癒す力をさぐる 投稿者:闖薗| 投稿日:2006/04/24(Mon) 11:36 No.69
東京理科大の遠藤次郎先生の御著書が出版されました。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4540030914/qid=1145845386/sr=8-2/ref=sr_8_xs_ap_i2_xgl14/250-0164571-9098661
教授をご存知の方も多いと思いますが,鍼灸師でもあり,経絡経穴に関する研究にも異彩をはなっています。
本書では,先生の従来の研究をふまえた,先生にしか書けない,幅広い東と西の医学論や中国伝統医学を日本漢方がいかに受容していったか,などが展開されています。
ユネスコ無形文化遺産 投稿者:乘黄 投稿日:2006/04/02(Sun) 11:37 No.55
中国伝統医薬世界文化遺産申告委員会の専門家チーム会議では、中国医学の「理論」「養生」「診断法」「治療法」「処方」「漢方薬」「針灸」「少数民族の伝統医学」(西蔵〈チベット〉や内蒙古の伝統医学などを含む)の8項目を一括して、「中国伝統医学」として無形文化遺産に登録申請することが確定した。
日本にも伝統をうたった学会があるにはあるが・・・。
歴史の違いなんでしょうか?それとも・・・・。
Re: ユネスコ無形文化・ス... 唐辺睦 - 2006/04/04(Tue) 08:19 No.57
つまり、中国は俺が本家だと言いたいんじゃないでしょうか。それを認めないのは、歴史認識に欠ける、と。
檪窓類鈔 書名の由来 投稿者:闖薗| 投稿日:2006/04/01(Sat) 16:16 No.53
『櫟遯サ類鈔』序
……余自才(この三字は蔵書印と重なり,推定)小,癖嗜披閲,醫經方之外,上自經史子集,下至稗官野乘,小説閼梛L,隨得而讀之,隨讀而抄之,而其所抄,悉關渉於我方技家之事者也,……屹屹不輟,殆三十年,排纂分類,爲若干卷,舊所居遯サ前,有櫟樹数株,毎深秋之候至,風吹枯葉,邁檎ー呉ィ聲,稍有林間之興致,燈下展閲之際,最爲可愛,因名曰櫟遯サ類鈔。
Re: 檪窓類鈔 書名の・ス... 神麹斎 - 2006/04/01(Sat) 16:46 No.54
無論、そうです。
でも元簡が「樗櫟」という言葉の意味を知らなかったはずがない。知っているけれども、それを表に出さずに、「最爲可愛,因名曰櫟遯サ類鈔」と言うところが、元簡の賢いところでしょう。
素問の現代語訳 投稿者:別府 投稿日:2006/03/30(Thu) 17:13 No.48
会員ではないのに書き込み失礼致します。
東京医科歯科大学の別府です。先日斯文会の素問攷注を読む会中に、素問の現代語訳の最善本をご紹介頂いて、内経学会編(または出版)と伺ったと思うのですが、ホームページには記載がないようです。購入したいのですがどうすればよろしいでしょうか。どなたかご教示下されば幸いです。
Re: 素問の現代語訳 神麹斎 - 2006/03/30(Thu) 18:09 No.49
> 素問の現代語訳の最善本をご紹介頂いて、内経学会編(または出版)と伺った
と言うのは聞き間違いでしょう。
よりましなものとしてなら、東洋学術出版社のものを紹介されたんじゃないですか。
『現代語訳◎黄帝内経素問』全3巻。
確かに、当会の何人かが翻訳に協力はしたはずですが、むかしのことです。
丸山昌郎先生の校勘和訓とか、島田隆司先生の講座とかも考えられなくはないですが、前者は大昔の発行で私たちも持ってませんし、後者は印刷物にはなってません。(素問ネットとしてWEB上で順次公開中です。http://www001.upp.so-net.ne.jp/somon/)
Re: 素問の現代語訳 別府 - 2006/03/30(Thu) 19:29 No.50
そうですか。ご丁寧にありがとうございます。
東洋学術出版のものの話ではなかったと記憶しておりますが…。
また斯文会の時に伺ってみます。どうもありがとうございました。
Re: 素問の現代語訳 通行人 - 2006/03/31(Fri) 06:15 No.51
そもそも「現代語訳の最善本」なんて、有り得るものですか。
『素問』や『霊枢』の最善本ならわかるし、『霊枢』の最善本は確かに内経学会出版のものだろうけど。
檪窓類鈔 投稿者:闖薗| 投稿日:2006/03/28(Tue) 13:00 No.47
丹波元簡が中国の非医学書から医学関連記事を抜き出したものに『檪窓類鈔』(オリエント出版社「臨床漢方病証学叢書」 第17冊)があります。
その中に、「鬢ウと錫」に関するものが二題取られています。その一つが、この『金臺紀聞』です。
そのほか、『素問識』に縦横に引用されている記事を多くみることができます。たとえば、全元起が『南史』に出ていること、銅人形のことが宋代の筆記にみえることなど。
元簡の学識の淵源の一端を知ることができる書です。
戴元禮1 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/27(Mon) 03:53 No.39
かつて『医古文基礎』を訳すにあたって,引用文をすべて原典と照合した。かなりの異同が見つかった。主編者のひとり銭超塵教授に相談したところ,誤りは正してよいとの返事をいただいた。煩雑になるので,訳書ではいちいち指摘していない。
原典との照合はこころみたけれども,すべて引用文が見つかった訳ではない。たとえば,「版本と校勘」章で,医書の校勘の重要性を説くくだりがある。そこでは,明・陸深の『儼山外集』が引用されている。調べたが,『儼山外集』では見つけることができなかった。見たのは一つの版本のみなのだし,見逃している可能性もある。だから,この章の筆者の勘違いだとはいえない。
いま,陸深の『金臺紀聞』から該当する箇所を引用する。(『叢書集成初編』所収の排印本による。なお,この排印本の句点は「.」のみであるが,読みやすさを考えて,句読点の種類を増やした。毎度のことながら,ご意見をいただければさいわいです。)
金華戴元禮,國初名醫。嘗被召至南京,見一醫家迎求溢戸,酬應不間。元禮意必深於術者,注目焉。按方發劑,皆無他異。退而恠之。日往觀焉。偶一人求藥者既去,追而告之曰:「臨煎時下錫一塊」。麾之去。元禮始大異之。念無以錫入煎劑法。特叩之。答曰:「是古方爾」。元禮求得其書,乃鬢ウ字耳。元禮急爲正之。嗚呼,不辨鬢ウ錫而醫者!世胡可以弗謹哉!
戴元禮2 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/27(Mon) 09:21 No.40
掲載文の大意は,『医古文の基礎』247頁にありますので,そちらを参照下さい。勉強のため,訓読をこころみます。ご指正ください。
〔訓読〕金華の戴元禮は,國初の名醫なり。嘗て召されて南京に至る。一醫家の迎求 戸に溢れ,酬應 間あらざるを見る。元禮 必ずや術に深き者と意(おも)い,注目す。方を按じて劑を發するに,皆な他異無し。退きて之れを恠(あや)しむ。日々往きてこれを觀る。偶(たま)たま一人の藥を求むる者 既に去らんとするに,【医家】追いて之れに告げて曰く:「煎ずるに臨む時,錫(すず)一塊を下せ」と。之れに麾(さしまね)きて去らしむ。元禮 始めて大いに之れを異とす。念(おも)うに錫を以て煎劑に入るるの法無し。特に之れを叩く。答えて曰く:「是れ古方のみ」と。元禮 求めて其の書を得るに,乃ち「鬢ウ」字のみ。元禮 急ぎて爲に之れを正す。ああ,鬢ウと錫とを辨ぜずして醫する者か!世 胡(なん)ぞ以て謹まざるべけんや!
