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パネルディスカッション 質問・コメントへの回答編の変更点

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!!!日産婦公開シンポジウム「出生前診断―母体血を用いた出生前遺伝学的検査を考える―」 後半報告(網野 幸子)


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これは,2012年11月13日に東京で行われた,公益社団法人日本産科婦人科学会・公開シンポジウム「出生前診断―母体血を用いた出生前遺伝学的検査を考える」の後半における,質問・コメントへのパネリストの答えを網野(小泉)幸子先生がまとめられた記録です.網野先生がフェイスブックにアップしたものを,貴重な資料としてご本人に許可をいただいてここに再掲するものです.

網野先生の書かれた文章をそのまま引用しておりますが,このHPの文責はわたし室月にあります.当日は写真撮影,音声の録音は一部のマスコミ関係者以外は禁じられておりました.ですから先のわたしの記録もふくめ,すべて自分たちのメモと記憶による再現であるため,一部に不正確な部分があるかもしれません.もし発言当事者のかたで,このような発言はしていない,あるいはこの部分はこのように修正してほしいというご希望がありましたら,わたしのほうまでメールでご連絡いただければ幸いです(アドレスはmurotsukiにyahoo.co.jpをつけたものです). (2012年11月18日 室月 淳)

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!!!パネルディスカッション 質問・コメントへの回答編

                            (2012年11月18日 網野(小泉)幸子)

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!!挨拶と基調講演で以下のようなお話がありました。

・全身を構成する細胞全てにDNAの異常が認められない人間はいない。
・遺伝に関する教育が行われていない。
・小児より必要と考えられる障害に関わる教育が行われていない。
・出生前検査の結果を待つ時期の親の負担は大きく、それに対して周囲からの圧力が少なくない。
・結果が出る時期に胎児は既に大きくなっている。
・「誤った報道」のような誤った情報の流布と安易な選択、それを圧す社会で良いのか。
・出生前診断をする疾患名を明らかにすることで既に思想の偏りになるのではないか。
・出生前診断はダウン症診断ではない。
・ダウン症が出生前診断の目的とされたのは、ダウン症児が元気に活躍して立派に長生きすることが却って見え易いからではないか。

詳細としてコメント欄にリンク先を付けます。

[日産婦公開シンポジウム「出生前診断−母体血を用いた出生前遺伝学的検査を考える」前半報告|http://plaza.umin.ac.jp/~fskel/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=%C6%FC%CB%DC%BB%BA%B2%CA%C9%D8%BF%CD%B2%CA%B3%D8%B2%F1%A1%A6%B8%F8%B3%AB%A5%B7%A5%F3%A5%DD%A5%B8%A5%A6%A5%E0]


!!事前質問

■新しい診断法を推進するのは目的は何か?
検査の導入はいつから誰が検討していたのか?

A.かなり前から、いつか来る問題だと認識されていた。
諸外国で行われていればグローバリゼーションの流れで日本に入って来ると認識し問題意識を持っていた。
今年夏、誤った報道で耳目を集めることになった。


■既存の血清マーカー検査と新型血清診断との違いは何か?

A.既存の血清マーカー検査は、母体血液中の物質を測定して胎児に幾つかの疾患がある確率を出すものである。
新型出生前診断は、母体血中に存在する胎児由来のDNAを調べる検査であって、既存の検査と同じラインで考えるものではない。

■臨床研究は、研究でありながら協力する妊婦から検査費用を取るのはなぜなのか?

A.研究は、遺伝カウンセリングについての臨床研究である。

■検査技術が国内で行われるに至る経緯、検査の実施、結果は誰が責任を負うか誰からも明らかになるよう知らせて欲しい。

A.今後も、こうした機会を設けることにしている。

■検査が適正に実施されるのには、遺伝カウンセリングの普及が重要なはずだが関わる人材を供給するための、職種や人数の試算を知りたい。

A.適正に行うための施設や人材について、適正に検討する。
職種は、遺伝専門医、遺伝カウンセラー。
遺伝専門医は、現在、1人あたり200人相当が存在する。地域の偏りはあるかも知れない。
遺伝カウンセラーは、139名、年間20名増加の必要がある。

いずれも、厳しい課題と人間性を問われる過程によって育成される。

■38才の妻を持つ男性から→高齢出産になるのでダウン症などの可能性を心配している。不幸にもダウン症を患っている方々に対して厚労省は手厚い補助を行うなどの配慮をちゃんとして欲しい。
新型出生診断のような検査で高齢妊婦が安心して出産できる体制を整えることが少子化対策の重要なものの1つだ。

A.文科省、厚労省の改善は必要である。
不幸にもダウン症を患っているとの認識について、強い遺憾の念を持つ。
新型出生前検査を推進して安心して出産できる体制を整えるとの表現であるが、安心とは何をもって安心といえるのか。99.9%大丈夫なら安心と言えるのか。

■ダウン症に限らず、障害をどうとらえるかと言う問題や障害をもった方々がどのように生きているのかと言う現状は、出生前検査・診断を受けるか受けないか決断することや、カウンセリングの内容に影響を与えると思うし、出生前診断を社会的に許すどうかの問題に影響する。これらについて聞きたい。

