アトキンス食 13名
 (3)低グリセミック指数食 1名

2 4:1(75%), 3:1(24%), 2:1(1%)

3 3ヶ月未満(33%), 4ヶ月以上(27%), 7ヶ月以上(7%), 12ヶ月以上(33%)

4(1)調理方法やレシピ(お弁当など)の開発
 (2)ケトクッキーの開発と販売
 (3)ケトン食についての本の執筆
 (4)レシピのウェブサイトでの共有

5(1)設立:2010年6月16日設立(シェフ、栄養士など)
 (2)献立試食会:2010年10月29日(14献立展示、6献立試食)
 (3)開発中の献立:23献立

6(1)日時:2010年12月21日
 (2)場所:病院内セミナー室
 (3)参加者:18家族
 (4)内容
  @ 栄養士による献立の説明
  A シェフによる調理実演、参加者による調理体験
 (5)配布資料:レシピ
 (6)今後は定例化を目指す

7 PUFA(多価不飽和脂肪酸)の活用
 (1)サーモン、サバなどの魚の摂取量を増やす
 (2)緑葉野菜の摂取を増やす
 (3)ミルクを豆乳に変える
 (4)オリーブオイルをカノーラオイルに変える
 (5)ナッツ類の摂取量を増やす
第2回ケト・クッキング・クラス視察
日時:2011年4月8日(金)15時〜17時頃
場所:ナムヤン社経営のイタリアンレストラン
献立:
(1)ピクニック用:ケト・ソーセージ・ロール
(2)子供の日用:ケト・クリーム・シュリンプ
(3)KETONIA活用法:ケト・シェイク(アイスクリーム用の可能)


ケト・ソーセージ・ロール


ケト・クリーム・シュリンプ
参加者間の情報交換

参加者は、クラスが始まるまでの間、情報交換を行っていました。
栄養士による説明

ケトン食専門ではありませんが、この病院の栄養士(No2ボスと呼ばれて
いました)から、このクラスについての説明がありました。
(韓国語だったので、よくわかりませんでした)
ケトン食専門栄養士による講義

リー栄養士から、この病院でのケトン食等の食事療法への取組み、
クラスで調理実習がある献立の説明がされました。
シェフによる実演

シェフによる丁寧な実演がありました。
シェフは、いわゆるイケメンであり、お母さん達の注目の的でした。
印象に残ったのは、
・ 具材を何度もカットし、何度も計量すること
・ フードプロセッサーに残った具材を丁寧に処理していたこと
で「グラム単位」の大切さを参加者に印象付けていたことです。
調理器具などの準備

調理実習に使う調理器具、調理具材は、写真のように事前に準備
されていました。
参加者による調理実習

参加者は、実際に調理器具を使って、準備された具材を調理することで、
シェフが実演した調理方法を学びます。
プレス対応

テレビ局が取材に来ていました。
第2回ケト・クッキング・クラスがテレビで放映されていたかもしれません。
小児てんかん患者のための基金設立
記念食事会



日時:2011年4月9日(土)18時〜
場所:キム教授宅
参加者:小児てんかん患者のための基金設立に貢献した方々
内容:
 韓国には、成人てんかん患者のための基金は既に設立されていたが、
小児てんかん患者のための基金がなかった。
 そこで、キム教授の呼びかけで集まった方々の力で、この日、
「小児てんかん患者のための基金:DANURI FOUNDATION」が
発足したものである。
キム教授のあいさつ

キム教授の4階建ての自宅1階が開放され、立食パーティー、
参加者による演奏会などが行われた。
この記念食事会の開会にあたって、キム教授からあいさつがあった。
キム教授の奥さんは芸術家であり、1階、2階には多くの作品が
展示されていた。
 また、韓国では、このような会にあたって主催者の自宅を見学するよう
であり、私もキム教授の自宅の1階から4階までを見学させていただいた。
北岳山(プガクサン)登山 日時:2011年4月9日13時〜15時
場所:北岳山
参加者:カン先生、キム先生、私
内容:
 日本のガイドブックではあまり紹介されていないが、カン先生の勧めで
ソウル市内が一望できる北岳山(プガクサン)登山を楽しんだ。
 過去に韓国大統領の暗殺を企てた北朝鮮兵士が潜伏し、韓国兵士と
銃撃戦を行った歴史ある場所であり、入山するために身分証明書を
呈示しパスを受け取り、このパスを立哨警戒する兵士に見せるなど
韓国の政治的な現状を垣間見ることができました。
カン先生とともに(写真左がカン先生、右が私)

写真左の木に6発の弾痕があります。
北朝鮮兵士と韓国兵士との銃撃戦のあとだそうです。