平成23年度談話会 第1回目 (通算第401回目)

開 催 日 :2011年5月28日(土)14:00〜17:00
司会:国立がん研究センター中央病院 馬屋原 博
会場:国立がん研究センター中央病院 管理棟1階 第2会議室

テーマ:位置決め精度向上のための工夫

【一般演題】
1.「OBI/CBCTを使用した当院における体幹部定位放射線治療について」
国立がん研究センター中央病院 放射線治療部 宮浦 和徳 氏
 体幹部定位放射線治療(SBRT)では呼吸の影響でターゲットが常時移動する可能性がある一方で、1回大線量かつ分割回数がないことから有害事象低減のために極力小さな照射野で治療することが要求される。SBRTではあらかじめ患者ごとの呼吸性移動のパターンを十分に把握したうえで治療計画・位置照合・照射を行うことが必須である。当院には定位放射線治療専用機は設置されておらず、OBIを装備した汎用リニアックを用いて定位放射線治療を行っている。SBRTを行う際にはマーカーを使用せず、OBI/CBCTを併用して周囲骨位置や腫瘍/周囲臓器の軟部画像を参照し、可能な限り正確な位置決めを行っている。今回、当院におけるSBRT位置決めの手法の概要および、OBI/CBCTを用いた画像誘導定位放射線治療に関して紹介する。また、4DCTを活用した治療計画・呼吸同期照射などもRPM(Varian medical systems)を利用することで可能となっている。RPMを用いた呼吸管理法に関しても紹介する。

2.「肺末梢病変に対する経気管支的金マーカー留置について」
オリンパスメディカルシステムズ株式会社 内視鏡営業企画部 処置具販売促進グループ 廣岡 啓 氏
 肺癌における定位放射線治療の効果は、5年生存率や後遺症発生率などにおいて、その有用性が多数報告されております。一方で、呼吸等による病変部移動により、正確な放射線照射が難しいとされてもおりました。今回ご紹介させていただきますディスポーザブルゴールドマーカー(以下、金マーカー)は、課題であった位置決め精度向上を目的した医療機器であり、平成22年度 診療報酬改定により新設された「K509-3 気管支内視鏡的放射線治療用マーカー留置術」の対象機器となります。放射線照射前に病変部近傍に留置、CTスキャン等を用いて病変部と金マーカーの動きを記録する事で、病変部から外れた放射線照射を低減する事が期待できます。留置に際しては気管支鏡を用いて、先端に不透過チップのついたガイドシースを通し直径1.5mmの金マーカーを肺内に留置いたします。当日は金マーカーの仕様、留置手技、留置成績などを中心にご紹介をいたします。

【講演】
3.「植え込み型病変識別マーカVISICOILのご紹介」
セティ・メディカルラボ株式会社 学術課 鈴木 佐登志 氏
 VISICOILは、2011年2月28日に薬事が承認(No,22300BZX00123000)された。対象となるのは、前立腺・肺・肝・膵臓・乳房の5臓器。VISICOILの特長、@種類が豊富:径が4種類、長さが4種類の全部で14種類。A高い安定性:コイル状でフレキシブルなので移動がない。B高い視認性:容積が大きく、アーチファクトもなく視認性が高い。現在、薬事の承認を受け保険適用の申請を行っている。新規医療用具C1区分で申請中、材料費と手技料が別々に認められる可能性が高い。製品の販売は7月から開始、保険が認められた場合の適用開始は10月からになる。販売開始に向けて、各施設でどのサイズを使用するかを確認するためのファントム確認用模擬品を提供している。これは各施設で使用している機器によって、照射中に確認するための方法がKV・MVを使用するなど構成によって異なるため、どのサイズが使用可能なのかを確認するためのもの。希望施設は、弊社ホームページから申し込み可能。

4.「金属マーカによる前立腺IGRT」
千葉県がんセンター 放射線治療部 小川 博明 先生
 高精度放射線治療においてIGRTは必須の照射技術である。IGRTが保険収載され、多くの施設で実施されることが予想される。そこで、当院におけるIGRTについて骨照合と金属マーカ照合の長所短所・注意点を中心に報告する。当院では、金属マーカを用いた前立腺IMRTを実施している。治療開始までの流れは、金属マーカ留置後、1週間以上経過後から計画CTを撮影する。治療当日は毎日位置照合を実施し、位置誤差が1mm以内であることを確認後照射開始となる。金属マーカ照合の長所は短時間低被ばくにて標的移動を把握できることである。このため治療日ごとの前立腺の位置誤差を補正して治療が行うことができる。よって、骨照合に比べて金属マーカ照合ではマージン(IM、SM)を縮小できる。ただし、固定方法や照合方法が施設ごとで異なるため、マージンの設定は施設ごとで設定することが重要である。