〔注〕戴元禮 戴原禮とも表記される。1324-1405。名は思恭。明の太祖洪武帝に寵愛される。太医院院使。『証治要訣』などの著書あり。明の当初は南京に都を置いたが,永楽帝がクーデターを起こし,政権を奪い,北京に遷都した。 /迎求 医者を迎えに来たり,治療を求めに来たりする患者? /酬應 応酬と同じ。応対。 /間 ひま・いとま。 /恠 「怪」の異体字。 /麾 「サシマネク」と訓ずるがここでの意味は「指示する」。「フルウ」と訓じ,「手を振る」とも解釈できなくはない。 /異之 「異」形容詞の意動用法。「奇異だと思う」。 /叩 「タタク」と訓ずるが,ここでの意味は「質問する・問いただす」。 /爲 この医家のために。 /鬢ウ みずあめ。
Re: 戴元禮2 闖薗| - 2006/03/27(Mon) 09:32 No.42
「指示する」→「指図する」
戴元禮3 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/27(Mon) 09:26 No.41
やっと問題にしたい点にたどりつきました。
「版本と校勘」章の筆者は,いやしくもひとの命にかかわる仕事をするのだから,古医書を読むにあたっては,よりよい版本をテキストにつかい,校勘もおろそかにしてはならない例としてこのくだりを出しています。
つまり,「元禮求得其書」の「其書」を「その処方が書いてある版本」ととらえています。しかし,これに続く「嗚呼,不辨鬢ウ錫而醫者!」を読むと,「其書」とは「この医家が所持していた医書」と理解したくなります。
では,この章の筆者は「この医家の所持していた医書」とは考えなかったのでしょうか。そうとは,わたしには思えません。「元禮急爲正之。嗚呼,不辨鬢ウ錫而醫者!世胡可以弗謹哉!」(アメとスズの字の区別もできないやつが医者をやっているとは!という戴元礼の嘆き・軽蔑)の部分の現代語訳を載せていないのは,上の主張には合わなくなるので,意図して省いたのではないでしょうか。この章には,他の部分にも断章取義しているところがあるので,こう考えます。
いかがでしょうか。
Re: 戴元禮3 老婆心 - 2006/03/27(Mon) 09:36 No.43
【断章取義】ダンショウシュギ・ショウヲタチギヲトル
《故事》詩や文章の一部分だけを選び出し、原文と関係なく利用すること。〔中庸・孔穎達疏〕
Re: 戴元禮3 唐辺睦 - 2006/03/27(Mon) 14:00 No.44
「其書」はやっぱり「その処方が書いてある版本」では無いかと思います。その理由は「求得」だからです。辞書を引いてもそこまで詳しく書いてあるわけではないので、本当はあまり自信は無いんですが、その医者に「その古方とやらが載っている本をちょっと見せてください」と言って見せてもらったんなら、「求得」とは書かないんじゃないかと思うんです。どこかで捜してきて調べてみたら、「鬢ウ」だった。そこで、「ははあ、あの医者の本はこの字が錫になっているんだな、あの医者は版本を選ぶことも、疑わしい文字を正すことも知らないんだな、錫に似た字に鬢ウというのが有るのを知りもしないんだろうな」では無かろうか。
Re: 戴元禮3 神麹斎 - 2006/03/27(Mon) 15:31 No.45
「元禮急爲正之」だから、やっぱりその医者の使っている本を見て、その誤りを訂正してやったんじゃないでしょうか。もっとも、「あわてて訂正してやりに行った」でも良いかも知れませんが。
Re: 戴元禮3 神麹斎 - 2006/03/28(Tue) 12:14 No.46
この話は、余程、中国の先生方に人気が有るらしく、段逸山主編の高等中医院校教学参考叢書『医古文』にも取り上げられています。そこでは「元禮求得其書,方知“錫”乃“鬢ウ”字之誤。」とあります。つまり、その一医家の持っていた書物は字が間違っていた、文脈からそれが分かったというニュアンスにもとれる。ただし、原文も句読点を施す練習用にも用いられていて、「元禮求得其書乃鬢ウ字耳」ですから、一医家の持っていた書物の文字が「鬢ウ」であったというころでしょう。闖薗|氏の言うように、文字知識の不足を嘆く話を、版本の校正の不備にすり替えているようですね。なお、『医古文』では、出典を『金臺紀聞』としています。
『灸法秘伝』序文1 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/16(Thu) 23:48 No.16
日本内経医学会日曜講座初級の講師,荒川緑と申します。
平成17年度は,医古文語法の基礎を解説するとともに,『後漢書』華佗伝を読み終わりました。4月12日に開講する平成18年度では,医古文語法の解説と並行して『灸法秘伝』の本文を読みすすめていきたいと考えています。テキストは光緒癸未冬骼ク劉氏楽善堂蔵板(『続修四庫全書』所収の影印本)です。
時間の関係で,講座では本文のみしか詳しく触れられませんので,以下序文をこの場を借りて掲載させていただきます。訓点・解釈の誤りなどがございましたら,ご指摘いただければ幸甚です。
雷君少逸,衢之名醫也。余守是郡。因病邀診。遂與之善。其人秉至性,多讀書。以醫世其家。著作甚富。余嘗序其『時病論』一書,行之。
〔訓読〕雷君少逸は,衢の名醫なり。余 是の郡を守る。病に因りて診を邀(もと)む。遂に之れと善くす。其人 至性を秉(と)り,多く書を讀む。醫を以て其の家を世(よよ)にす。著作 甚だ富む。余 嘗て其の『時病論』一書に序し,行わる。
〔訳〕雷君,少逸は,衢州の名医である。私はここの郡守(長官)であるが,病気になり診療をお願いした。それが縁で親しくつきあうようになった。その人となりは極めて善良であり,読書家である。医学を家業として受け継いだ。著作も非常に多い。以前,かれの『時病論』に序文をよせたことがある。この書は流布している。
〔注〕雷君少逸 清末の医家(1833~1888)。少逸は字。名は豊。福建・浦城県の生まれ。父にしたがい,浙江・衢州に居をうつす。父親の雷逸仙は,医学を程芝田に学ぶ。『時病論』八巻。光緒八年(1882)刊行。
『灸法秘伝』序文2 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/16(Thu) 23:54 No.17
一日,復出其戚金君冶田所藏『灸法秘傳』,見示,云「得自蜀僧,施治頗驗」。原書隰ュ陋不文,經雷君取所列諸證分門而爲之隱ェ,言簡意雉・C深得經旨,誠濟世之良術也。
〔訓読〕一日,復た其の戚 金君冶田藏する所の『灸法秘傳』を出だし,見示して,「蜀の僧より得。施治するに頗る驗あり」と云う。原書 隰ュ陋にして文をなさず。雷君 列する所の諸證を取り,門に分かち,而して之れが隱ェを爲すを經,言簡にして意雉・C深く經旨を得たり。誠に濟世の良術なり。
〔訳〕ある日,また雷少逸はその親戚に当たる金冶田が所蔵する『灸法秘伝』を持ってきて見せてくれ,「蜀の僧侶から得た物で,治療に使うと非常に効果がある」といった。原書は,表現が拙劣で文の体をなしていない。そこで雷君が挙げられている諸証を分類し解説を加えた。言葉は簡潔で要領を得ており,深く内容を理解することができる。まことに世の中に役立つ良術である。
