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日本皮膚病理組織学会事務局

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4. Cannibalism

山元 修(鳥取大皮膚科)


 「人喰い」に興味があります。というと、昔のG・ヤコペッティ(年配の方なら「モア」という曲といえばおわかりになるかも)やG・A・ロメロ(ゾンビです)の世界か、と言われそうですが、病理組織学におけるcannibalism(人喰い→共食い)のことです。皮膚のメラノーマの病理組織を見ていると、原発巣では見られなかったのに、転移巣でメラノーマ細胞がリンパ球を取り込んでいるのに気づかれた方は多いかと思います。

 Cannibalismは細胞が別な細胞を貪食する能力、もしくは病理組織学的に何らかの細胞がより大型の細胞内に存在する現象、と定義されているようです。マクロファージと異なり、貪食する方の細胞は偽足を伸ばすことなく、対象となる生きた細胞を自分の体の中に沈下させ、空胞で囲むように取り込みますが、そのため自分の核は三日月型に圧排されます。そのほとんどは悪性腫瘍で報告されており、取り込み対象は他の腫瘍細胞が主で、その他リンパ球や好中球であるといわれます。

 この現象の理由は分かっておりませんが、飢餓状態にある腫瘍細胞が生き延びるための一種の栄養補給法、または免疫から回避するためのものであることが推測されているようです。

 さらに蛸のように自分で自分の体を食べてしまうautophagy(self-cannibalism)という現象があります。私が手掛けてきた電子顕微鏡の世界では古くから知られていましたが、機能的意義は長い間不明でした。細胞が飢餓状態や低酸素状態に陥った場合、自己の細胞質構成要素を貪食、消化(ライソゾームによる)し、分解産物のアミノ酸を生存エネルギー源やタンパク質合成として再利用するという現象です。自然免疫、抗菌防御反応、抗原提示あるいは分泌活動にも重要な役割を果たすことが分かってきています。また、動物細胞では常に低レベルですが良く制御されたautophagy機構があり、細胞機能をうまく調節しているといわれますが、機能不全があると心疾患、肝障害、神経変性疾患を引き起こすといわれています。また癌細胞との強い関連を示唆する報告もあります。

 猟奇的な世界に興味のある方もない方も、皮膚疾患でのcannibalismを研究してみませんか。


文献紹介

  1. Fais S. Cannibalism: a way to feed on metastatic tumors. Cancer Letters 258: 155-64, 2007.
  2. Lugini L, Matarrese P, Tinari A et al. Cannibalism of live lymphocytes by human metastatic but not primary melanoma cells. Cancer Res 66: 3629-38, 2006.
  3. Lazova R, Klump V, Pawelek J. Autophagy in cutaneous malignant melanoma. J Cutan Pathol 37: 256-68, 2010.

(2012年12月)