本講座は現東京都健康長寿医療センター長の許 俊鋭先生が2008年に創設され、2021年から4期目を迎えております。第2代特任教授の絹川 弘一郎先生が2015年10月に富山大学第二内科教授に就任したことに伴い、2016年5月より私が現講座長をつとめております。
私は絹川 弘一郎先生のご指導のもと、心不全、補助人工心臓、心臓移植、肺高血圧の仕事に取り組んで参りました。補助人工心臓や心臓移植の分野では東京大学は既に我が国ではトップクラスの実績を有しておりますが、この分野において本講座は重要な役割を果たしてきたものと自負しております。また、東大病院は心臓移植のみならず、2014年から肺移植の実施施設ともなりました。これに伴い、これまで以上に多くの重症肺高血圧の患者が当院に紹介されるようになりました。3期目を迎えた本講座は、重症左心不全のみならず、肺高血圧をはじめとした重症右心不全についても重要な研究テーマとして掲げております。
現在、500人を超える患者さんが心臓移植を待機しています。そのうちの約75%がStatus 1であり、植込型補助人工心臓の累積装着患者数も既に500人を超えています。また、現在我が国では植込型補助人工心臓は心臓移植までのブリッジ使用に限定されていますが、既に欧米では一定の条件を満たせば移植適応外の患者さんに用いることも可能になっております。移植件数の著しく少ない我が国においては、植込型補助人工心臓治療の果たすべき役割はますます大きくなってきますので、本講座でも我が国における至適な植込型補助人工心臓治療体制の確立を目指して取り組んでまいります。また、骨格筋芽細胞を培養した「ハートシート」が条件付き承認を得るなど、再生医療やデバイスを用いた心不全治療においても新しい展開が待っています。そのような技術をいち早く取り入れ、よりよい運用ができるような臨床データを集積することも本講座の使命と心得、進んでいきたいと考えております。
甚だ微力ではございますが、重症心不全治療の進歩の一助となれるよう努力する所存ですので、どうぞ宜しくお願い致します。
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