『灸法秘伝』序文3 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/17(Fri) 09:18 No.18
檢閲方書,其論穴治病,則從太乙神鍼,神明而出。實近今所罕見之本,余恐秘本無傳,因付手民,以公諸世。並附刊太乙神鍼諸方於後。俾閲是書者參互考證,而信從焉。
〔訓読〕方書を檢閲するに,其の論穴・治病は,則ち太乙神鍼に從い,神明すなわち出づ。實に近今 罕見する所の本なり。余 秘本の傳わる無きを恐れ,因りて手民に付し,以て諸(これ)を世に公にす。並びて太乙神鍼の諸方を後に附して刊す。是の書を閲する者をして參互考證し,而して信從せしむ。
〔訳〕この治療書を閲読してみると,その選穴と治療法は,太乙神鍼によるものであり,霊験あらたかである。実際近来まれに見る書籍である。私はこの稀覯本が失伝するのをおそれ,出版して一般に公開することにした。あわせて太乙神鍼の治療法を巻末に附録としてつけた。本書の読者がこれを参考にして研究し,信頼して使用できるようにするためである。
〔注〕太乙神鍼 雷火鍼と同様,「鍼」と名付けられているが,実態は薬物を混ぜたモグサでこしらえた棒灸である。黄龍祥主編『中国針灸刺灸法通鑑』青島出版社第2版第伍編灸法第五篇熨法414~422頁などを参照。なお,本書で用いられる灸法は,太乙神鍼に変法であり,皮膚の上に生姜の切片をのせ,その上に数個の穴をあけた容器を設置し,その中で薬物とモグサを燃やして燻ずる。 付手民 「付」はゆだねる。また,付梓・刊行する。「手民」は刻工,印刷業者。
『灸法秘伝』序文4 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/17(Fri) 09:37 No.19
刊成,爰綴數語於簡端,以見可傳者之不能終秘,亦以嘉雷君與金君之急急於傳也。是爲序。
〔訓読〕刊成り,爰(ここ)に數語を簡端に綴り,以て傳うべき者の終いに秘する能わざるを見,亦た以て雷君と金君の傳うるに急急なるを嘉(よみ)するなり。是れを序と爲す。
〔訳〕刊行するにあたり,数語を巻頭にしるし,伝えられるべきことが公開されることになるのを見,また雷君と金君が伝授することの至急なることを賛美し,これを序文とする。
光緒九年十一月望日,儘先補用道知衢州府事,楚北劉國光賓臣氏撰。
Re: 『灸法秘伝』序文・ス... 神麹斎 - 2006/03/18(Sat) 10:42 No.20
「見」はむしろ「表示する、しめす、あきらかにする」ではあるまいか。
Re: 『灸法秘伝』序文・ス... 闖薗| - 2006/03/19(Sun) 09:01 No.29
神麹齋先生のご意見をに従いたいと存じます。
内容は刊行者による序文でありますので,「しめす」の方がよりすっきりと劉國光の意思が読み取れると思います。
ありがとうございました。
灸法秘伝凡例1 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/18(Sat) 14:28 No.21
灸法秘傳凡例
一用灸,先審其是何病症,取何穴道,再以病人中指節爲一寸,量準寸分,以墨點其穴,侯灸。
〔訓読〕一。灸を用いるに,先ず其れ是れ何の病症なるか,何の穴道を取るかを審かにし,再び病人の中指節を以て一寸と爲し,寸分を量準し,墨を以て其の穴に點し,侯(ここ)に灸す。
〔訳〕一つ。灸をするにあたって,まずなんの病症であるか,どのツボを取るかを明らかにする。そのうえで,病人の中指の一節を一寸とし,寸分をはかる。墨でそのツボに印をつけ,それから灸をする。
灸法秘伝凡例2 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/18(Sat) 18:59 No.22
一灸法,用生薑一大片,厚二分許,將灸盞之足,釘在薑片之上,照灸盞之孔,將銀針穿通薑片,平放應灸穴上,即將艾絨捏作一團,置於盞内,再上藥料將艾點燃,少頃,則藥氣即可透入,如覺熱甚難禁,可將銀盞提起片時,仍即放下,看盞内藥將燃盡,即取起蜿ヲ換,毎一次換藥三四回,便可收止,毎日或一次,或兩次弗論。
〔訓読〕一。灸法。生薑一大片,厚さ二分許(ばか)りを用う。灸盞の足を將(もっ)て,釘して薑片の上に在らしむ。灸盞の孔に照らし,銀針を將て薑片を穿通し,平らに放(お)き,灸穴の上に應ず。即ち艾絨を將て捏(こね)て一團を作り,盞内に置く。再び藥料を上げ艾を將て點燃す。少頃にして,則ち藥氣即ち透入すべし。如(も)し熱甚だしく禁ずること難きを覺ゆれば,銀盞を將て提起すること片時にして,仍って即ち放下するも可なり。盞内の藥 將に燃え盡きんとするを看れば,即ち取り起こし蜿ヲに換え,一次毎に藥を換えること三四回,便ち收止すべし。毎日或いは一次,或いは兩次,論ぜず。
〔訳〕一つ。灸法。生姜の大きな切片,厚さ二分ほどのものを用いる。灸容器の足を生姜の切片の上に釘を刺すように置く。灸容器の穴にあわせて,銀針で生姜の切片に穴をあけ,平らに置いて灸穴に一致させる。すぐに艾毛をこねて団子を作り,灸容器内に置く。さらに薬物を載せ,艾に点火する。短時間で薬気がすぐに透過進入できる。もし熱すぎて我慢できない場合は,銀の容器をしばらく持ち上げて,それからすぐに降ろしてもよい。容器内の薬物が燃えつきそうになったら,すぐに取り出して別のものに交換する。一回の治療で三四回換えたら,終わりにする。毎日一二回するが,回数は問わない。
〔注〕照 『中国針灸刺灸法通鑑』421頁の引用文は「点」に誤る。
Re: 灸法秘伝凡例2 神麹斎 - 2006/03/18(Sat) 20:26 No.24
あるいは:
平放應灸穴上=応に灸すべき穴の上に平らに放き
Re: 灸法秘伝凡例2 闖薗| - 2006/03/18(Sat) 20:43 No.25
なるほど。「平らに応に灸すべき穴の上に放き」がいいですね。
灸法秘伝凡例3 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/18(Sat) 19:56 No.23
一用灸,宜天氣温和,密室無風之所,焚一爐香,照法用灸。若遇人神所在,不宜灸之,切須忌避,孕婦亦不宜用。
〔訓読〕一。灸を用いるに,天氣温和に宜し。密室無風の所にて,一爐香を焚き,法に照らして灸を用う。若し人神の所在に遇えば,宜しく之れを灸すべからず。切に須く忌避すべし。孕婦も亦た宜しく用うべからず。
〔訳〕一つ。灸は天気が温和な日が適当である。密閉された風が入らないところで香を焚き,灸法にしたがう。もしその日が人神の所在と灸所が一致する場合は,灸すべきでなく,かならず忌避しなければならない。妊婦も灸はしないほうがよい。
〔注〕人神 日時に従い定期的に人神は体内を移動している。その所在にあたる日時には該当箇所には鍼灸は避けるべきであるという古代の鍼灸忌避説。なお,本書では十二時・十二支・十干の人神不宜鍼灸歌などを掲載するが,最後に「急病の際は避けなくともよい」という。
灸法秘伝凡例4 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/18(Sat) 20:53 No.26
