日本救急医学会

「第3回災害医療セミナー」抄録


6.UA機乱気流災害の対応

牧野俊郎先生(日本医科大学新東京国際空港クリニック)

7.放射性物質による災害時の対応

前川和彦先生(東京大学救急部)


6.UA機乱気流災害の対応

航空機事故および乱気流事故対応についての検討

―U.A.機乱気流災害の対応の間題点と今後いかにあるべきか―

日本医科大学新東京病院国際空港クリニック 牧野俊郎


 1997年12月末に発生した米国 U.A.(United Airline)機乱気流事故では死者1名を含む重軽傷者百数十名と、これまで成田空港が携わった乱気流事故としては最悪の事態となってしまった。

 今回の事故については、関係各機関すべてにそれぞれ反省すべき点があげられる。わが国を代表する国際空港として、乱気流災害を合む航空機事故対策はいかにあるべきか、成田空港の現状および日本医大空港クリニックの実惰を通じて考えたい。

表、航空機事故発生形態別救急医療対応

平成 6年 3月24日 空港公団保安部

 (本表の web収載は省略させていただきます。web担当者)

表、U.A.機乱気流事故対応の問題点と考えられること

  1. 航空会社(U.A.)→運輸省東京管制局へ充分な情報伝達がなされたか?
    • 充分な情報の欠如
    • 蓋を開けたら情報とは大違いだった

  2. 公団担当者の理解、情報把握の不備

  3. 航空機事故演習における小規模航空機事故として捕らえるべき

  4. 公団が想定している緊急時医療機関への確実な情報提供不足

  5. 消防、警察、警備、航空会社、公団その他空港内の関係機関への「出動要請」と 的確な指示なし

  6. 日本医大空港クリニックの「初期出動」「初期選別」「初期治療」の今後の再徹 底。必要に応じて三郡医師会航空機事故対策協議会の応援体制

  7. 到着 U.A.機周辺に集結した救急隊(5隊)による医師到着までの「初期選別」指 揮ができなかった。―到着させるSpotをもっと広い場所にする必要があったという声も。

  8. 合同対策本部の設置はなされなかった。

  9. 一ケ所の医療施設のみ患者集中

  10. 空港クリニック、千葉北総病院、附属病院救命救急センター、その他との連携の徹底(応援・支援体制―医師、看護婦、事務、中検、放射線技師を含めて)

  11. 公団、航空会社、医療機関、消防、警察、成田市、千葉県、迎輸省等すべての関 係機関がそれぞれの立場に立って、今後「いかにあるべきか」を充分検討、反省をする。

図、航空機事故(乱気流等)マニュアル

 (本図の web収載は省略させていただきます。web担当者)


7.放射線物質による災害時の対応

放射線災害医療の墓礎

東京大学医学部救急医学講座 前川和彦


1、放射線災害医療とその歴史

 ここでは、放射線障害の歴史、放射線事故医療の発生と展開、過去の放射線事故、放射線災害等を概観し、放射線被曝や汚染を伴った救急患者の医療の概略を示す。

2、放射線災害医痕―わが国の現状―

1)放射線災害の起こりうる場所

 わが国の原子力発電所、再処理施設、原子力燃料工場をはじめ放射線を取り扱う場所を具体的に示し、さらにオークリッジ(USA)に登録されている過去に起こった放射線事故の場所等 のデータを示す。

2)放射繰災害医療の法的側面

 放射線災害医療は、通常に放射線を取り扱っている範囲内ではその必要性はなく、予期しない事態が発生し作業者等が放射線被曝や汚染を受けたり、加えて外傷や熱傷を伴った時に、あるいは事故の規模が大きく環境に影響を及ぼして周辺住民をも巻き込むような場合に要求される。わが国においては、放射線を取り扱う場所で発生した救急患者に対応する医療計画はほとん どないに等しい状態であった。放射線災害医療に関する唯一の法律は1979年の”原子 力発電所等の周辺の防災対策について”のみであった。漸く、1997年になって防災指 針の見直しが行われ、その第10章に原子力防災の項目が新たに追加されて、わが国の 防災の主要項目の一つとみなされるようになった。これらの歴史的背景と今後の法的 課題について資料をもとに解説する。

3)放射線災害医療体制について

 わが国の放射線災害医療体制は机上で計画はされているものの、災害医療という生きた機能を実際に発揮できるものにはなっていない。既に策定されている体制を紹介し、次にそれら を生きた機能を有するものにするには何が必要かを指摘し、実現へのブログラムを提示する。

3、放射線災害医療に必要な放射線学的墓礎知識

  1. 放射線をエネルギーの流れとしてとらえる
  2. 放射線の種類(α線、β線、γ線、中性子線、X線)とその物理的性質
  3. 放射線が生体に及ぼす影響
  4. 放射線核種の物理的性質と生体内での代謝動態
  5. 放射線の単位とその意味
  6. 被曝の形態(外部被曝、体表面汚染、創傷汚染、内部被曝等)
  7. 放射線核種の体内摂取経路(吸入、経口摂取、創傷部、皮膚吸収等)
  8. 全身被曝による急性放射線症の病態、診断と治療
  9. 内部被曝の臨床的問題点(ガン発生のリスクの増大等)
  10. 局所被曝の臨床
  11. 外部被曝と汚染の違い
  12. 汚染、外部被曝の防護法

4、放射線により被曝や汚染を伴った患者の取り扱いの墓本

1)放射線災害医療の特殊性の理解

2)初期治療

発災から3〜6時間の初期治療の要点について

3)根本的治療(入院して行う被曝や汚染に関するもの)

対象:
  • 1sV以上の全身被曝
  • 年摂取限度を(大きく)越える内部被曝
  • β線熱傷の重症患者
  • 高線量局所被爆者
  • 同時に他臓器の外傷を伴っているもの

治療法の墓本:

 造血器障害、消化管障害、重症感染症や多臓器不全、重症熱傷、四肢末梢の壊死、重傷あるいは難治性潰蕩に対する治療および放射線核種の体内摂取に対する除染治療である。


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