医学部入試における合格難易度:医療は冬の時代といわれるが、依然として受験生は医学部を志向している
江原朗
市立小樽病院

 昭和36年の国民皆保険の施行および昭和40年代の無医大県解消計画によって医師の養成が強化された結果、受験生の医学部受験ブームが生じ、医学部は最難関学部のひとつに数えられるようになった。20ないし30年前には、高校の進路指導の教師は成績の良い生徒に、東京大学かあるいは地方国立大学の医学部を受験するよう指導した。時は流れ、医療費の抑制が世の中で議論され、病院の収支も厳しさを増している。平成12年では、全病院の64.6%が、自治体病院では実に87.8%が赤字である[1]。また、平成10年には「医師の需給に関する検討会」(厚生省)によって、新規参入医師の10%削減が打ち出された。まさに、医療は冬の時代を迎えつつあるといえよう。
そこで、次世代の医療を担う大学受験生にとって医学部は魅力ある学部であるのかどうか、予備校および受験雑誌を調査検討した。もし、医療分野の魅力が失われているなら、優秀な学生は他の学部を受験するため、大学入試センター試験における医学部の合格目標得点は低いはずである。平成13年のセンター試験における国立大学医学部の前期日程における合格可能性50%の得点率は平均で85.1%(80.8−90.9%)であった[2]。理科3類以外の東京大学前期日程における合格可能性50%の得点率は文科1類87.3%、文科2類86.4%、文科3類85.5%、理科1類86.4%、理科2類85.5%である[2]。センター試験と二次試験との得点配分や受験日程の違いから、各大学や学部の比較を単純に行うことはできないが、医学部はこれまでどおり、人気学部であることに変わりがないと判明した。代々木ゼミナール札幌校教育進学指導室篠田孝司さんによると、医学部の難易度はこの10年上がりこそすれ、下がることはないとのことであった。また、東京の開成高校などの進学校においても東京大学を目指すよりも医学部を受験するよう進路指導が行われているとのことである。この数年、失業率は年々増加しており、本年5%を超えた[3]。倒産やリストラの危険のある民間企業に就職するよりも、手に職がつく医師の職業は受験生にとって魅力あるようだ。
次世代の人的資源を考える場合、医療の分野は優秀な人材が多く、意外にも明るいのではないか。もちろん、偏差値の高低だけで医療人としての資質を測ることはできない。しかし、優秀な問題解決能力を持つ者がこの分野に集うことは喜ばしいことである。国民医療費の増加に伴い、医療制度の再構築が求められている。解決を要する社会問題は山積しているのである。こうした問題を考えるとき、次世代の優秀な人的資源は魅力あるものに見える。

参考文献
1) 全国公私病院連盟。病院経営実態調査報告。平成12年6月。
2) Yahoo!学習情報。http://edu.yahoo.co.jp/gambare/daigaku/ranking/rnk1j80.htm
3) 総務庁統計局。労働力調査報告。