灸後,必須靜臥片時,待其藥氣周流於臓腑脈絡之内,自然暢快病出,切切愼風節食,保精養神,爲第一著。
〔訓読〕灸の後は,必ず須く靜かに臥すること片時,其の藥氣の臓腑脈絡の内に周流するを待つべし。自然に暢快たりて病出づ。切切として風を愼み食を節し,精を保ち神を養うを,第一著と爲す。
〔訳〕灸治療を終えた後は,かならずしばらく静かに横臥して,薬気が臓腑脈絡のうちに周流するのを待つべきである。そうすると自然にのびのびと気持ちよくなり病気が出ていく。心をこめて風に当たるのを避け,食物を節し,精気・神気を保養するのが一番である。
〔注〕著 量詞。位次。
Re: 灸法秘伝凡例4 闖薗| - 2006/03/18(Sat) 20:56 No.27
本文,いちばんはじめに「一」を抜かしました。
〔訓読〕一。
〔訳〕一つ。
灸法秘伝凡例5 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/18(Sat) 21:32 No.28
一灸穴,宜審輕重,上體及當骨處,灸宜少,下體及肉厚處,灸多無害。
〔訓読〕一。灸穴は,宜しく輕重を審かにすべし。上體及び骨に當たる處は,灸は宜しく少なくすべし。下體及び肉厚き處は,灸多くとも害無し。
〔訳〕一つ。灸穴は軽重を明らかにすべきである。上半身と骨にあたる部分に対しては,灸は少なくするべきである。下半身と肉厚の部分は,多く灸しても害はない。
以上で凡例は終わりです。このあと,正面図・背面図が続きます。
『灸法秘伝』指節図 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/19(Sun) 11:09 No.30
指節圖
量穴道取寸法。以男左女右手中指第二節,屈指兩紋尖,相去爲一寸,取稻草心,或薄遽セ片,量之,若用繩線,則有伸縮不準。
〔訓読〕指節図。穴道を量り寸を取る法。男は左,女は右の,手の中指第二節,指を屈して兩紋の尖を以て,相去るを一寸と爲す。稻の草心,或いは薄き遽セ片を取り,之れを量る。若し繩線を用いれば,則ち伸縮有りて準ならず。
〔訳〕指節図(長い爪をした右手が雲紋?の上にあり,親指で中指の先端を屈して,DIP関節・PIP関節を示す図あり)。ツボの位置をきめ,寸法をとる方法。男は左手の,女は右手の,中指の第二節を屈曲させ,(第一関節と第二関節にある)二箇所の橫紋の尖端の間の距離を一寸とさだめる。稲の茎か薄い竹の皮を用いてはかる。縄の場合には伸縮性があるので,計測具とするには適さない。
〔注〕草心 草の芯。/ 遽セ ベツ。竹の皮。原書では,この字は「竹」冠+「四マイナス一」+「伐」で構成されているように見えるのですが,該当字が見当たらないので,「遽セ」の異体字と推定しました。/ 準 形容詞。正確である。
『灸法秘伝』灸盞図 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/19(Sun) 21:50 No.31
灸盞圖
古聖用九針,失傳久矣。今人偶用者,不但不諳針法,亦且不熟『明堂』,至於灸法亦然也。今用銀盞隔姜灸法,萬無一失。凡欲用此法者,須莉ソ此樣爲式。四圍銀片稍厚,底宜薄。須穿數孔。下用四足,計高一分許。將盞足釘在生姜片上,姜上亦穿數孔,與盞孔相通,俾藥氣可以透入經絡臓腑也。
〔訓読〕灸盞図(「仰式」と「俯式」の図あり。灸盞は,二つの把手と四足のある鍋状で,底に七~八個の穴あり。おそらく八個。一個は一本の足のかげに隠れていると思われる。以下の説明では「數孔」とある)。
古聖の九針を用いるや,失傳すること久し。今人偶(たま)たま用いる者は,但だ針法を諳(そら)んじざるのみならず,亦た且つ『明堂』にも熟せず。灸法に至りても亦た然るなり。今 銀盞隔姜灸法を用いれば,萬に一失無し。凡そ此の法を用いんと欲する者は,須く此の樣を莉ソ(なら)い式と爲すべし。四圍の銀片は稍や厚くし,底は宜しく薄くすべし。須く數孔を穿つべし。下は四足を用い,計るに高さ一分許(ばか)り。盞足を將(もっ)て釘して生姜の片上に在らしむ。姜上も亦た數孔を穿ち,盞孔と相通ぜしめ,藥氣をして以て經絡・臓腑に透入せしむるべきなり。
〔訳〕いにしえの聖人の九針法は,とおの昔に伝えられなくなってしまった。現代人でたまたま鍼灸をしているものは,針法を暗記してもいなければ,経穴の位置や主治についても習熟していない。灸のやり方にしても同様である。しかし,(本書にある)銀盞を用いた隔姜灸法を使用すれば,万に一つの失敗もない。この方法を使いたいひとはみな,この様式を基準とすべきである。(容器の)四周壁に用いる銀板はやや厚めにし,底板は薄いほうがよい。かならず穴を(底部に)数個うがたなければならない。四本足の容器を用い,だいたい(足は)一分ほどの高さとする。その容器の足を生姜の切片の上に釘のように刺す。生姜にもいくつか穴をあけて,容器の穴と通じ合うようにし,薬気が経絡や臓腑に透過滲入できるようにする。
〔注〕『明堂』 古代の鍼灸書。ツボの位置や主治などを記載する。原本は失われているが,閻ァ穴学書の代名詞として用いられる。/ 在 本書は清末の刊行で,「將」を「以」の意味で多用するなど,口語的な用字・用法が多い。「在」も動詞というより介詞「於」として用いていると考えられるが,訓読は従来通りの動詞として読んだ。
Re: 灸盞図 神麹斎 - 2006/03/21(Tue) 06:07 No.35
図を添付しようとしたのですが、何故だか上手くいきませんので、私のブログに載せました。
http://plaza.umin.ac.jp/~linglan/weblog/
Re: 『灸法秘伝』灸盞・ス... 闖薗| - 2006/03/21(Tue) 10:07 No.36
神麹斎先生,ご協力ありがとうございます。
『灸法秘伝』灸藥神方... 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/22(Wed) 10:37 No.37
()内は,双行。
灸藥神方
艾葉(一錢五分) 硫黄 乳香 没藥 麝香 皂角 枳殻 川闃氏@桂枝 杜仲 全蝎 白闃キ 細辛 松香 雄黄 獨活 穿山甲(以上各五分)
右藥,秤準分兩,各爲末,和丸,固藏,弗洩氣。
〔訓読〕右の藥,分兩を秤準し,各おの末と爲し,丸に和し,固く藏(おさ)め,氣を洩らすなかれ。
〔訳〕右の薬物の重さを量り,それぞれ粉末にし,こねて球状にし,しっかりと貯蔵し,薬物の気を漏らさないようにする。
『灸法秘伝』灸藥神方... 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/23(Thu) 22:04 No.38
(方解)艾葉,揉搗如綿,謂之熟艾。熟艾性熱,能通十二經,走三陰。以之灸火,能除百病。硫黄之性,純陽,能援陽氣暴脱,命欲埀危。没藥、乳香通行十二經絡。麝香、皂角宣開上下竅。枳殻破一切氣滯。川闃詩s一切血凝。桂枝調衛和營。杜仲舒筋壯骨,定厥陰之風。全蝎有力,化癰瘍之毒。白闃キ多功。細辛通竅散寒。松香陲ェ風止痛。雄黄殺百毒。獨活捜伏風。更以穿山甲,通行經絡,直達病所,方中諸品無處不行。所以主治諸逍エ。效如桴鼓。
