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日本皮膚病理組織学会事務局

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鳥取大学医学部皮膚科
事務局長 山田七子
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■e-mail: jdhpa@med.tottori-u.ac.jp



5. 完走ならず


三砂 新平 範幸 先生
佐賀大学皮膚科

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 皮膚病理とは、全く関係のない話です。すみません。今年の4月に佐賀市で開催された佐賀桜マラソンに、人生初のフルマラソンに挑戦しました。しかし、私のフルマラソン初挑戦は、敢え無く、撃沈という結果でした。途中までは順調でした(本当です)。特に、中間地点の21kmあたりは、走れている自分に酔いしれるような幸福感を味わっていました。時間の方も、私のスローペースでも、制限時間内に走り切れるペースでした。

 しかし、落とし穴は、吉野ヶ里公園を過ぎたところに待っていました。27km地点あたりから、突然、足があまり動かなくなってきました。それでも何とか、踏ん張って前に進もうとしましたが、いつしかランナーの最後尾となりました。最後尾を追う、大会事務局の車から、“無理しないで下さい”“明日の仕事に、差し支えないようにして下さい”と、マイクで語りかけられました。私は、振り返って、その車に向かって、“そうですね”と相槌を打って、走るのを止めました。30km手前だったと思います。本当に、足が動かなかったからです。

 30km当たりの関門で、大会事務局が用意したリタイアバスに乗りました。そのバスは、私のような脱落者で満席でした。しかし、満席にも関わらず、そのバスは異様な静けさでした。皆、項垂れた表情で、走り切れなかった失望感と疲労感が漂っていました。私の隣には、足を攣って、歩くのがやっとの若い女性ランナーが座りました。おそらく、それは、彼女の勤務先なのでしょう。“○○整骨院”とプリントされた彼女のランニングシャツは、悲しげで痛々しくもありました。私は、彼女に、“明日はあなたが勤務されている整骨院で、マッサージしてもらいましょうね”と話しかけようとしましたが、疲れた彼女の表情をみて、思いとどまりました。

 しかし、“落伍者”で満席のバスの風景は、どことなく新鮮でした。そして、次第に“可笑しい”風景に思えてきて、不思議と私の失望感は薄れてきました。神様は、実に様々な事象を、私の前に用意して下さるものです。でも、私の今の気持ちは、“来年は、違った風景を待ち望もう。そう、ゴールの瞬間を”、といったところです。

 “人生はマラソンのようだ”は、在り来りの言い回しですが、今回は実感です。皮膚病理の勉学もマラソンに例えるなら、今回中間地点で味わったような幸福感を知るからこそ、長い道のりの皮膚病理の勉学を継続できるのでしょう。皮膚病理を学ぶ幸福感とは、正確には表現できませんが、理屈ではないような気がします。しかし、一点だけ、皮膚病理の勉学とマラソンが異なる点があります。それは、皮膚病理の勉学には、ゴール地点がないことです。この点は、どの学問の分野にもあてはまることでしょう。“永遠に辿りつかないゴールに向かって、学ぶ幸福感を支えに、皮膚病理の勉学の道を歩む”、このことが、今の私の漠然とした生き方のような気がします。