平成22年度談話会 第4回目 (通算第400回目)

開 催 日 :2011年3月5日(土)14:00~17:00
司会:聖路加国際病院放射線腫瘍科 中村直樹
会場:聖路加国際病院本館2階トイスラー記念ホール
《演題》
  1. 「Direct Fluence Modification」癌研有明病院放射線治療部 伊藤照生氏
  2.  IMRTの治療計画を立てるときには、逆計算を用いてフォトンビームのフルエンスを計算させます。そしてそのフルエンスに合うようにMLCの動作を当てはめます。DMLCもSMLCも同じです。そこで、直接フルエンスを書き換えることでMLCをコントロールして様々な絵を描き、IMRT計画におけるMLC動作の特徴を理解し、治療計画の特性やIMRT計画の限界などについて理解を深めることを目標とします。
     治療計画装置の検証やリニアックMLCの検証はよく聞きます。しかし、組み合わせてオールオーバーでの検証はあまり行われていません。今回、トータルでの検証により、患者にデリバリーされる線量は医師の予定と比べてどのように変わるのかを理解することで、IMRT治療計画のステップアップを目指しました。特に医師の方に、リニアックMLCの特徴、治療計画装置の特徴および組み合わせた場合の特徴を理解していただき今後の診療に役立てていただきたいと思います。患者体内の腫瘍や危険臓器のように複雑に入り組んでいる場合に、当てられる・当てられないの境目はどこか、判断の材料になります。決定したMLCやビームの追従性も少しは理解していただけるのではと思います。
     本来QAや教育が目的ではありますが、楽しく仕事をするために本手法がお役に立てれば幸いです。
     
  3. 同室CTを導入した画像誘導小線源治療の初期経験」筑波大学附属病院放射線部 西尾昌子様
  4.  近年,小線源治療の分野においても、標的体積及び正常組織への定量的な線量評価を可能とする画像誘導小線源治療(Image Guided Brachytherapy: IGBT)が推奨されている。
     当施設では2010年7月の小線源治療システムの更新時に、同室内にCT装置を配置した治療室を新設した。それにより、以前行っていた正面・側面2方向撮影による2次元画像を用いた線量評価からCTによる3次元画像を用いた線量評価方法へ段階的に移行した。同室CTとなったことで、患者の室外移動が不要となった。また、CT画像も用いたことでアプリケーターの再構成が容易になったため、治療時間の短縮が可能となった。さらに、腫瘍や周辺正常組織線量の客観的および定量的評価が可能となるため、線量分布の最適化も可能となった。これまでの当施設における小線源治療システムの初期使用経験を報告する。
     
  5. 「髄膜腫と診断され、放射線治療を施行するか議論になったSLE合併妊娠の一例」聖路加国際病院 放射線腫瘍科 赤羽佳子 先生
  6. 髄膜腫と診断され、放射線治療を施行するか議論になったSLE合併妊娠の1例を経験したので報告する。症例は40歳、未経妊。子宮筋腫核出術(35歳)の既往あり。SLE(13歳~)に対してプレドニゾロン5 mg内服中。凍結胚移植で妊娠し、妊娠7週の時点で左眼瞼下垂、瞳孔散大が出現。徐々に症状が増悪し、妊娠16週に頭部MRIで海綿静脈洞の髄膜腫が疑われたため、自治医科大学脳神経外科から放射線科に紹介。カンファレンスの結果、出産まで未治療の場合には動眼神経麻痺の完成が予想されること、全身麻酔のリスクを考え、出産前の開頭手術は第一選択でないことから、放射線治療の方針となった。定位放射線治療および通常分割照射における胎児の推定被曝線量をファントムで計測した結果、通常分割照射の方が低いことから、妊娠21週~27週まで通常分割照射(1.8 Gy/回 総線量 45 Gy/25 回)を施行。急性期有害事象は認めず、治療終了後1カ月より努力性開眼が可能となった。妊娠37週で帝王切開術を施行し、正常児を分娩。治療終了2カ月で左眼瞼下垂はほぼ消失している。
《講演》
  「生物学的モデルからのアプローチ」:国立がん研究センター中央病院 放射線治療科 岡本裕之 氏

ご挨拶

この一年あまり、伝統ある放射線治療談話会を聖路加国際病院で4回開催させていただきました。
 一般病院で設備、人材が乏しい中での開催ですので参加された皆様には大変、ご迷惑をお掛けしたと思います。この場を借りてお詫びいたします。来年度からは国立がん研究センター中央病院の伊丹純先生と馬屋原博先生にお願いし、無事に引き継ぐことができました。
 これも慣れない我々をご指導いただいた実行委員長の国枝先生はじめ、実行委員、そしてお忙しい中、貴重な演題を出していただいた会員の皆様のお陰と、深く感謝しております。
 今後は医師、技師、物理士の連携を益々、深める会に発展していくことを願っていますし、皆で盛り上げたいと思います。短い期間でしたが、最後に私が聞きたかったEUDのご講演までしていただき、わがままの聞く会長職も悪くないなと感じています。
 最後に何もできない私に変わり、すべてのことをやってくれた中村直樹、赤羽佳子の両医師そして放射線腫瘍科スタッフにも感謝いたします。      
2011年3月7日
聖路加国際病院 放射線腫瘍科 関口建次