和歌山県たばこ対策指針 

はじめに

 たばこに対する県民の考え方は、ここ数年、国際化、情報化の波を受け大きく変わって参りました。今までなら、職場やレストランなどでは、喫煙が当たり前のようであったのが、今では、職場では終日禁煙が、また、レストランなどでも喫煙席と禁煙席が区分されるところが、徐々にではありますが、着実に増えております。喫煙が、肺がんや心臓病をはじめとして、様々な病気に関係があることが多くの疫学調査の結果、明らかになってきたからです。もちろん、たばこを吸っていても、健康で長生きされる方はいます。しかし、病気になる危険性が無視できないほど大きくなるとすれば、それは避けるべきです。

 近年、大人、特に男性の喫煙率が減少傾向にあるのに対し、未成年や若い女性の喫煙率が増えているという調査結果があります。

 厚生省における国民の健康づくり運動「健康日本21」を受け、和歌山県でも健康づくりの中心的な推進団体である「わかやま21世紀健康づくり推進会議」から、県民、行政等に対し、病気の一次予防という観点から「元気わかやま行動計画」が提言をされました。その中でも、喫煙が多くの疾病の危険因子であることから、たばこ対策への社会的な取り組みが重要課題のひとつとされています。

 これらのことから、県では、保健・医療の専門家、小・中・高生徒の保護者会、健康づくり推進団体、さらには、たばこを製造、販売されている団体の方にもご参加を願い、「和歌山県たばこ対策指針」策定委員会を設置し、未成年者、妊産婦等の喫煙問題、非喫煙者の保護、たばこをやめたい人への禁煙支援体制の整備等の課題に対し、どう対応していくべきかをご検討頂き、指針を策定いたしました。

 委員会の議論の中でも、この指針が現状の中では厳しすぎるという意見、また反対に、もっと規制を厳しく、あるいは対策に目標期限を設定すべきであるとの意見もありましたが、県としては、できるだけ具体的に方向性を示すことが最優先であるとの認識の基に、各委員にご理解をお願いいたしました。

 県民の皆様や各団体におかれましても、自分の健康、そして自分の周りの人や愛する家族、そして明日の日本を担う青少年の健康を守るという観点から、本指針の趣旨をご理解のうえ、たばこ対策への取り組みを積極的に実行、推進していただきますようお願い申し上げます。

      平成13年3月

                                                                                                     和歌山県福祉保健部長 白井保世

  

1 基本方針

   これまでのたばこと疾病に関する多くの疫学研究によれば、たばこは、肺がんをはじめとする各種のがん、心臓病、呼吸器疾患、歯周病等の危険因子であることが認められており、また、青少年期に喫煙を始めると、成人後に喫煙を始めた者に比べ、がんや心臓病などのリスクが高まることも示されている。さらに、胎児や母体にとっては、低体重児出産、流・早産など妊娠に関連した異常の危険因子である。

   また、周囲の喫煙者のたばこの煙による受動喫煙も、肺がんや心臓病、呼吸器疾患、乳幼児突然死症候群などの危険因子であるほか、急性影響として、頭痛などの諸症状の訴えや心拍増加、血管収縮等の生理学的反応へのリスクを示す疫学的研究がある。

  さらに、職場等での喫煙は、喫煙者本人がストレス緩和と感じても、非喫煙者に対し、不快感やストレス等の精神・心理面の影響をも与えている。

  このことから、たばこと健康の問題に関する県民の関心も高まっており、実効性のあるたばこ対策の必要性が求められるようになった。

 たばこ対策の最終目標は「たばこによる疾病・死亡をなくす」ことである。しかし、肺がん等、たばこ関連疾患が顕在化するまでには数十年のタイムラグがあることから、たばこによる死亡を減少させるためには、徹底した対策を早急に実施することが必要である。

  まず、様々な疾病と喫煙との関係についての認識を普及するために、県民への正確で十分な情報提供が重要であり、それを基に、未成年者や妊産婦の喫煙防止(防煙)、非喫煙者を受動喫煙から保護するための環境づくり(分煙)、禁煙希望者に対する禁煙支援(禁煙サポート)の3つの対策を推進する必要がある。