〔訓読〕艾葉,揉み搗(つ)くこと綿の如し。之れを熟艾と謂う。熟艾の性は熱,能く十二經を通ぜしめ,三陰に走る。之れを以て灸火は,能く百病を除く。硫黄の性は,純陽にして,能く陽氣の暴脱して,命の危に埀(なんなん)とせんと欲するを援(たす)く。没藥、乳香は十二經絡を通行せしむ。麝香、皂角は,上下の竅を宣開せしむ。枳殻は一切の氣滯を破る。川闃獅ヘ,一切の血凝を行(めぐ)らす。桂枝は,衛を調え營を和す。杜仲は,筋を舒し骨を壯にし,厥陰の風を定む。全蝎 力有り,癰瘍の毒を化す。白闃キ 功多し。細辛は,竅を通じ寒を散ず。松香は,風を陲ェ(さ)り痛を止む。雄黄は,百毒を殺す。獨活は,伏風を捜す。更に穿山甲を以て,經絡を通行し,病所に直達し,方中の諸品をして處として行らざるは無さしむ。諸逍エを主治する所以なり。效あること桴鼓の如し。
〔訳〕艾葉は綿のように揉み,つきくだく。このようになったものを熟艾という。熟艾の性質は熱であり,十二経脈の流れをよくし,三陰にいく。このため灸の火は多くの病を除くことができる。硫黄の性質は,純陽であり,陽気がにわかに脱出して,生命の危機に瀕した状態から救うことができる。没薬と乳香は十二経絡の気を通行させる。麝香と皂角は,上下にある九竅を開かせる。枳殻は,あらゆる気の滞りを解消する。川闃獅ヘ,あらゆる血の凝滞を解いてめぐりをよくする。桂枝は,営衛の気を調和させる。杜仲は,筋をのびやかにし骨を壮健にし,厥陰の風をしずめる。全蝎には力があり,癰瘍の毒を無毒化する。白闃キには効能が多い。細辛は,九竅を通じやすくし,寒邪を消散させる。松香は,風邪をのぞき,痛みをとめる。雄黄は,あらゆる毒物を解毒する作用がある。独活は,隠れている風邪を探り出(して治療)す。更に穿山甲を使って,経絡のめぐりをよくし,病所に直に達するようにし,処方中の諸品の効能を体のあらゆるところに到達できるようにさせる。これが諸病を治療できる理由である。そのききめは,たちどころに現れる。
〔注〕埀 垂の異体字。/ 全蝎 (尻尾だけでなく)サソリまるごと。『本草綱目』巻40蠍「今入藥有全用者,謂之全蠍」。/ 無A不B AトシテBセザルハナシ。どんなAでもBする。/ 桴鼓 バチとつづみ。打てば響くたとえ。
他覚性耳鳴 投稿者:闖薗| 投稿日:2006/03/07(Tue) 19:50 No.15
張登部主編『難病とどう取り組むか』緑書房 315頁
男性10歳 患者は麻疹にかかり、10日間近く発熱した。そのあと両側の耳に他覚性耳鳴が現れた。その音は時計の音のようにリズムを持っている。……患者の耳元に時計の音と同じようなリズムを持つ音が聞くことができ、その音は心拍とは一致していない。……
編者解説 他覚性耳鳴の一種であり、客観性耳鳴に属し、振動性耳鳴ともいう。しかし臨床ではあまり見られないものである。その特徴は観察者にも耳鳴の音が聞こえ、音の多くは「カチャ」あるいは拍動性雑音である。前者は……
取穴:天井・陽輔・行間(すべて両側)
扁鵲倉公列伝の他覚性耳鳴を思い出したので、引用させていただきました。
句読の質問 投稿者:神麹斎 投稿日:2006/02/23(Thu) 18:17 No.2
少氣者,脈口、人迎菫ア少而不稱尺寸也,如是則陰陽菫ア不足。…補陽則陰竭,寫陰則陽脱。如是者可將以甘藥,不愈,可飲以至齊。…如此者弗灸不已,因而寫之,則五藏氣壞矣。
【楊上善注】如此二皆是虚,可以湯液補者,日漸方愈,故曰不久不已。若不如此,即用鍼寫,必壞五藏之氣也。為不灸於義不順,灸當為久也。
経文だけ見ているぶんには、何も不思議を感じないけれど、楊上善の注を見ると、「如此者弗灸不已」は「如此者弗灸,不已」のつもりではないかと思う。何とも不思議なんだけど、「弗灸不已」で「灸せざれば已えず」と読むというのは、彼の念頭には無いらしい。「不久不已」で「久しからざれば已えず」なら良いみたいですが……。古代漢語の語法から考えて、そういう違いが有るんですかね。それとついでに、「因而灸之」と「因而久之」は、語法的に両方とも可能ですか。
これは『太素』の話なんだけど、今『太素を読む会』の掲示板が停止中なので、ここに書きます。『醫説』鍼灸が終わって、こちらもえらく静かになっちゃったみたいだし。
Re: 句読の質問 古医書 - 2006/02/24(Fri) 08:30 No.3
先生の疑問の内容が,どのようなことがらを念頭に置いておっしゃられているのか,浅学のわたくしにはまったく不明です。申し訳ありませんが,質問させて下さい。
まず最初の問題提起について:
〉「如此者弗灸,不已」のつもりではないかと思う。
楊上善がどのように解釈したつもりか,現代語訳してみていただけないでしょうか。
Re: 句読の質問 神麹斎 - 2006/02/24(Fri) 11:04 No.4
いや実は私自身もちょっと説明不足かとは思ったんですが、続けて書き込むのも何だから、ちょっと待ってました。
甘薬のほうは、「甘薬を飲ませるべきであって、もしそれでは効果が無い場合には、斉(剤)を飲ませてみろ」ということでしょう。少なくとも楊上善はそのつもりです。
(私自身は、今のところ『霊枢』の「如是者可將以甘藥,不可飲以至齊」をとって、「甘薬を飲ませるべきであって、至斉なんてとんでもない」と解するほうが良いと思ってます。)
で、灸のほうですが、「如此者弗灸不已因而寫之則五藏氣壞矣」を、楊上善は「如此者弗灸,不已,因而寫之,則五藏氣壞矣」と句読して、「こういう人に灸をしてはいけない、そんなことをしても治らないし、だからといって瀉したりしたら、五蔵の気を壊滅させてしまう」と解していると思うんです。(私自身はこの解釈に同意しません。)楊上善の注は「こういう二つとも虚していて、湯液で補うべきものは、日々に少しずつ治っていくものだから、不久不已と言うのである。もしこうしたものに、針で瀉法を施したりすると、必ず五蔵の気を壊してしまう。灸をするなというのは、理屈に合わないから、灸ではなくて久とするべきである。」つまり、「灸をするなというのは、理屈に合わない」と批難するためには、「弗灸不已」で「灸せざれば已えず」(灸をしなければ治らない)と読むということは考えてないらしい。「灸をするな」は変だから、「灸ではなくて久とするべき」だと言う。で、「不久不已」なら「久しからざれば已えず」(時間をかけなければ治らない)と読むつもりらしいので、ますます分からない。「不久不已」(久しからざれば已えず)は良いけれど、「弗灸不已」(灸せざれば已えず)は拙いという、語法的な根拠が有るんですかね、というのが私の疑問です。
ついでの質問というのは、人迎脈口倶に三倍以上のときの「如此者,因而灸之,則變易而為他疾矣」も、似たような話なんだと思うけれど、こちらには楊上善も「灸當為久」と言わない、何故だろう、ということです。「因而久之」には、語法的に問題有りますかね。
Re: 句読の質問 神麹斎 - 2006/02/24(Fri) 14:21 No.5
もう一つ書き忘れました。
如此者弗灸不已,因而寫之,則五藏氣壞矣。
これを、『黄帝内経太素語訳』では、どのように現代語訳してますか?
