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日本皮膚病理組織学会事務局

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6. 皮膚病理なんて大嫌いっ!

山元 紹運将門 修
鳥取大学皮膚科

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1. 病理嫌い 

 今を去ること4半世紀前、医学進学課程から晴れて医学科に進級して最初の難関は病理学でした。膨大な数の疾患の病態病理を、臨床も知らぬまま学ばなければならず、さらに病理組織像が加わるという二重苦の世界でした。しかも、1日に2コマ病理学の講義があった日もあり、今のようにパワーポイント画像を印刷したレジメのごときお洒落なものもなく、ただひたすら板書と口頭で教えられた内容を書き取ることに集中するだけで、全く理解できないままヘトヘトの一日を終えていました。

 きわめつけは病理実習(スケッチ)でした。最初の7,8分でその日の課題の病理組織のポイントが板書(チョークで描かれた絵はお世辞にも上手とはいえませんでした、スミマセン、実習担当の先生)された後、学生は一斉に顕微鏡とにらめっこしながらスケッチを始めるわけです。正直、説明内容はさっぱり分かりませんでした。どこに病変があるのか分からないので、とりあえずど真ん中だろうと狙いをつけ、当たるも八卦、当たらぬも八卦という感じでスケッチしました。分からないと知的好奇心をくすぐられませんので、だんだん退屈してきます。退屈すると、次は病理ほど退屈で面白くない学問はない、なんていう悪しき考えが頭をもたげてきます。

 これではいけない、と講義で最もわからなかった腎疾患の病理組織像を勉強してみようと思い立ち、教授にお願いして腎炎の代表的な HEスライドをそろえていただき、教科書片手に顕微鏡を覗いたことがあります。当時病理学教室には腎疾患に精通したスタッフがおられず、結局独学ではさっぱり成果があがらず、自分には向かない世界であろうという結論に至りました。

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2. 傾向と対策 

 ますます嫌いになる(というより憎らしいとさえ思えてくる)病理学実習の悠久の時間をいかにして過ごすかが、生意気な若僧の大きな課題でした。そこで思いついたのが、元来絵を描くのが好きだったので、どうせ時間つぶしをするなら思い切ってお絵かきの時間として、HEスライドの最も美しく見える構築部分をお洒落に描いてみよう、指導の先生の板書の絵よりもっと美しく描いてやろう、という良からぬ発想でした。絵は描けましたが、どこが病変の主座で何が悪いのかは理解しておりませんので、教官からはもっと説明を書き込むように、と叱られたのは当然の成りゆきです。しかしながら、結構楽しい時間を過ごしました。お陰様で、真に病理学を憎むことなく前半の医学生時代を乗り切ることが出来たようです。

 楽しくスケッチ(お絵かき)するという経験を通して、HE染色像は結構美しい世界である、という印象が残ったようです。卒業後、当時日本の皮膚病理学者の双璧といわれた産業医大の故西尾一方教授の門下生の端っこに加えてもらいました。何を血迷ったか、あれほど憎らしく思っていた病理学を専門にすることになったわけです。

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3. 病理嫌いのなれの果て

  現在でも、病理組織の美しい世界を楽しむ ”よう” にしています。もちろんスケッチこそしませんが、いかに美しい構築を美しくデジタル撮影するか、ということにこだわり、これがまた楽しみになっています。副産物としていわゆる写真撮影も趣味になりました。このホームページに掲載した風景写真の多くは下手の横好きで撮ったものです。病理組織の精緻な世界を見つめていると、次はなぜこのような美しい構築を呈するのか、きっと現象には理由がある(ガリレオの福山雅治も言っています)、形態は必ず機能を反映するがそのメカニズムはいかにあらんや、という知的好奇心が沸いてきます。

 学生には、勉強が嫌いで苦手であっても、自分に合った楽しみを工夫して見いだすことで真に嫌いにならずにすむ、と教えています。皮膚病理が苦手な若い皮膚科医は多数おられると思いますが、飛び込んでみると結構楽しい世界です。私の学生時代の体験から、どこに病変があり、どれが問題になっている異常所見か、ということを手取り足取り教えてもらわないと病理が嫌いになる、ということは良く理解しています。それを踏まえて、皆様の苦手意識を少しでも解消するための施策に、皮膚病理組織学会では取り組んでいきたいと思います。

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つぶやきのおまけ

私は尊敬できる3人のお師匠様に仕えました。

 最初のお師匠様、故西尾一方教授は私がお仕えして5年目に肺癌で亡くなられました。しかも、盗んで学べ、自力で這い上がれ、という昔ながらの徒弟制度での親方気質の塊、ドイツのマイスターのようなお方でしたので、西尾皮膚病理学を直接伝授された機会は僅少でした。西尾先生のご遺言で、病理学教授の堀江昭夫先生のもとで一般病理を3年間修行しましたが、お仕えして4年目に心筋梗塞で急逝されました。その後米国の Jag Bhawan 教授に2年間お仕えしましたが、留学1年目の終わりに庭をトラクターで掃除中(スケールがデカイです)トラクターが横転して瀕死の重症を負われました(奇跡的に無事生還されました!)。

 多くの時間を独力で勉強せざるをえず、私の学問体系は3人のお師匠様+教科書、というちぐはぐなパッチワークのようです。これから皮膚病理医を目指す若手には、たばこを吸わない、夜更かし・深酒しない、メタボでない頑健な肉体を持った尊敬できるお師匠様に、継続してお仕えすることをお勧めします。

 4月16日は故西尾一方教授の命日ですので、毎年その頃お寺参りに行っていますが、団地のようなお墓の墓前で手を合わせるといつも悲しい気持ちになりますので、皆さんはそれぞれのお師匠様の体を気遣って大切にしてあげて下さいませ。