  また、未成年者や禁煙希望者をたばこ及びたばこの広告から遠ざけるための社会環境の整備も必要である。

  喫煙が嗜好のひとつであり、喫煙者が多く存在していることは事実であるが、たばこの煙による健康への影響は、より直接的であり、煙が喫煙者本人だけではなく周囲の人々の健康にも影響を与えるということ、さらには、依存性があるということからも、個々人の問題としてではなく県民全体の問題としてたばこ対策に取り組む必要がある。

 

2 喫煙が及ぼす健康影響についての知識の普及

  成人の喫煙については、本人の健康影響に関する限り、喫煙をするかしないかは基本的には本人の責任において判断されるものであるが、県や市町村、保健医療機関は、住民の疾病へのリスクを低下させ、健康を保持・増進させるため、喫煙の健康への悪影響や有効な禁煙サポートの情報を収集し、喫煙者並びに喫煙者の周りにいる者が、たばこの健康への影響について、正しい判断ができるように、パンフレットの配布、広報紙やマスコミの活用、講演会、シンポジウムの開催等、様々な機会を通じて正確で十分な情報提供を行う。

  また、健康影響への知識を普及し、効果的なたばこ対策を推進するため、保護者会、教育機関、保健医療機関、健康推進団体等の関係機関・団体や専門家によるネットワークを構築する。

 

3 未成年者、妊産婦等の喫煙対策

  未成年者の喫煙問題については、これまでも、たばこ関係業界等でも、「売らない」「買わせない」「吸わせない」の三無運動をスローガンとして、取り組みがなされてきた。しかしながら、我が国では、自動販売機でたばこが販売されていること、比較的買いやすい価格設定であること等から未成年者が容易にたばこを入手でき、また、たばこが未成年者の健康に及ぼす影響への情報不足に基づく社会の寛大さ、禁煙教育・指導のノウハウ不足等とも相まって、違法であるにもかかわらず、未成年者の喫煙が特異な例とは言えなくなっている状況にある。

心身共に未発達の子供が喫煙することで、将来の疾病へのリスクが大幅に増加することを社会全体、とりわけ保護者や教育機関、たばこ関係業界が真剣に認識し、未成年者には「絶対たばこは吸わせない」という厳格な姿勢が求められる。

  喫煙は依存性があることから、いったん習慣として喫煙に至った者を中断させることは大きな困難を伴う。学校や保護者、関係機関等の緊密な連携のもと、喫煙が未発達の子供たちに及ぼす影響について、小学生の低学年から、教育・指導を徹底することで、中学生になると目立ち始める喫煙を始めさせないことが防煙対策として重要である。

  未成年者の喫煙は法律でも禁じられており、喫煙で補導された者に対しては、健康教育の観点からの禁煙指導も徹底して行うことが必要である。

  また、妊産婦の喫煙についても、積極的な対策が必要である。妊婦の喫煙は、低出生児体重児や流・早産等妊娠に関連した異常の危険因子であり、産婦の喫煙は乳幼児突然死症候群等の危険因子である。妊娠は気づくまでにタイムラグがあることから、女性の喫煙対策は重要である。最近、若い女性の喫煙率が高くなっており、たばこに興味を持つ前から妊娠と喫煙の関係についての教育を行う必要がある。その際、女生徒のみならず、男女協力して子育てをしていくという観点から、男女生徒を対象に実施することが効果的である。

  以上のことから、未成年者等の喫煙については、保護者、教育機関、たばこ関係業界、行政、保健医療機関、各種団体、警察等が一致団結して、防止していくという共通認識を持ちながら、次のような取り組みを厳格に進めるむ必要がある。

(1) 保護者

  保護者は、子供がたばこに興味を示す前、小学校の低学年のうちから家庭内で話し合い「たばこは有害であり吸わない」という認識を子供自身に持たせることで、未成年者の喫煙防止に厳格に取り組む。

