筑波大学医学医療系臨床医学域  災害・地域精神医学

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教授ご挨拶

教授 高橋祥友

当部門は2012年4月1日に新設されました。その経緯をまず説明しましょう。

2011年3月11日に東日本大震災が発生し、被害は岩手県から千葉県までの太平洋岸の広範囲に及び、死者・行方不明者数は計2万人弱にのぼりました。さらに、東京電力福島第一原子力発電所では放射性物質の放出を伴う重大事故が発生しました。

この大震災に対応して、2011年5月21日に東日本大震災復興支援に対する日本精神神経学会声明が発表されました。その第2項で「大学に『災害精神支援学講座』を新設し、人材を集めて、地域精神科医療の確保とこころのケアの長期的支援を実現し、その支援方法の妥当性の検証を行い、わが国の災害精神医学・医療を確保し、将来の大規模災害にも対応できる人材育成を推進するべきであると考えます」と提言されました。これに応えて当部門が新設されることになりました。

さて、当部門にとって、被災者のメンタルヘルス支援は当然、最優先の課題です。そして、災害時の弱者の支援という立場からも活動を進めていきたいと考えています。すなわち、子ども、高齢者、精神障害を持った人々に対する支援です。

なお、緊急事態を経験して、負の側面ばかりが強調される傾向がありますが、人間の持つ健康で力強い側面に注目することも重要です。最近では、リジリエンス(resilience)という概念が注目されています。これは、近い関係にあった人が死亡したり、自分も死の危険を経験したりした後も、心身両面の機能を比較的安定させて、健康なレベルを保つことができる能力を指します。このような点から回復の鍵を探っていくことも計画しています。 また、従来、わが国ではあまり関心を払われなかった領域ですが、救援者のメンタルヘルスについても取り上げていく予定です。すなわち、警察官、消防官、自衛官、医療従事者といった、災害時に第一線に立つ人々に対する心理的支援についてです。ともすれば、専門家なのだから緊急事態に対応できて当然だとのとらえられ方が一般的でした。救援者が独自に抱える問題への対策を検討することも当部門の大きな柱のひとつです。

そして、救援者の中にはボランティアの人々も含まれます。善意から被災地に駆けつけたものの、惨状を目にして、すっかり燃え尽きてしまい、心理的問題を抱えてしまう人も少なくありません。専門職の救援者以上に、ボランティアの人々に対するメンタルヘルス支援は従来わが国では等閑視されてきた分野であるといっても過言ではないでしょう。

私たちの課題はあまりにもたくさんあります。まず現場に足を運び、今、私たちに何が求められているのかという視点から、今後の方針を固めていき、筑波大学モデル、あるいは茨城モデルといったものを築いていきたいと考えています。大学の内外で災害精神医学関連の講演や研修会の依頼にも応ずる態勢を整えつつあります。

私たちで何かお役に立てることがありましたら、ぜひご一報ください。関係各位のご支援・ご鞭撻をお願いする次第です。

2012年11月 筑波大学 医学医療系 災害精神支援学 教授 高橋祥友

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