680:診断に難渋した卵巣腫瘍の一例



地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立急性期・総合医療センター 病理科(1)、産婦人科(2)、画像診断科(3)
木村勇人(1)、堀 由美子(1)、川口晴菜(2)、小玉美智子(2)、竹村昌彦(2)、金田一尚元(3)、伏見博彰(1)


症例:40歳代後半、女性

主訴:腹部膨満感

現病歴: 
 入院の数週間前より腹部膨満感が出現。歩行時の左下腹部痛や便秘を伴うようになった。超音波検査にて一部に充実性領域を有する10×8㎝のmixed pattern tumorが認められた。卵巣癌の疑いのもと、精査・手術目的にて入院となった。

術中所見:
 淡血性腹水が中等量認められた。腹腔内は左卵巣腫瘍で占拠されており、腹壁および大 網との癒着が認められた。腹壁および腸間膜に播種病変が認められた。子宮および右卵巣は肉眼的に正常であった。腫瘍内部には粘稠な褐色調内溶液が認めら れ、乳頭状増殖を示す領域を伴っていた。

手術標本:
 最大径25㎝の球状腫瘤であり、割面は灰白色~黄白色半透明充実性で、著明な壊死を伴っていた。表面の一部は破綻し、大網で被われていた。
 組織学的にはvesicularな核を有する均一な小型類円形~多辺形腫瘍細胞が密に増生しており、細網線維は比較的乏しかった。細胞質は好酸性で、比較的乏しかった。多数の核分裂像、広範な壊死巣も認められた。

問題点:病理組織診断

画像:  外表  割面  HE染色(弱拡)  HE染色(強拡)