学会誌「ウイルス」

第52巻 1号 2002年 PP.83-87


[特集1〔Overviewセミナー〕]

13.HIV(2)
―HIV診断技術と薬物治療の発展―

杉 浦   亙

要旨: はじめに
 1981年にAIDSという疾患の存在が公式に確認されてから今年は20年目に当たる.この20年間はAIDSの診断という観点から,おおまかに3つの時代に区分することができる.第一の時代は1981年に原因不明の仮に肺炎症例が報告されてから8,17)1983年にその後Human immunodeficiency virusと名づけられる病原体が発見され1,20),その感染がAIDSの原因と判明するまでの期間である.この時代は原因不明の後天性進行性免疫不全症状とそれに伴う日和見感染が診断の唯一の根拠であった.
 第2の時代は,HIV―1が発見されてから診断技術の基礎が確立されるまでの期間である.HIV―1に関連する種々の基礎研究が行われ,実験室レベルでは様々な検査技術開発が行われた時代である.基本的にこの時代も臨床症状が診断の中心であったが,HIV―1の存在を検査により確認することが可能となった時代でもある.
 第3の時代は診断技術の基礎が確立した後から現在までである.診断技術は,より早く,より正確に行えるように改善され,免疫不全症状が出現するよりも遥か以前にHIV―1の感染を診断することが可能となった.そして今日,遺伝子診断技術の進歩により,HIV―1の確認のみならず,感染者体内におけるウイルス増殖レベルを定量することも可能となった.


国立感染症研究所エイズ研究センター
(〒208-0011 東京都武蔵村山市学園4-7-1)
History of HIV diagnostic technology and treatment
Wataru Sugiura MD. Ph. D
National Institute of Infectious Diseases AIDS Research Center
4-7-1Gakuen, Musashimurayama, Tokyo 208-0011, Japan

Page Copyright(C) 日本ウイルス学会 All Rights Reserved.