お持ちの人に書き込みをお願いしたい。
Re: 句読の質問 闖薗| - 2006/02/25(Sat) 00:28 No.10
像這種情況,也不能用温陽的灸法。仮如病不見好而誤用瀉法,就会造成五臓之気敗壊。
Re: 句読の質問 闖薗| - 2006/02/25(Sat) 00:31 No.11
なお,掲載原文の句読点は,以下の如し。
如此者弗灸,不已,因而寫之,則五藏氣壞矣。
Re: 句読の質問 神麹斎 - 2006/02/25(Sat) 07:41 No.12
そうなんですよ、楊上善の言い分では原文は、「如此者弗灸,不已,因而寫之,則五藏氣壞矣。」(此の如き者は灸することなかれ、已えざればとて、因りてこれを写せば、則ち五蔵の気壊す)のはずなんですよ。
で、楊上善としては「像這種情況,也不能用温陽的灸法。」(こうした情況には、温陽の灸法を用いることはできない)などいうのはおかしいと考えたから、「為不灸於義不順,灸當為久也。」(不灸というのは意味的に変だから、灸は久とすべきである)と主張している。
だけど、『黄帝内経太素校注』の「如此者弗灸不已,因而寫之,則五藏氣壞矣。」で、「弗灸不已」を「灸せざれば已えず」と訓めるんだったら、楊上善の主張は頓珍漢なことになるでしょう。「灸せざれば已えず」と訓んじゃいけないのかね、という質問なんです。だって、現代中国人のほとんどは「如此者弗灸不已」と句読してますよ、どういうつもりかしら、とね。
それと、うっかりしてましたが、これは『太素』巻十四の人迎脈口診の一部です。
Re: 句読の質問 唐辺睦 - 2006/02/26(Sun) 09:38 No.13
ただね、「灸せざれば已えず」ということ自体に反対して、「久からざれば已えず」とするべきだ、と言っている可能性も全く無いわけでは無い。艾灸は真陰を消耗させるという考え方ですね。
Re: 句読の質問 神麹斎 - 2006/02/26(Sun) 10:02 No.14
少気の患者に甘薬で対処すべきだというのは当然として、それで駄目なら峻劑を試みよと言いながら、艾灸は真陰を傷なうから駄目と言うのは納得できません。
纏足 ふたたび 投稿者:闖薗| 投稿日:2006/02/24(Fri) 17:12 No.6
その形容に「三寸金蓮」の語があり、文字通り10センチほどの足をよしとした。ただ、このような足は労働にはむかないから、多くは遊食階層か、男性の歓楽相手となる女性に限られた。
陳舜臣監修『中国歴史紀行』第五巻明・清96p佐野公治「女性を苦しめた奇習」
Re: 纏足 ふたたび 唐辺睦 - 2006/02/24(Fri) 17:57 No.7
『金瓶梅』は『水滸伝』中の西門慶と潘金蓮の故事から派生したということはご存じですよね。
で、『水滸伝』には居ないのに、『金瓶梅』に登場するものとしては、潘金蓮がらみでは亭主の武大のなくなった先妻に娘が有って、小間使いがわりに使っている。ここのところを日下翠著『金瓶梅』では「作者は、短時間とはいえ金蓮に水仕事をさせるにしのびなかったものとみえる。あるいはこの作者にとって、自分で水仕事をするような下等な女性が恋愛の対象になるということは、考えられなかったのかも知れない。」と解説しています。「この作者」は読書人の端くれで、様々な纏足についての雑事を書き留めたのも、やはりそうしたお仲間で、江湖をすみずみまで解説しているとは限らない。侍女に世話をされ、腋から支えられるようにして歩くのがステイタスであったろうけれど、無論、中流以下ではそうもいかない。無理して頑張って機会をうかがったものも有るだろうけど、早々と諦めて現実的に生きた女性も多かったはずだ。現実には、「纏足が美人の資格の第一?!それどころじゃないよ!!」というのが大多数でしょう。何ごとも、そうそう理屈通りにはいかない。
一寸前まで、世界中に「妻にするなら日本人」という言い方が有ったでしょう。嘘であることは我がもっとも良く知っている。
むかし、マリリン・モンローが来日したとき、全裸で指圧をうけたという話があって、妙に関心したけれど、金髪の女性の誰もがそうするわけでもあるまい。私には欧米人の治療の経験が無いんだけど、経験の有る人にお伺いします。お宅ではそういう眼福に恵まれましたか。
東京理科大の遠藤次郎先生の御著書が出版されました。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4540030914/qid=1145845386/sr=8-2/ref=sr_8_xs_ap_i2_xgl14/250-0164571-9098661
教授をご存知の方も多いと思いますが,鍼灸師でもあり,経絡経穴に関する研究にも異彩をはなっています。
本書では,先生の従来の研究をふまえた,先生にしか書けない,幅広い東と西の医学論や中国伝統医学を日本漢方がいかに受容していったか,などが展開されています。
ユネスコ無形文化遺産 投稿者:乘黄 投稿日:2006/04/02(Sun) 11:37 No.55
中国伝統医薬世界文化遺産申告委員会の専門家チーム会議では、中国医学の「理論」「養生」「診断法」「治療法」「処方」「漢方薬」「針灸」「少数民族の伝統医学」(西蔵〈チベット〉や内蒙古の伝統医学などを含む)の8項目を一括して、「中国伝統医学」として無形文化遺産に登録申請することが確定した。
日本にも伝統をうたった学会があるにはあるが・・・。
歴史の違いなんでしょうか?それとも・・・・。
Re: ユネスコ無形文化・ス... 唐辺睦 - 2006/04/04(Tue) 08:19 No.57
つまり、中国は俺が本家だと言いたいんじゃないでしょうか。それを認めないのは、歴史認識に欠ける、と。
檪窓類鈔 書名の由来 投稿者:闖薗| 投稿日:2006/04/01(Sat) 16:16 No.53
『櫟遯サ類鈔』序
……余自才(この三字は蔵書印と重なり,推定)小,癖嗜披閲,醫經方之外,上自經史子集,下至稗官野乘,小説閼梛L,隨得而讀之,隨讀而抄之,而其所抄,悉關渉於我方技家之事者也,……屹屹不輟,殆三十年,排纂分類,爲若干卷,舊所居遯サ前,有櫟樹数株,毎深秋之候至,風吹枯葉,邁檎ー呉ィ聲,稍有林間之興致,燈下展閲之際,最爲可愛,因名曰櫟遯サ類鈔。
Re: 檪窓類鈔 書名の・ス... 神麹斎 - 2006/04/01(Sat) 16:46 No.54
無論、そうです。
でも元簡が「樗櫟」という言葉の意味を知らなかったはずがない。知っているけれども、それを表に出さずに、「最爲可愛,因名曰櫟遯サ類鈔」と言うところが、元簡の賢いところでしょう。
素問の現代語訳 投稿者:別府 投稿日:2006/03/30(Thu) 17:13 No.48
会員ではないのに書き込み失礼致します。
東京医科歯科大学の別府です。先日斯文会の素問攷注を読む会中に、素問の現代語訳の最善本をご紹介頂いて、内経学会編(または出版)と伺ったと思うのですが、ホームページには記載がないようです。購入したいのですがどうすればよろしいでしょうか。どなたかご教示下されば幸いです。
Re: 素問の現代語訳 神麹斎 - 2006/03/30(Thu) 18:09 No.49
> 素問の現代語訳の最善本をご紹介頂いて、内経学会編(または出版)と伺った
と言うのは聞き間違いでしょう。
よりましなものとしてなら、東洋学術出版社のものを紹介されたんじゃないですか。
『現代語訳◎黄帝内経素問』全3巻。
確かに、当会の何人かが翻訳に協力はしたはずですが、むかしのことです。
丸山昌郎先生の校勘和訓とか、島田隆司先生の講座とかも考えられなくはないですが、前者は大昔の発行で私たちも持ってませんし、後者は印刷物にはなってません。(素問ネットとしてWEB上で順次公開中です。http://www001.upp.so-net.ne.jp/somon/)