  また、未成年者のたばこの入手先として、家からというケースもあり、未成年者のいる家庭では、未成年者が保護者のたばこを吸うことのないようたばこの管理を徹底する。

 さらに、未成年者は好奇心からたばこを吸い始める率が高いという調査結果があることから、保護者が喫煙者である場合、未成年者がたばこに興味を持たないよう、その前では禁煙に努める。

 喫煙を発見した場合は、保護者自身が「たばこぐらい」という考えを持たずに、毅然とした態度で、未成年者へのたばこの影響を十分説明し、たばこをやめさせることが必要である。

(2) 教育機関

@ 教育委員会は、学校関係者に児童生徒の喫煙対策の重要性を認識させるとともに、小・中・高校の各段階に合わせて、教員が効果的な指導ができるよう、保健医療部局や保健医療機関と連携し、全ての教員や学校関係者に対し、喫煙の健康への影響、特に、心身共に未発達の生徒の喫煙が及ぼす影響等について、効果的な指導方法の研修を実施する。

  また、妊娠と喫煙の関係についても教員が効果的な指導ができるよう、保健医療部局や保健医療機関と連携し、効果的な指導方法の研修を実施する。

A 各学校においては、学校長は保護者会と共に、各学校の実状に合わせ、学校医、保健所等の協力を得て、生徒やその保護者に対し、単に禁止するだけではなく、なぜ、喫煙が問題なのか等、たばこの健康への影響について具体的に教育指導を行う。

  特に、安易にたばこに興味を持ち、誘惑に負けることのない態度を小さいうちから身に付けさせるために、小学校低学年の禁煙教育を重視する必要がある。

妊娠と喫煙の関係についても、子供がたばこに興味を示す前、小学校低学年のうちから男女生徒を対象に教育を行う。

B 未成年者をたばこから遠ざけるために、学校敷地内は禁煙とする。

(3) たばこ販売者

@ たばこを販売する者は、未成年者の喫煙が違法であるとともに、未来を担う青少年の健康に大きく影響を与えるということを認識し、社会的責任を果たす観点から、たばこ店、自動販売機、コンビニエンス・ストア等、いずれの販売形態であっても、未成年と思われる者が、たばこを購入しようとしているときは、身分証明書等で年齢を確認し、成人であることが確認できないときは、販売しないことの徹底を図る。

A 中・高校生のたばこの入手方法としては、自動販売機からの購入が一番多いという調査結果がある。現在、自動販売機の設置許可にあたっては、たばこの販売について未成年者の喫煙防止の観点から十分な管理、監督が条件となっている。

  しかしながら、現実は、全く管理、監督できない位置に設置されていたり、店舗に併設されていても、必ずしも、店舗から管理、監督できているとは言い難い例が多々見られる。

  以上のことから、たばこを販売する者は、管理、監督できない自動販売機が未成年者の喫煙を容易にすることを認識し、そのような場所に設置している自動販売機を早急に撤去または管理、監督できる位置に移設をする。

 また、時間的にも深夜の自主規制だけでは、店舗閉店後、夜11時まで、全く管理、監督できず、その間の未成年者のたばこの購入が防げないことから、技術的に対応できない限り、自動販売機の稼働時間の自主規制を店舗閉店中とする。

 以上の対策を行っても、自動販売機で未成年者の購入を防ぐことができない場合は、対面販売に切り替える等の対策を講じる。

       (4) たばこ製造者

 たばこ製造者は、たばこ販売者に販売方法を指導している立場から、未成年者の喫煙対策について、実効性のある指導を徹底する。

 広告については、自主規制がされているとはいうものの、児童・生徒も通学等に利用する電車各車両内、街角でも交差点等の目立つところ、さらに自動販売機にも購入を促す広告がある等、「製造たばこに係る広告を行う者は、未成年者の喫煙防止及び製造たばこの消費と健康との関係に配慮するとともに、その広告が過度にわたることがないように努めなければならない。」というたばこ事業法の規定からも改善が望まれる。

