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概要

抄集録

24O-047 杖の使用が歩行中の注意需要に及ぼす影響―転ばぬ先の杖は安全で効果的か―鈴木智高1),小河原格也1,2),東登志夫2),菅原憲一1)1)神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 リハビリテーション学科2)長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 リハビリテーション科学講座key words 杖・注意・歩行【目的】 日本には” 転ばぬ先の杖”という独特の諺があり,杖を推奨するために文字通りの意味でも使われている.しかし,杖の転倒予防効果を示す根拠は殆どない,また,杖を扱うことは運動かつ認知課題であるため注意需要が生じると推察されるが,その注意負荷は未解明である.そこで,杖の使用と不安定環境が歩行中の注意需要に及ぼす影響を検討した.【方法】 所属機関研究倫理審査委員会の承認後実施し,若年健常者15 名が参加した.注意需要は我々が開発したスマホアプリによる反応時間課題法を用いて調べた.内外側への動揺を誘発するため底面が円柱である不安定靴を作成した.T 字杖の有無,通常靴または不安定靴,これらの組合せ4 条件で反応時間と歩行速度を繰り返し測定した.杖と安定性を要因とした二元配置分散分析を行い,有意水準は5% とした.【結果】 反応時間,歩行速度ともに,杖と安定性の有意な主効果と交互作用が認められた.単純主効果検定の結果,通常靴における杖使用歩行時の反応時間は不使用時に比べて遅延した,一方,不安定靴では杖の有無に差は無かった,また,杖不使用時不安定靴歩行の反応時間は通常靴に比べて遅延した,一方,杖使用時に靴の差は無かった.歩行速度に関しても同様であり,反応時間が遅延した条件において歩行速度が減少していた.【考察】 杖の使用と不安定環境はそれぞれ歩行中の注意需要を増加させた.しかし,両条件下で注意需要の更なる増加は生じなかった.すなわち,杖の制御に伴う注意需要の増加は,安定性向上による注意需要の減少により相殺された.歩行速度も反応時間に関連した変化を示した.専門家に杖を処方される使用者は少なく,また,杖が原因の転倒も多い.ゆえに,専門的かつ継続的な評価が必要であり,諺のごとく念のため杖を使用することは必ずしも安全で効果的とはいえない.杖使用に伴う注意負荷は歩行に及ぼす杖の効果に依存することを考慮すべきである.O-048 歩行中の上肢運動における運動学的協調構造の解明藤野努1),金村尚彦2),国分貴徳2),村田健児1),高柳清美2)1)埼玉県立大学大学院 博士後期課程2)埼玉県立大学 保健医療福祉学部 理学療法学科key words 歩行・上肢運動・UCM解析【はじめに, 目的】 ヒトの歩行中の上肢運動は, 歩行の安定性に寄与し, 中枢神経系が制御する筋活動によって安定化されている. しかし, 上肢運動がいかなる目標を制御しているかは明らかでない. 本研究は歩行中の上肢運動がどのような目標に対する協調構造を有するかを探索し, 上肢運動がいかなる目標をもとに制御されているかを明らかにすることを目的として実施した.【方法】 対象は健常成人男性8 名(24.4 ± 3.4[yr],170.1 ±3.5[cm]). 被験者には39 点の赤外線反射マーカを貼付した. トレッドミル歩行は快適歩行速度で実施した. データ計測には三次元動作解析装置(VICON 社製:100Hz) を使用し,マーカの座標情報を計測した. 解析区間は歩行開始1 分後の50 歩を対象として, 全ての被験者で右上肢を解析対象とした. 取得したデータに対して,MATLAB2014b(Mathworks 社製) を用いてUCM 解析を行った.UCM 解析ではタスク変数( 目標変数) として水平方向と鉛直方向の手先位置と速度を, 要素変数として各体節角度・角速度を設定し, タスク変数に影響を及ぼさない“良い変動”( 以下VUCM), 影響を及ぼす“ 悪い変動”( 以下VORT) を求めた. 統計解析には,SPSS( 日本IBM 社製)を用い, 各タスク変数でのVUCM とVORT に対して対応のあるt 検定を実施した. 有意水準は全て5%とした. 本研究はヘルシンキ宣言に則り実施し, 埼玉県立大学倫理審査委員会の承認を得た( 承認番号:28512)).【結果】 手先位置をタスク変数とした場合は水平・鉛直方向ともに, ばらつきを抑えるような協調構造を有しなかった. 手先速度をタスク変数とした場合は水平・鉛直方向ともにVUCM > VORT であり(p < 0.01), ばらつきを抑える協調構造の存在を示唆した.【結論】 歩行における上肢運動においては, 手先の速度のばらつきを抑える協調構造が存在することを示唆した. このことは, 歩行リビリテーションにおいて, 上肢に着目する場合には, 手先位置よりも速度が制御において重要な情報であることを意味する.