機関誌「波」平成20年4月号「フリートーク」掲載記事

「ケトン食療法を体験して」

 皆さん、ケトン食ってご存知ですか。究極の低炭水化物ダイエットと言えばイメージが沸くでしょうか。

ケトン食とは、抗てんかん剤やACTH(ホルモン療法)で発作が抑えられない難治性てんかんに対する治療法の一つなのです。でも、発作を抑えるメカニズムが完全に解明されていない面もありドクターは積極的には勧めませんし、実施するとしても脂肪中心の脂っぽい食事なので献立作りや調理に手間がかかり面倒なので、はっきり言ってあまり普及していません。でも、発作や抗てんかん剤の副作用に苦しむ我が子を救える可能性があるのなら・・・

私はこの食事療法の奇跡を体験した者としてその経験を少し紹介させていただきます。

(専門家との協力で開始)

次男のカズくんは、1歳でWEST症候群を発症し抗てんかん剤やACTHによる治療をしましたが発作を抑えられず、ヘッドギアーと顎のプロテクターを着けての生活を余儀なくされていました。親として何とかできないかと専門書を読むと「ケトン食療法」という治療法があることを知りました。主治医は積極的には勧めませんでしたが、幸運にもケトン食を知り、一緒に取り組んでくれる栄養士に出会えたことで、私たちは3年半もの間この食事療法を続け、諦めかけていた将来への夢を取り戻すことができました。4ヶ月で発作が減り始め、8ヶ月で昼間の発作がなくなり、1年5ヶ月を過ぎた頃には夜の発作もなくなり日常生活では装具を着けなくてもよくなりました。発作の減少とともに知的レベルも徐々に上がり、トイレに自分で行けるようになり、本を読み、テレビを楽しみ、会話が成り立ち、歌も歌えるようになったのです。


 (一度トライしてみませんか)

この食事療法は目立った副作用はありませんし、効果が出ない場合や馴染めない場合には直ぐに止めることができます。外科的手術のように後戻りできない治療法ではありません。一度トライしてみたいと思いませんか。

私がお世話になった栄養士の岡崎先生が、ケトン食の持つネガティブなイメージを払拭するために、カラー冊子「はじめてのケトン食」を作ってくれました。興味のある方は一度読んでみてください。かわいらしくて美味しそうな数々の料理の写真を見て、わかりやすいQ&A方式の解説を読んでもらえれば「これならできそう。」という明るい気持ちになってもらえると思います。

アメリカでは、1997年に「誤診」という映画で紹介された、マジック・ダイエットと呼ばれるケトン食。私もNPО法人の一員としてケトン食の普及活動をしており、微力ながら皆さんのお手伝いができればと思っています。

*事務局より:食事療法は勝手に始めてはいけません。主治医や専門家に相談しながら行ってください。


ケトン食実施前
(動物園にて)



ケトン食実施後
(遊園地にて)



ケトン食実施後
(スキー場にて)