 さらに、妊産婦の喫煙についても、重大な健康影響があることから、喫煙防止の啓発を行う。

      (5) 職 場

  職場の管理者は、職場において、未成年の従業員に対したばこの健康への影響につ いての指導を行い、たばこを吸わせないことの徹底を図る。

      (6) 行 政

@ 県は、未成年者や妊産婦の喫煙が及ぼす健康影響について、県民並びに関係機関に対し積極的に情報提供を行い、関係機関と共に、その防止ための啓発を行う。

また、学校や職場、地域等で、効果的な禁煙指導ができるマンパワーを確保するため、指導者の養成を行う。

A 保健所並びに市町村は、管内の学校、保護者会に協力し、生徒の喫煙防止並びに禁煙指導のための教室を開催する。

 また、妊産婦の喫煙が健康に及ぼす影響についても、様々な機会をとらえ、禁煙指導を行う。

      (7) 医療関係者

        妊婦が受診する産婦人科等においては、妊娠と喫煙問題の指導を強化する。 

4 非喫煙者の保護(分煙対策)

わが国では、これまで、他人のたばこについては、非喫煙者が職場等での人間関係が損なわれないよう我慢してきたり、社会も比較的寛容であったが、副流煙が及ぼす健康影響が明らかになるにつれ、分煙の必要性が緊急のものとなった。公共の場や職場、飲食施設等、他の人がいる場所においては、たばこを吸わないという原則を個人としても組織としても徹底することで非喫煙者の保護を図る必要がある。

  なお、職場、官公庁、ホール、図書館等のロビーや店舗の休憩所等に、喫煙コーナーを設置する場合は、設置者は、有効な換気装置と天井からの仕切り等を設置し、たばこの煙が、外に流出しないような構造とする。設置後も、定期的に、喫煙コーナーからたばこの煙が流れ出ていないか技術的に点検し、不備があれば改善する。

 各分野別の分煙のあり方については、次のとおりとする。

(1) 保健医療機関

 保健医療機関は、主に疾病状況にある者が利用することから、待合室も含め、建物内は禁煙とする。

(2) 教育機関

  未成年者をたばこから遠ざけるために、学校敷地内は、禁煙とすることで、当然、非喫煙者をたばこの煙から保護することができる。

(3) 官公庁

  行政機関は(出先機関も含む)は、住民の健康を守る立場から率先して、庁舎内終日禁煙を実施する。住民からロビー等での喫煙要望がある場合は、喫煙コーナーを設置する。

      (4) 職 場

  職場は、労働者が長時間、過ごす場所であり、職場の環境は、健康に大きく影響するため、特に、厳格な対応が必要である。

禁煙タイムの設定等の時間分煙では、喫煙者、非喫煙者双方にストレスが生じるため、合意を得やすい空間分煙を促進する。

  執務室内、会議室等、共通使用空間は、終日禁煙とする。

  喫煙の希望がある場合は、喫煙室を設置する。喫煙室を設置することが困難な場合は、当分の間、喫煙コーナーを設置する。

  来客等の外来者に対しても、空間分煙に協力を求める。

  なお、平成8年2月には、労働省(現在の厚生労働省)により、「喫煙の影響が非喫煙者の健康に及ぶことを防ぎつつ、喫煙者と非喫煙者が良好な人間関係の下に就業できるよう、事業場において関係者が講ずべき原則的な措置を示すことにより労働者の健康の確保や快適な職場環境の形成の促進を図ることを目的」として「職場における喫煙対策のためのガイドライン」が出されている。

また、労働基準連合会においても、快適職場推進アドバイザーが設置され、分煙対策について相談に応じている。

各職場においては、これらを有効に活用することで、良好な人間関係を損なうことなく、非喫煙者の保護を図る。

(5) 飲食店、店舗等、不特定多数の者が利用する場所

  レストラン、喫茶店等の飲食店等では、喫煙席と禁煙席を分け、非喫煙者への配慮をする。また、換気設備が十分でないところは、全面禁煙とする。 

  デパート、スーパーマーケット等では、一定の喫煙コーナーを設ける。ただし、すべての椅子のある休憩所を喫煙コーナーとするのではなく、非喫煙者のための休憩所も設置する。

