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骨系統疾患の出生前診断の変更点

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!!!骨系統疾患の出生前診断
                                 (2016年5月16日 室月 淳)

!!概 要

出生前の胎児期に見つかる可能性があるすべての骨系統疾患を「胎児骨系統疾患」といい,骨系統疾患の過半を占める.胎児骨系統疾患は1,300分娩に1例程度であり,流死産となるか出生直後に死亡する生命予後不良の例から,出生直後から呼吸循環の集中管理となる例,周産期は問題ないが乳幼児期から小児期にかけて継続的なフォローが必要となる例など,児の予後はきわめて幅広い.とくに予後不良群や出生後の発達遅滞と関係する疾患については,胎児期にきちんと評価し出生前カウンセリングをおこなうことが重要である.

 
!!適 応

胎児の大腿骨長(FL)が計測される婦健診の超音波診で,FLの−3〜−4SD以下の短縮を認めるときは,胎児発育遅延(FGR),染色体異常,骨系統疾患のいずれかである場合が多い.FLが-3SDより長い例外としてはosteogenesis imperfecta(骨形成不全症)の軽症型やcampomelic dysplasia(屈曲肢異形成症)があり,それぞれ長管骨の骨折や彎曲像に注意する.重症のFGRでは妊娠24週以前からFLの伸びが遅れ,最終的には−4SD前後の短縮を呈するが,発育不全と長管骨短縮以外にはとくに異常を認めない.染色体異常例にはFLの短縮が顕著のものや四肢の奇形などを認めることがあるが,妊娠後期でも−4SDより短くなることはない.

 
!!実施手順

出生後の骨系統疾患のX線診断学はほぼ確立しているといえる.出生前においても胎児CTによって胎児の骨格像を構築し,その知見を応用すれば基本的にはほとんどの例で出生前診断が可能である.しかし胎児CTには被曝の問題が存在するため,その適応はかなり厳密にしなければならないのは当然である.安全な超音波診断によって多くの種類がある骨系統疾患を鑑別していくためには,診断のためのアルゴリズムを考えそれに沿って系統的にみていく方法と,疾患の頻度が高い順にひとつひとつの疾患の特徴をあてはめて診断していく方法の二つが考えられる.実際の胎児診断にはこの両方を併用して行うが,本稿では長管骨の短縮を3類型に分類する系統的な診断アルゴリズムを簡単に解説する.

 
!!実施のポイント

!3類型への分類

胎児の長管骨の計測と,骨化の程度,彎曲・骨折の有無などの評価,そして頭部,胸腹部,羊水量などの所見に着目して骨系統疾患の診断の個別化を図る.最初のステップとしては,FLが-3〜-4SD以下の症例に対して,すべての長管骨の計測(できれば左右とも)と彎曲・骨折の有無,骨化の程度.頭部・胸郭の形と大きさ,肢位や指趾,羊水量,そのほかの合併奇形などについて評価を行う.児の生命予後と関係する所見としては,長管骨や身長の短縮の程度のほかに胸郭や羊水量が上げられる.胸部の上部が下部に比べて不釣合いに小さいいわゆるベル型胸郭を呈する場合や,体幹の形を描出すると腹部に比べて極端に小さい胸部がみてとれる場合などが胸郭低形成のパターンである.

次の段階では,長管骨のどの部分が相対的に短縮しているかによって,以下の3つのグループのいずれかに属するかをみる.すなわち四肢の中節,すなわち,上肢では前腕,下肢では下腿が主に短縮するmesomelic type(中間肢節短縮型),近位肢節(上腕と大腿)の短縮が目立つrhizomelic type(近位肢節短縮型),四肢のすべての部位が短縮しているmicromelic type(全肢節短縮型)である.

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!Mesomelic type(中間肢節短縮型)

前腕および下腿といった中間肢節骨の短縮を示すいわゆるmesomelic typeの疾患としては,mesomelic dysplasia(中間肢異形成症)や異骨症であるacrofacial dysostosis(四肢顔面骨形成不全症)に分類される疾患の一部などが含まれる.Mesomelic dysplasiaでは,遠位肢節と近位肢節は正常か比較的軽い異常を示し,頭蓋,体幹も正常である疾患が多く,系統疾患というより骨格異常が局所に起こる異骨症(dysostosis)に近い疾患もある. 

!Rhizomelic type(近位肢節短縮型)

四肢の中で近位肢節(上腕と大腿)の短縮が目立つものをrhizomeliaと呼ぶ.近位肢節型点状軟骨異形成症は極端なrhizomelic shorteningを示し,骨端核あるいは骨端核周囲の軟部組織の点状軟骨の特徴的所見も超音波で充分に描出可能である.生命予後が良好な骨系統疾患の代表である軟骨無形成症も中程度の四肢短縮を示す.大きな頭蓋と前頭部突出が特徴的であるが,羊水量は正常である.

!Micromelic type(全肢節短縮型)
Micromeliaはその短縮の程度からmild,moderate (shortened and bowed),severeの3型に分けられる.

軽度の骨短縮を認める例(mild micromelia)としては,SRP group(短肋骨異形成症グループ)とdiastrophic dysplasia(捻曲性骨異形成症)の2つが代表的である.SRP groupは胸郭の低形成や多指趾を特徴とする一群の疾患であるが,表現型の幅が大きく非典型例も多いが,胸郭低形成のために予後不良例を多く含む.超音波診では各疾患の鑑別は難しく,胎児CTの適応となることが多い.Diastrophic dysplasiaも症例による表現型の差が大きい疾患であるが,一般的には長管骨の短縮と変形は軽度で,撓骨の彎曲や関節拘縮の他,hitchhiker thumbと呼ばれる特有な親指変形が特徴的である.

長管骨の短縮に加えて彎曲を認める疾患(moderate micromelia)には,先にあげたcampomelic dysplasiaやdyssegmental dysplasia(分節異常骨異形成症)がある.Campomelic dysplasiaの長管骨短縮は比較的軽度でありながら,局所的に著明な彎曲を認める.特に下腿に著明に現れ,脛骨は太く,短く,腓骨は著しく低形成である.Dyssegmental dysplasiaは管状骨のダンベル変形をX線的特徴とする生命予後不良の疾患である.

Severe micromeliaはいずれも-6から-8SD以下の著明な長管骨短縮と胸郭の低形成,羊水過多を示し,予後が一般に不良な骨系統疾患である.骨化の程度と骨折の有無によってさらに3つの疾患に分類される.骨化が正常で骨折がないものはthanatophoric dysplasia(タナトフォリック骨異形成症),骨化不良を示し子宮内で多発性骨折の所見を認める場合はosteogenesis imperfectaの重症型,四肢長管骨,肋骨といった長管骨が著しく短縮する最重症のものとしてachondrogenesis(軟骨無発生症)の3つである.Severe micromeliaの周産期予後は一般に不良であるが,とくに9osteogenesis imperfectaでは症例によって予後に幅があるため,確定診断のほかに所見の重症度を評価することもたいせつとなる.

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