| 親の禁煙は早めに 8〜9歳までなら子供の喫煙リスクが有意に低下 Medical Tribune/2003年8月7日号 / Vol.36 NO.32 / P.17 http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/tribune/36/32/news08.html |
| 〔米ワシトン州シアトル〕 フレッドハッチンソン癌研究センター(シアトル)の新たな研究結果から,親に禁煙させる説得力のある理由が示された。同センターとワシントン大学(シアトル)臨床心理学のJonathan B. Bricker氏らは,子供が 8 〜 9 歳(小学 3 年生)になるまでに両親が禁煙すると,高校 3 年生までに喫煙者になるリスクを有意に低下できる,とAddiction(98: 585-593)に発表した。 |
| 両親の禁煙で40%低下 研究によると,子供が 8 〜 9 歳になるまでに片親が禁煙した場合,その子供の17〜18歳時での喫煙リスク(月 1 回以上)を25%低下でき,両親が禁煙した場合はほぼ40%低下できるという。 同センター公衆衛生科学部癌予防・試験プログラムの准研究員であるBricker氏は,「18歳に達するまで喫煙しなければ,その後も喫煙しない可能性は約90%であることがわかっている。したがって,今回の結果から,子供が 8 〜 9 歳になるまでにすべての両親が禁煙すると,青少年13万6,000人が喫煙者になることを防止できると示唆される」と述べている。 小児の喫煙に及ぼす親の影響力は,8 〜 9 歳までに両親が禁煙してさえいれば,片親が禁煙したときの子供の年齢は関係なかった。このことは最も意外な結果であった。同氏は「両親または片親が禁煙するのに,子供が乳幼児のときか小学 3 年生のときかは問題でない」と言う。 最も重要なのは 8 〜 9 歳までに両親が禁煙することであるが,8 〜 9 歳以降に親が禁煙することにも利点があるかどうかは不明で,それを明らかにするためにはさらなる研究が必要だという。また,親の禁煙と子供の喫煙行動との関連に性別が影響するという根拠は得られなかった。父親と母親の影響は同等で,少年と少女の感受性も同等であった。 当然の結果であるが,最も喫煙リスクが低いのは,喫煙したことがない両親の子供で,高校 3 年生の喫煙率は14%だった。これに次いで,子供が小学 3 年生に達するまでに両親が禁煙した場合は26%,両親が現在喫煙している場合は37%であった。 |
| 研究の限界は大多数が白人 この所見は,ワシントン州における20学区の小児と両親3,000例以上から収集したデータに基づく。9 年後に小児が小学 3 年生( 8 〜 9 歳)のときに両親の喫煙行動に関する情報を,小児が高校 3 年生(17〜18歳)になったときに小児の喫煙行動に関する情報を収集した。ニコチンの代謝産物であるコチニンの存在を唾液検査でチェックした結果,小児の喫煙行動の自己申告調査は十分正確であることが証明された。 Bricker氏は「今回の研究は,大規模な親子の集団を長期にフォローし,子供が幼いときの両親の禁煙と後期思春期における子供の喫煙行動との関係を調査した初めての前向き研究である」としている。 被験児の男女比は51:49,大多数(91%)が白人であったため,この結果は多民族社会に一般化できない。家族の収入や喫煙防止教育の影響が直接検討されていないことも研究の限界であるが,各学区の社会経済状況はデータ分析時に考慮されている。 研究は親の再喫煙についても考慮していない。Bricker氏は「 1 年間禁煙した両親の約40%がいずれ再喫煙すると見られる。したがって,われわれは両親の禁煙が子供の喫煙行動に及ぼす影響を過小評価していると思う。なぜなら,再喫煙した両親を除外しなかったためで,そのことがこの所見を薄めたと思われる」と言う。「子供が 8 歳以降の両親の禁煙と再喫煙を調査することは,子供が思春期に達したときに,禁煙の利点があるか,再喫煙のマイナス作用があるかを知るのに有用である」と述べている。 |
| 学校ぐるみの喫煙防止プログラムは無効 これまでに行われた喫煙防止研究のなかで最大かつ最長の学校ぐるみの介入研究,ハッチンソン喫煙防止プロジェクトでは,今回の研究の被験生徒が対照群となった。研究全体ではワシントン州の40学区における8,400人の生徒と600人の教師が関与した。国立癌研究所(NCI)が助成したこの15年間の研究の結果は2000年に発表された。 この研究は,学校ぐるみの喫煙防止プログラムが全く有効でないことを明らかにした。プログラムは,喫煙に向かわせる社会的影響をいかにして見出し,それに抵抗するかを青少年に教えることに焦点を当てている。意外な結果であったが,このデータは喫煙行動に及ぼす親の影響に関してさらなる分析を行うために役立つものと見られる。 Bricker氏は「この大規模研究のデータから対照群,すなわち非介入群を調べ,いくつかの科学的論争に答を出すことが可能だ。それは,親のみでなく,青少年に喫煙防止の介入を行う専門家にとっても,公衆衛生と臨床上の大きな意義を持つ」と述べている。 例えば,最初の青少年喫煙防止プログラムに親も参加させることの有用性が研究結果から示唆される。同氏は「防止プログラムは青少年のみならず親にまで対象を広げるべきだ。親には,自分が禁煙すれば子供を喫煙者にしないですむと自覚させる必要がある」と指摘する。 |
| 親の影響の研究が必要 なぜ,そして,どのように青少年は禁煙した親から影響を受けるのだろうか。Bricker氏らは,禁煙した親がレストランで禁煙席を希望したり,家庭での喫煙を禁止するなど反喫煙行動を取ることが,小児の全体的喫煙曝露を減らすからだと考えている。 親の影響の機序をさらに研究する必要があるが,喫煙感受性が高まる時期はほぼ 8 〜20歳である。この「喫煙行動獲得期」はおそらく親や友人の喫煙モデルと遺伝の組み合わせに影響される。成人の行動をまねる青少年の願望が原因のこともあるが,現実には成人の25%が喫煙しているにすぎない。同氏は「思春期は小児が大人としてのアイデンティティーをはぐくむ時期であり,ある意味で,自分を大人のように感じさせる行動を衣服を試着するように試しているのではないか」と推測している。また,禁煙を望む親はかかりつけ医に相談するよう勧めている。 同氏は「禁煙の最初の一歩は,自ら禁煙したいと思うようになることだ。自分のためではなくとも,自分の子供のために一歩を踏み出し,自分の喫煙行動をなんとかしたいと思う親または近く親になる人はいる。今回の研究は彼らを禁煙に踏み切らせるものだ」としている。 |