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胎児骨系統疾患をめぐる最近の話題

胎児骨系統疾患をめぐる最近の話題

                                (2013年7月5日 室月 淳)

胎児骨系統疾患の診断とケアに関するいくつかの最近の話題をご紹介いたします.

 国際分類と名称について

骨系統疾患の新国際分類が2011年に正式に発表されましたが,これは1971年の最初の国際分類から数えて7回目の改訂となります.2011年版では骨系統疾患が40グループ456疾患に分類されており,前回2006年版の37グループ372疾患から大きく増加しています.この間に新規疾患が明らかにされたことに加え,既存の疾患の原因遺伝子の同定が進み,原因遺伝子別によるグループ化,同一と思われてきた疾患の再分類化などが行われたためです.Sprangerの有名な教科書Bone Dysplasiaも,西村玄先生が中心となって新分類に基づいた大幅改定がなされ,つい最近第3版が出版されました.

新国際分類の発表を受けて,日本整形外科学会,日本産科婦人科学会,日本小児科学会の合同ワーキンググループによって邦訳作業が行われました.これまで広く使用されていた「致死性骨異形成症」,「窒息性胸郭異形成症」などの病名は,両親の受け入れの点から産科医,新生児科医などから問題視されていましたが,このたび正式にそれぞれ「タナトフォリック骨異形成症」,「呼吸障害性胸郭異形成症」と変更されることになりました.

 骨系統疾患の出生前診断

常染色体劣性遺伝疾患にしても,常染色体優性遺伝疾患のde novoでの発症にしても,胎児骨系統疾患はわれわれの前に超音波所見の異常として現れてきます.いわゆる「四肢短縮」です.上記456疾患のなかで出生時にすでに症状が発現しているものが半数程度,すなわちわれわれ産科医が遭遇する胎児骨系統疾患は200種類以上あることになります.これらの疾患はさまざまな予後を示すため,適切な説明と周産期管理を行うためには,胎児期にきちんとした診断を行う必要があります.

もともと骨系統疾患の放射線診断学はほぼ確立しています.いくにんかの碩学の努力により,X線所見に基づいた個別の骨系統疾患の疾患概念が確立し,さらに共通する特徴を抽出することにより大きなファミリーに分けられました.この10年で疾患遺伝子が次々と発見されていますが,このファミリーがそれぞれ共通の原因遺伝子をもつことが明らかになっています.

ですから胎児CT(3次元胎児ヘリカルCT)の診断能力はきわめて高いといえます.胎児CTと単純X線写真の共通点と相違点が明らかにされ,これまでの診断学に基づいて胎児CT所見を解釈することにより,胎児骨系統疾患がかなりの確率で診断できようになりました.しかし一方で,最近,産科領域の一部でやや安易に使われている傾向も目につくようになっています.胎児被曝のリスクは決して高くありませんが,それでも不必要な検査は可能な限りさけるべきです.そのために胎児CTの適応ガイドラインが検討されています.このように胎児CTの適応は慎重にすべきですが,さらにその被曝線量についても極力すくなくすることを考える必要があります.

 骨系統疾患の胎児治療

もっとも研究の進んでいる低フォスファターゼ症hypophosphatasia (HPP)を例として解説いたします.HPPの治療として現在構想され,またすでに治験段階に入っているものとして,々攸琶篏捨屠 き幹細胞移植,0篥岨匱N鼎裡海箸りがあります.

骨へ移行しやすく改良されたリコンビナントALP製剤(ENB-0040)による酵素補充療法の治験が,厚労省大薗班などを中心にすでに治験が日本でもはじまっています.また再生医療実用化の一環として,骨髄移植併用同種間葉系幹細胞移植が島根大学で研究事業として行われています.ES細胞やiPS細胞を用いた治療も将来的には試みられることになるでしょう.遺伝子治療にかんしては,日本医大でなされたHPPモデルマウスを用いた胎児の遺伝子治療の研究で,きわめてすぐれた治療効果を得ました.

日本におおい周産期型HPPでは,出生時にはすでに病態が完成していることがほとんどであり,十分な治療効果を得るためには胎児期にすでに介入する必要があります.胎児治療がつよく求められる所以です.

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カウンタ 4446 (2013年7月7日より)