(6) 家 庭

  家庭においても、家族に非喫煙者がいる場合、特に乳幼児、妊産婦のいる世帯では受動喫煙による健康への影響の大きさや、乳幼児のたばこの誤飲・誤嚥事故の頻度が高いことから分煙の徹底を進める。

5 禁煙の支援

 平成10年度「喫煙と健康問題に関する実態調査」では、喫煙者(15歳以上)の26.7%が「やめたい」と考えており、「本数を減らしたい」と考える者を含めた禁煙希望者は64.2%となっている。

  これらの者への対策として、禁煙希望者が禁煙に取り組めるように、保健・医療の場だけでなく職場、学校等でも環境を整え支援することが必要である。

  最近では、民間の医師等のボランティアによるインターネット等を活用した禁煙支援等もあり、社会的にもその支援体制が整備されつつある。

 禁煙の意志がない妊娠の可能性のある女性に対しても、胎児への悪影響、妊娠経過への悪影響を避けるため、行政や保健医療機関は、十分な情報提供と禁煙を強力に指導する。

  なお、たばこの広告や自動販売機がいたるところにある現状は、禁煙を始めて間もない人や禁煙希望者への再喫煙の誘因ともなり改善が望まれる。

(1) 市町村

 市町村では、禁煙希望者に対して、老人保健法の対象者には個別健康教育等で支援するとともに、若い人たちに対しても禁煙教室やイベント等で効果的な支援を積極的に行う。

(2)

県は、市町村のたばこに関する個別健康教育のスタッフへの研修等の支援を行う。 学校、職場等での禁煙サポートヘの取り組みを支援するため、禁煙指導者の養成、禁煙サポートに必要な情報の提供等を行う。

(3) 保健所

保健所は、市町村のたばこに関する個別健康教育等への技術支援を行う。また、禁煙教室の開催等で禁煙支援を図る。

(4) 医療関係者

医療機関では禁煙外来等の禁煙指導を充実し、たばこをやめたい人への支援を行う。

        県立医科大学や医師会等でも、効果的な禁煙支援のための研究や情報提供を行う。

   妊娠可能な喫煙女性が医療機関を受診した際には、医療機関は、喫煙が妊娠出産に及ぼす悪影響や子供への健康影響等を十分説明し禁煙指導を行う。

(5) 職 場

 職場においては、従業員の健康保持のため、産業医等の指導を受け、禁煙希望者に対し、環境を整え支援する。

 

6 おわりに

  今後、この指針に基づき、たばこ対策を効果的に推進するため、保護者会、教育関係者、保健医療関係者、健康推進団体等の関係団体や専門家による和歌山県たばこ対策推進協議会を設立し県民運動としての取組を進める。

 

座 長 所 感

    まず、当委員会において、議論された主な内容の要旨は次のとおりである。

基本認識

○ 喫煙が疫学的に各種疾病のリスクファクターであることは委員全員異論がない。しかし、JTとしては、喫煙の心身全体に対しての影響、疾病等との因果関係の全て、受動喫煙と疾病の関係について未だ不明との立場をとっており、指針案にある「たばこは有害」というような断定的な表現には異議があると主張したのに対し、医学的な立場からは、たばこの害は、現在知られている科学的な手法の中で明らかとの反論があった。

未成年者の喫煙防止

○ 未成年者の喫煙防止については、委員全員がその重要性を認識しているが、その対策としては、それぞれの立場で大きく意見が分かれ、活発な議論がなされた。

○ 教育の現場では、教師はたばこ等の生活指導に多くの時間が裂かれ、この指針がその手助けになればとの意見や、現実に、校内全面禁煙にした学校で、生徒の喫煙による非行の補導等が非常に少ないという例の紹介があった。一方、学習指導要綱の内容も徹底しがたい現状に、教員が自覚を持って子供たちを指導できるのか、学校敷地内禁煙はいいことだが、現実には難しいのではないかとの意見もあった。

