学会誌「ウイルス」

第52巻 1号 2002年 PP.7-13


[特集1〔Overviewセミナー〕]

2.カリシウイルス

中 田 修 二

要旨: 1.カリシウイルスの特徴
1)カリシウイルスの形態,大きさ,遺伝子,構造蛋白質
 カリシウイルスは直径27―35nmの正20面体の小型ウイルスでエンベロープはなく,ゲノムはその3’末端にpoly A tailをもつ約7.7kbのプラス鎖の一本鎖RNAである.構造蛋白質は一種類で分子量は59―62Kdの範囲にある.電子顕微鏡による観察では,粒子表面に32個のカップ状の凹みをもち 'ダビデの星'と形容される特徴的な表面構造(図1:B)が見られるものと,特徴的なカップ状の凹みが見られないものがある(図1:A).

2)遺伝子構造(図2)
 カリシウイルス科の中のVesivirus属と'Norwalk―like viruses' 属では遺伝子上に3つのopen reading frame(ORF)が存在し,5’側のORF1上にはウイルスの複製に関与するRNAポリメラーゼをはじめとする各種非構造蛋白質をcodeする領域が,3’側のORF2上には構造蛋白質をcodeする領域がある.ORF3の機能は不明である.一方,Lagovirus属と'Sapporo―like viruses'属ではORF1とORF2が連続して大きなORFを形成し,遺伝子上には2つのORFが存在している.


札幌医科大学医学部小児科
(〒060-8543 札幌市中央区南1条西16丁目)
Calicivirus
Shuji Nakata
Department of Pediatrics, Sapporo Medical University School of Medicine
S.1W. 16, Chuo-ku, Sapporo 060-8543, Japan

Page Copyright(C) 日本ウイルス学会 All Rights Reserved.