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ごあいさつ

理事長 佐々木 秀美

 年頭にあたり初春のご挨拶を申し上げます。

 昨年、理事選挙が行われ、半数ほどの理事の交代の中で新理事の互選があり、私、佐々木秀美が未熟ながら新理事長に就任いたしました。昨年度の川嶋みどり理事長のご挨拶文を読ませていただきながら、又、これまでの先生のご活躍と業績を鑑みながら、後任であります私の理事長職就任に重荷を感じておりますが、私なりの努力と誠意と情熱で頑張ってまいりたいと思いますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。

 日本看護歴史学会(Japan Society of Nursing History)は、看護に関する歴史の新たな方向性と可能性を求め、広く看護歴史を考究すること を目的としています。歴史研究は“古きを訪ねて新しきを知る”であります。つまり、それは“温故知新”であります。

 川嶋先生が年頭所感で論じておられました“看護師の特定行為の研修”制度問題で「これまで絶対的医行為として、看護師が手を染めなかった領域の仕事を可能にする研修を歓迎してよいものかどうか」という新たな課題提示や昨年度の第31回学術集会で大いに議論を醸した「准看制度」問題は、「医行為」と「看護行為」はそれぞれに独自の機能を有するがゆえに、協働という立場はあっても、常に補助者としての行為としての位置づけでは、看護専門職的位置づけには成り得ないという点での十分に論議しつくさねばならない問題でありましょう。他方、学術(Academic)の持つ意味を考えた場合、看護が学問であるかどうかの議論がなされた歴史的事実(Historical facts)も見逃せない問題でもありましょう。現実社会を見渡せば看護界で起きている問題は山積みしています。

 歴史を振り返るのは人間の主体的な行為であり、各人の問題意識に従って課題が設定され、研究が実践されます。ナイチンゲールは著作の中で「生活は心を目覚めさせて問いを抱かせ、心は知性を目覚めさせてその問いに答えを要求する」というオーギュスト・コントの言葉を引用しています。その真意は、実際に存在する問題を現象学的認識論で受け止め、現存する問題について認識するのみにとどまらず、知性の働きを通して問題解決の一助となりうる研究実践が求められるという事であろうと考えています。

 自分の生きている社会に対して全く何の問題意識も持っていない看護職者には、看護の歴史に対する課題意識も生まれてきませんし、知性がなければ、調査の中で客観的な根拠を示し、その史実に基づいて論理的な考察を行い、他者を納得させられる研究には成り得ないでしょう。したがって、歴史研究には、新たな資料発掘という側面と、先人の業績を踏まえて研究を批判あるいは深化・発展させつつ、その本質探求が歴史学や歴史哲学にもなりえ、看護学の深化と成熟につなげる大きな役割があると私は考えています。

 会員の皆様がそれぞれのお立場で課題発見とその解決の為の糸口として看護歴史研究に邁進されますよう祈念してご挨拶とさせていただきます。

(2018.1.15 会報69号「年頭所感(ご挨拶)」より転載)