○ 「管理、監督できない場所に設置された自動販売機を早急に撤去または管理、監督できる位置に移設する」という指針案について、たばこ業界からは、たばこ販売店の営業権、生活権を大きく阻害するものであり、現在、実施している啓蒙活動や自動販売機の深夜稼働自粛は、未成年者の喫煙防止上効果があるものと認識しており、更なる自粛は事実上無理であるとの意見があった。

  これに対して、未成年者がたばこを入手する手段として、自動販売機が圧倒的に多いという調査結果があるのに、生活権を保障するために、未成年者のたばこを容認していることにもなりかねないとの意見や、指針への自動販売機対策の目標期限の設定や条例での規制も検討すべきであるとの意見もあった。

○ コンビニの対面販売についても、若い店員が多い状況から、未成年者へのたばこ販売禁止の徹底が疑問視されたのに対し、未成年者の喫煙防止には、自動販売機からの購入を防ぐことが、一番効果的であり、コンビニの対面販売でも、免許証等で成人の確認をすべきであって、法律の遵守のために必要なことを着実にさせ、それをしなければ、未成年者喫煙禁止法で摘発すべきであるとの意見があった。

○ たばこの広告については、街中随所にみられることから、指針案に「たばこ事業法の規定からも改正が望まれる」とあるが、JTとしては、喫煙の推奨ではなくお客様の銘柄選択のための情報提供であり、この文言は不適切であるとの反論があった。

  また、欧米では、たばこと疾病の関係を直接的な表現でJTのたばこのパッケージにも書いているが、日本では、未成年者をターゲットにしているような感じで、指針の広告の部分をもう少し厳しくしてもいいのではないかとの意見があった。

○ 指針に「たばこ製造者は、たばこ販売者に販売方法を指導している立場」とあるが、たばこ製造者は、未成年者の喫煙防止、マナー等の普及をたばこ販売者にお願いする立場にしかないとの意見があった。

非喫煙者の保護

○ 分煙の必要性についても、委員全員異論がない。しかし、保健医療機関や教育機関等の建物内の禁煙については、必要という意見と成人喫煙者を過度に無視した内容との意見とに分かれた。また、現状は分煙すら確立してない中で、喫煙者も気持ちよく吸える状況にないことから、メーカーとしても分煙推進のための広告をするとか、設備に費用を使うとかの取組等も必要ではないかとの意見があった。

その他

その他の意見としては、次のようなものがあった。

        ○ 父母が喫煙者の場合、日曜参観等で子供と一緒にたばこについて考える時間を作るべきである。

        ○ 喫煙率や分煙状況の調査をすべきである。

○ 歩行喫煙、たばこのポイ捨てについても、条例等で規制する方向を指針に盛り込むべきである。

○ 医大等の学生に禁煙教育を実習として取り入れ、医師や教師は、たばこを吸わないという方向付けをさせることを指針に盛り込むべきである。

○ たばこ関係業者の職業転換の施策も指針とは別に検討すべきである。

○ 街の中における景観等の問題からも自動販売機はなくすべきである。

まとめ

 指針の策定後、自動販売機の問題について、たばこ業界は指針案に反対したからというのではなく、みんなで理想に近づけていくという気持ちを持ってほしいとの意見があったことに対し、なかなか難しい業界の現実もあるが、子供たちや若い人たちには健全ですばらしい人間になってもらいたいので、これに近づけるように少しでも努力することはやぶさかではないという趣旨の発言があった。この気持ちは本当に重要であり、様々な現実問題はあるにせよ、私たち大人は、日本の将来を担う青少年とたばこの問題を真剣に考え、自ら行動する責任があると感じた。