A.遺伝教育も、障害に関わる教育もなされていない過去と現状がある。
出生前診断を社会的に許すか否かの問題に、誤った報道がなされ、強制力が働く社会で良いのか。
当事者を「考えなさい、悩みなさい、受け入れなさい」と圧す社会の状態で良いのか深慮が必要。
生命倫理・法的観点から、
1966年に優生保護法の改定が行われた。
裁判所では胎児の問題を理由にしての中絶を許しているのが現状。

■ゲノム研究に関わる倫理的問題を我が国の官僚はゲノム研究の本質に合ったガイドラインを作ることを行っていない。
この役割を日本産科婦人科学会や日本人類遺伝学会におしつけることには無理がある。医師は科学的事実を患者、妊婦に正しく伝えることが義務だ。その応用の善悪を判断する立場にないことを明言すべきだ。

官僚が何もやってこなかったわけではないのだが。
この分野の進捗速度は非常に速く研究者でも論文を読み切れない程である。
この場合のゲノム研究というのは、広い意味で言われていると考える。
最初から出ているように遺伝の教育は医学部でさえなされていない。
研究者が何年も掛かって研究していることを限られた時間で理解のない相手が分かるように話すのは不可能に近い。
NIPTの臨床研究を応用して遺伝カウンセリングを研究するということである。
医師が科学的事実を正しく伝えるべきであることは事実である。
こうした場を設けて社会と一緒に考えて決めて行く問題である。
善悪を判断する立場にはない。

■出産は病気でなく個人の希望だが出産しやすい社会的環境整備が進むことを願う。
出産前に遺伝子レベルの情報が得られるのは誰にとってもメリットである。

A.「誰にとってもメリットである」か非常に疑問であり深慮すべきではないか。

■現在PGSは禁じられているが。
着床前診断と出生前診断に対する姿勢に差が出てくるのではないか?

A.着床前診断と出生前診断と同じラインで考えるものではない。
体の負担より心の負担が軽いとは言えない。

■臨床研究で症例が集まったらどのような方向性を考えているのか?

A.その各時点で異なる。
今は、12月中、時期を目途に考えて行く。
臨床研究が始まるに当たっていつが良いのかを考えて決めて行く。

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!!フロアからの質問

1)ダウン症の方の親御さん
優生保護法が母体保護法に換わった経緯と同じように、障害者基本法の変更が行われた。障害の原因となる傷病の予防に関する基本的施策の条項に抵触するのではないか?

A.出生前診断は中絶を前提としていない。

2)倫理研究員
ドイツでは妊娠相談が無料で受けられるようになっている。新型出生前診断は高リスクを見つけ出して障害者を積極的に排除することになるのではないか。
新型出生前診断のメリットは、結果陰性であれば、羊水穿刺が回避できることが最大の利点ではないか。
人間関係性、社会性の勉強をしているのか。
なんとなく受けちゃった人が多く出るのではないか。
遺伝カウンセラーの利権の囲い込みになるのではないか。

A.新型出生前診断のメリットはその通りである。
遺伝についての教育がなされて来なかった現実がある。
採血で出来る検査であるので、正規でない場所で成される懸念がある。
Low riskにおいてコストパフォーマンスを含めて適当でない。

3)障がいを持った当事者
初めから出ているが、子供のころから必要な障がいについての教育がなされていないことへの議論がないのではないか。法律が整っていないのではないか。文科省、厚労省関係者が居るのであればコメントが欲しい。

A.文科省、厚労省関係者は居ないと思うがこれはきちんと伝える。

4)生殖医療関係者
外国に日本人の血液を送って解析して良いのか。
既に新型出生前診断がなされている諸外国では95%が中絶に至っているのは事実か。
多様性について。

A.血液のデータは守られるようになっている。
本来はアカデミックでするべきであるが、NIHが補助を出さなくなり自然、民間会社がせざるを得なくなっている。
諸外国では公費で出来るため、中絶に至る程度が高いのが事実である。
日本で、若年妊婦からの21番染色体異常の児が生まれる程度が高いのが現況である。
カットオフ以下でも同様の児が生まれる。
イギリス始め(何故かフランスは極端に低いのだが)既に行われている欧州諸国でも想定人数の半数の児が生まれている。
多様性という言葉は、健常者とそうでないものが分けられている今、健常者側から言う言葉ではない。
まったく同じ環境になって使われる言葉であると考える。

5)知的障害・発達障害者の施設関係者
カウンセリングが重要視されている。
結果を親が受け止めなければならない。
障がいを持った子供を育てる親のケアが弱まってしまうのではないか。
研究そのものがカウンセリングに関わるものではないか。

A.その通りである。
判断するものが偏ってしまうのは困る。
カウンセリングは継続されていく必要のあるもの。
皆の問題である。
まったくやらないのか、使っていくならどうするのか考えて行くものだ。

6)障がい者本人
障がい者は不幸だ。と言われる。
3才まで生きられないと言われたがその30倍生きた。あれ?(笑)
10倍生きた。
自分は幸せだ。
その上で
カウンセリングをする人が障がい者についてどう思っているかが、話す相手の患者、妊婦の考え方に反映するのではないか?

A.子供たちの生きて行く勢いは素晴らしいものである。
出生前診断は、親の幸せと児の幸せが同方向を向いていない。
精神的においつめられていく母親が判断を迫られる状況におかれる。

註 着床前検査に対しての見解として
成人に達する以前に日常生活を強く損なう症状が発現したり、生存が危ぶまれる疾患を「重篤な疾患」とする。という文言がある。

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