Re: 素問の現代語訳 別府 - 2006/03/30(Thu) 19:29 No.50
そうですか。ご丁寧にありがとうございます。
東洋学術出版のものの話ではなかったと記憶しておりますが…。
また斯文会の時に伺ってみます。どうもありがとうございました。
Re: 素問の現代語訳 通行人 - 2006/03/31(Fri) 06:15 No.51
そもそも「現代語訳の最善本」なんて、有り得るものですか。
『素問』や『霊枢』の最善本ならわかるし、『霊枢』の最善本は確かに内経学会出版のものだろうけど。
檪窓類鈔 投稿者:闖薗| 投稿日:2006/03/28(Tue) 13:00 No.47
丹波元簡が中国の非医学書から医学関連記事を抜き出したものに『檪窓類鈔』(オリエント出版社「臨床漢方病証学叢書」 第17冊)があります。
その中に、「鬢ウと錫」に関するものが二題取られています。その一つが、この『金臺紀聞』です。
そのほか、『素問識』に縦横に引用されている記事を多くみることができます。たとえば、全元起が『南史』に出ていること、銅人形のことが宋代の筆記にみえることなど。
元簡の学識の淵源の一端を知ることができる書です。
戴元禮1 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/27(Mon) 03:53 No.39
かつて『医古文基礎』を訳すにあたって,引用文をすべて原典と照合した。かなりの異同が見つかった。主編者のひとり銭超塵教授に相談したところ,誤りは正してよいとの返事をいただいた。煩雑になるので,訳書ではいちいち指摘していない。
原典との照合はこころみたけれども,すべて引用文が見つかった訳ではない。たとえば,「版本と校勘」章で,医書の校勘の重要性を説くくだりがある。そこでは,明・陸深の『儼山外集』が引用されている。調べたが,『儼山外集』では見つけることができなかった。見たのは一つの版本のみなのだし,見逃している可能性もある。だから,この章の筆者の勘違いだとはいえない。
いま,陸深の『金臺紀聞』から該当する箇所を引用する。(『叢書集成初編』所収の排印本による。なお,この排印本の句点は「.」のみであるが,読みやすさを考えて,句読点の種類を増やした。毎度のことながら,ご意見をいただければさいわいです。)
金華戴元禮,國初名醫。嘗被召至南京,見一醫家迎求溢戸,酬應不間。元禮意必深於術者,注目焉。按方發劑,皆無他異。退而恠之。日往觀焉。偶一人求藥者既去,追而告之曰:「臨煎時下錫一塊」。麾之去。元禮始大異之。念無以錫入煎劑法。特叩之。答曰:「是古方爾」。元禮求得其書,乃鬢ウ字耳。元禮急爲正之。嗚呼,不辨鬢ウ錫而醫者!世胡可以弗謹哉!
戴元禮2 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/27(Mon) 09:21 No.40
掲載文の大意は,『医古文の基礎』247頁にありますので,そちらを参照下さい。勉強のため,訓読をこころみます。ご指正ください。
〔訓読〕金華の戴元禮は,國初の名醫なり。嘗て召されて南京に至る。一醫家の迎求 戸に溢れ,酬應 間あらざるを見る。元禮 必ずや術に深き者と意(おも)い,注目す。方を按じて劑を發するに,皆な他異無し。退きて之れを恠(あや)しむ。日々往きてこれを觀る。偶(たま)たま一人の藥を求むる者 既に去らんとするに,【医家】追いて之れに告げて曰く:「煎ずるに臨む時,錫(すず)一塊を下せ」と。之れに麾(さしまね)きて去らしむ。元禮 始めて大いに之れを異とす。念(おも)うに錫を以て煎劑に入るるの法無し。特に之れを叩く。答えて曰く:「是れ古方のみ」と。元禮 求めて其の書を得るに,乃ち「鬢ウ」字のみ。元禮 急ぎて爲に之れを正す。ああ,鬢ウと錫とを辨ぜずして醫する者か!世 胡(なん)ぞ以て謹まざるべけんや!
〔注〕戴元禮 戴原禮とも表記される。1324-1405。名は思恭。明の太祖洪武帝に寵愛される。太医院院使。『証治要訣』などの著書あり。明の当初は南京に都を置いたが,永楽帝がクーデターを起こし,政権を奪い,北京に遷都した。 /迎求 医者を迎えに来たり,治療を求めに来たりする患者? /酬應 応酬と同じ。応対。 /間 ひま・いとま。 /恠 「怪」の異体字。 /麾 「サシマネク」と訓ずるがここでの意味は「指示する」。「フルウ」と訓じ,「手を振る」とも解釈できなくはない。 /異之 「異」形容詞の意動用法。「奇異だと思う」。 /叩 「タタク」と訓ずるが,ここでの意味は「質問する・問いただす」。 /爲 この医家のために。 /鬢ウ みずあめ。
Re: 戴元禮2 闖薗| - 2006/03/27(Mon) 09:32 No.42
「指示する」→「指図する」
戴元禮3 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/27(Mon) 09:26 No.41
やっと問題にしたい点にたどりつきました。
「版本と校勘」章の筆者は,いやしくもひとの命にかかわる仕事をするのだから,古医書を読むにあたっては,よりよい版本をテキストにつかい,校勘もおろそかにしてはならない例としてこのくだりを出しています。
つまり,「元禮求得其書」の「其書」を「その処方が書いてある版本」ととらえています。しかし,これに続く「嗚呼,不辨鬢ウ錫而醫者!」を読むと,「其書」とは「この医家が所持していた医書」と理解したくなります。
では,この章の筆者は「この医家の所持していた医書」とは考えなかったのでしょうか。そうとは,わたしには思えません。「元禮急爲正之。嗚呼,不辨鬢ウ錫而醫者!世胡可以弗謹哉!」(アメとスズの字の区別もできないやつが医者をやっているとは!という戴元礼の嘆き・軽蔑)の部分の現代語訳を載せていないのは,上の主張には合わなくなるので,意図して省いたのではないでしょうか。この章には,他の部分にも断章取義しているところがあるので,こう考えます。
いかがでしょうか。
Re: 戴元禮3 老婆心 - 2006/03/27(Mon) 09:36 No.43
【断章取義】ダンショウシュギ・ショウヲタチギヲトル
《故事》詩や文章の一部分だけを選び出し、原文と関係なく利用すること。〔中庸・孔穎達疏〕
Re: 戴元禮3 唐辺睦 - 2006/03/27(Mon) 14:00 No.44
「其書」はやっぱり「その処方が書いてある版本」では無いかと思います。その理由は「求得」だからです。辞書を引いてもそこまで詳しく書いてあるわけではないので、本当はあまり自信は無いんですが、その医者に「その古方とやらが載っている本をちょっと見せてください」と言って見せてもらったんなら、「求得」とは書かないんじゃないかと思うんです。どこかで捜してきて調べてみたら、「鬢ウ」だった。そこで、「ははあ、あの医者の本はこの字が錫になっているんだな、あの医者は版本を選ぶことも、疑わしい文字を正すことも知らないんだな、錫に似た字に鬢ウというのが有るのを知りもしないんだろうな」では無かろうか。
Re: 戴元禮3 神麹斎 - 2006/03/27(Mon) 15:31 No.45
「元禮急爲正之」だから、やっぱりその医者の使っている本を見て、その誤りを訂正してやったんじゃないでしょうか。もっとも、「あわてて訂正してやりに行った」でも良いかも知れませんが。
Re: 戴元禮3 神麹斎 - 2006/03/28(Tue) 12:14 No.46