 今回の指針は、残念ながら、たばこ関係業界の委員の賛成は得られなかったが、目指す方向性が示されたことの意義は大きく、県民や関係者が、たばこと健康について考え行動する際の指針として、十分な活用をお願いしたい。座長としては、和歌山県を愛する全ての県民や関係者の熱意と英知で、今回、議論された問題は必ず解決していけるものと確信している。

 

「和歌山県たばこ対策指針」策定委員会設置要綱

(目的)

第1条 たばこは、各種のがんや循環器疾患など喫煙者の健康に様々な悪影響を及ぼすだけでなく、周囲の非喫煙者への影響も大きく、特に、女性や未成年者に対するリスクが大きいことも指摘されている。

  このことから、本県の健康づくりの推進母体である「わかやま21世紀健康づくり推進会議」からの提言である「元気わかやま行動計画」においても、県民の健康の保持増進及び疾病予防の観点から、たばこ対策に積極的に取り組み、たばこの健康への危険性についての情報提供とともに、女性や未成年者をたばこの害から守る防煙対策、非喫煙者を受動喫煙から守る分煙対策や禁煙を希望する者への適切な禁煙支援体制の整備を早急に推進する必要があるとされたところである。

  このため、本県におけるたばこ対策の具体策や関係機関の役割について検討し、今後のたばこ対策を効果的に推進するための指針を策定するための「和歌山県たばこ対策指針策定委員会」(以下、「委員会」という。)を設置する。

(構成員)

第2条 委員会は次の関係者をもって構成する。(別表)

  (1)保健衛生関係者(保健所、市町村、労働局)

  (2)教育関係者(保護者代表)

  (3)医療関係者(医師会、医大等)

  (4)健康推進団体

  (5)供給者(JT、たばこ販売組合)

(協議所掌事項)

第3条 委員会の所掌事項は次に掲げるとおりである。

  (1)県内のたばこ対策の現状と問題点

  (2)県内のたばこ対策を推進するための関係機関の役割

  (3)県内のたばこ対策を推進するための指針の策定

  (4)その他必要な事項

(委員長及び副委員長)

第4条 委員会に委員長及び副委員長1人を置き、委員の互選によって定める。

2 委員長は、委員会を代表し、会務を総理する。

3 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故あるときはその職務を代理する。

(委員会の開催)

第5条 委員会は健康対策課長が招集する。

2 委員会の進行のため座長を置き、委員長をもってあてるものとする。

3 委員会には、必要に応じ構成員以外の者を出席させることができる。

(事務局)

第6条 委員会の庶務は事務局で行い、事務局は健康対策課に置く。

(補 則)

第7条 この要綱に定めるもののほか、委員会の運営に関して必要な事項は、その都度協議して定める。

附 則

この要綱は平成13年2月9日から施行する。

 

「和歌山県たばこ対策指針」策定委員会委員名簿     

◎ 委員長  ○ 副委員長                             敬称略 50音順

     氏  名            職         名

   芥川善男        日本たばこ産業 和歌山営業所長

   石田真敏        和歌山県市長会 会長

   乾  宏行        海南市民病院 内科医師

   尾浦正二        和歌山県立医科大学 外科学第一講座 講師

   小野里 八郎     和歌山労働局安全衛生課長

   川端正弘        たばこ商業協同組合和歌山県連合会 会長

   白井保世        和歌山県福祉保健部長

   高木歓恒        和歌山県PTA連合会 会長

   竹田昌弘        和歌山県高等学校PTA連合会 会長

   寺下浩彰        和歌山県産業保健活動推進協議会 委員長

   中川利彦        たばこ問題を考える会・和歌山 事務局長

○ 中西重裕        和歌山県青年団体連絡協議会 会長   

          (和歌山県子育て環境づくり推進協議会 会長)

   宮本 利代子     和歌山県食生活改善推進協議会 会長

   森岡聖次        和歌山県保健所長会 新宮保健所古座支所長

◎ 山家恒雄        和歌山県医師会 理事

   山ア繁雄        和歌山県町村会 会長 

 

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