Krukenberg腫瘍



愛仁会 千船病院 臨床病理科 
名方 保夫


転移性卵巣腺癌(特に印環細胞癌)は、旧来Krukenberg腫瘍という用語が汎用されてきたが、その定義は今日なお曖昧である。原発部位としては、胃 が圧倒的に多いが、大腸、胆嚢、膵などのほかに、近年虫垂癌(特に印環細胞型)の卵巣転移が注目されている。さらに免疫組織化学の進歩により、原発部位の 類推も可能となってきた。

なお、Krukenberg腫瘍は便宜的に、典型的Krukenberg腫瘍と非典型的Krukenberg腫瘍に分類される。

[典型的Krukenberg腫瘍]
印環細胞と細胞密度の高い反応性卵巣間質とが混在する特徴的な像を呈する症例で、Krukenberg自身が1896年に提唱した、fibrosarcoma ovarii mucocellulare(carcinomatodes)に相当する。

[非典型的Krukenberg腫瘍]
卵巣間質の反応性増生を伴っているが、上皮性悪性腫瘍に管腔形成がめだつ、1981年にbullon A& Young RHが提唱した、tubular Krukenberg腫瘍に相当する症例である。