681:チョコレート嚢胞および成熟嚢胞奇形腫を合併した卵巣腫瘍の1例



明和病院臨床検査部(1)、産婦人科(2)、竹村クリニック(3)
前田晃宏1)2)、覚野(杉原)綾子1)、竹村正1)2)3)、堀理照2)、森龍雄2)、半田雅文2)

【症例】30歳代前半、未婚女性
【既往歴および家族歴】特記すべきことなし
【現病歴】
下腹部痛のため当院内科を受診し、腹部CT上卵巣腫瘍を指摘されたため産婦人科を紹介 され緊急手術が行なわれた。腹腔内全体にヘモジデリン沈着を認め、子宮と附属器および大網、結腸は子宮内膜症による強固な癒着を認めた。腹水はほとんど認 めなかった。左卵巣はS状結腸前面からダグラス窩を占拠する新生児頭大の弾性軟の嚢胞性病変を呈していた。表面は平滑であったが凹凸不整で、ダグラス窩部 に10cm大と子宮後面に5、5、3cmの多房性のチョコレート嚢胞様病変を、最前面には4cm大の成熟嚢胞奇形腫を認めた。これらは後腹膜、S状結腸、 左腹壁、子宮後面、上行結腸、虫垂末端と強固に癒着していた。腫瘍内容液は約200mlですべてチョコレート様であった。嚢胞内部に1.5cm大で乳頭状 を呈する隆起性の充実性部分を1箇所認めたため術中迅速病理検査を行なった。結果はmucinous cystadenocarcinomaであったため左附属器切除術を行なった。右卵巣には明らかな転移像は認めなかった。ダグラス窩、大網、腹腔内には播 種性病変を示唆する像は認めなかった。
【配布標本の病理組織学的所見】
チョコレート嚢胞を示唆する一層の上皮に覆われた嚢胞部分の中に7mm大の乳頭状充実性部分が含まれる。これらの上皮は粘液産生を伴う粘液嚢胞腺腫様部分、乳頭状増生する漿液性嚢胞腺腫様部分より成っていた。
【問題点】病理組織学的診断