この話は、余程、中国の先生方に人気が有るらしく、段逸山主編の高等中医院校教学参考叢書『医古文』にも取り上げられています。そこでは「元禮求得其書,方知“錫”乃“鬢ウ”字之誤。」とあります。つまり、その一医家の持っていた書物は字が間違っていた、文脈からそれが分かったというニュアンスにもとれる。ただし、原文も句読点を施す練習用にも用いられていて、「元禮求得其書乃鬢ウ字耳」ですから、一医家の持っていた書物の文字が「鬢ウ」であったというころでしょう。闖薗|氏の言うように、文字知識の不足を嘆く話を、版本の校正の不備にすり替えているようですね。なお、『医古文』では、出典を『金臺紀聞』としています。
『灸法秘伝』序文1 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/16(Thu) 23:48 No.16
日本内経医学会日曜講座初級の講師,荒川緑と申します。
平成17年度は,医古文語法の基礎を解説するとともに,『後漢書』華佗伝を読み終わりました。4月12日に開講する平成18年度では,医古文語法の解説と並行して『灸法秘伝』の本文を読みすすめていきたいと考えています。テキストは光緒癸未冬骼ク劉氏楽善堂蔵板(『続修四庫全書』所収の影印本)です。
時間の関係で,講座では本文のみしか詳しく触れられませんので,以下序文をこの場を借りて掲載させていただきます。訓点・解釈の誤りなどがございましたら,ご指摘いただければ幸甚です。
雷君少逸,衢之名醫也。余守是郡。因病邀診。遂與之善。其人秉至性,多讀書。以醫世其家。著作甚富。余嘗序其『時病論』一書,行之。
〔訓読〕雷君少逸は,衢の名醫なり。余 是の郡を守る。病に因りて診を邀(もと)む。遂に之れと善くす。其人 至性を秉(と)り,多く書を讀む。醫を以て其の家を世(よよ)にす。著作 甚だ富む。余 嘗て其の『時病論』一書に序し,行わる。
〔訳〕雷君,少逸は,衢州の名医である。私はここの郡守(長官)であるが,病気になり診療をお願いした。それが縁で親しくつきあうようになった。その人となりは極めて善良であり,読書家である。医学を家業として受け継いだ。著作も非常に多い。以前,かれの『時病論』に序文をよせたことがある。この書は流布している。
〔注〕雷君少逸 清末の医家(1833~1888)。少逸は字。名は豊。福建・浦城県の生まれ。父にしたがい,浙江・衢州に居をうつす。父親の雷逸仙は,医学を程芝田に学ぶ。『時病論』八巻。光緒八年(1882)刊行。
『灸法秘伝』序文2 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/16(Thu) 23:54 No.17
一日,復出其戚金君冶田所藏『灸法秘傳』,見示,云「得自蜀僧,施治頗驗」。原書隰ュ陋不文,經雷君取所列諸證分門而爲之隱ェ,言簡意雉・C深得經旨,誠濟世之良術也。
〔訓読〕一日,復た其の戚 金君冶田藏する所の『灸法秘傳』を出だし,見示して,「蜀の僧より得。施治するに頗る驗あり」と云う。原書 隰ュ陋にして文をなさず。雷君 列する所の諸證を取り,門に分かち,而して之れが隱ェを爲すを經,言簡にして意雉・C深く經旨を得たり。誠に濟世の良術なり。
〔訳〕ある日,また雷少逸はその親戚に当たる金冶田が所蔵する『灸法秘伝』を持ってきて見せてくれ,「蜀の僧侶から得た物で,治療に使うと非常に効果がある」といった。原書は,表現が拙劣で文の体をなしていない。そこで雷君が挙げられている諸証を分類し解説を加えた。言葉は簡潔で要領を得ており,深く内容を理解することができる。まことに世の中に役立つ良術である。
『灸法秘伝』序文3 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/17(Fri) 09:18 No.18
檢閲方書,其論穴治病,則從太乙神鍼,神明而出。實近今所罕見之本,余恐秘本無傳,因付手民,以公諸世。並附刊太乙神鍼諸方於後。俾閲是書者參互考證,而信從焉。
〔訓読〕方書を檢閲するに,其の論穴・治病は,則ち太乙神鍼に從い,神明すなわち出づ。實に近今 罕見する所の本なり。余 秘本の傳わる無きを恐れ,因りて手民に付し,以て諸(これ)を世に公にす。並びて太乙神鍼の諸方を後に附して刊す。是の書を閲する者をして參互考證し,而して信從せしむ。
〔訳〕この治療書を閲読してみると,その選穴と治療法は,太乙神鍼によるものであり,霊験あらたかである。実際近来まれに見る書籍である。私はこの稀覯本が失伝するのをおそれ,出版して一般に公開することにした。あわせて太乙神鍼の治療法を巻末に附録としてつけた。本書の読者がこれを参考にして研究し,信頼して使用できるようにするためである。
〔注〕太乙神鍼 雷火鍼と同様,「鍼」と名付けられているが,実態は薬物を混ぜたモグサでこしらえた棒灸である。黄龍祥主編『中国針灸刺灸法通鑑』青島出版社第2版第伍編灸法第五篇熨法414~422頁などを参照。なお,本書で用いられる灸法は,太乙神鍼に変法であり,皮膚の上に生姜の切片をのせ,その上に数個の穴をあけた容器を設置し,その中で薬物とモグサを燃やして燻ずる。 付手民 「付」はゆだねる。また,付梓・刊行する。「手民」は刻工,印刷業者。
『灸法秘伝』序文4 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/17(Fri) 09:37 No.19
刊成,爰綴數語於簡端,以見可傳者之不能終秘,亦以嘉雷君與金君之急急於傳也。是爲序。
〔訓読〕刊成り,爰(ここ)に數語を簡端に綴り,以て傳うべき者の終いに秘する能わざるを見,亦た以て雷君と金君の傳うるに急急なるを嘉(よみ)するなり。是れを序と爲す。
〔訳〕刊行するにあたり,数語を巻頭にしるし,伝えられるべきことが公開されることになるのを見,また雷君と金君が伝授することの至急なることを賛美し,これを序文とする。
光緒九年十一月望日,儘先補用道知衢州府事,楚北劉國光賓臣氏撰。
Re: 『灸法秘伝』序文・ス... 神麹斎 - 2006/03/18(Sat) 10:42 No.20
「見」はむしろ「表示する、しめす、あきらかにする」ではあるまいか。
Re: 『灸法秘伝』序文・ス... 闖薗| - 2006/03/19(Sun) 09:01 No.29
神麹齋先生のご意見をに従いたいと存じます。
内容は刊行者による序文でありますので,「しめす」の方がよりすっきりと劉國光の意思が読み取れると思います。
ありがとうございました。
灸法秘伝凡例1 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/18(Sat) 14:28 No.21
灸法秘傳凡例
一用灸,先審其是何病症,取何穴道,再以病人中指節爲一寸,量準寸分,以墨點其穴,侯灸。
〔訓読〕一。灸を用いるに,先ず其れ是れ何の病症なるか,何の穴道を取るかを審かにし,再び病人の中指節を以て一寸と爲し,寸分を量準し,墨を以て其の穴に點し,侯(ここ)に灸す。
〔訳〕一つ。灸をするにあたって,まずなんの病症であるか,どのツボを取るかを明らかにする。そのうえで,病人の中指の一節を一寸とし,寸分をはかる。墨でそのツボに印をつけ,それから灸をする。
灸法秘伝凡例2 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/18(Sat) 18:59 No.22
一灸法,用生薑一大片,厚二分許,將灸盞之足,釘在薑片之上,照灸盞之孔,將銀針穿通薑片,平放應灸穴上,即將艾絨捏作一團,置於盞内,再上藥料將艾點燃,少頃,則藥氣即可透入,如覺熱甚難禁,可將銀盞提起片時,仍即放下,看盞内藥將燃盡,即取起蜿ヲ換,毎一次換藥三四回,便可收止,毎日或一次,或兩次弗論。
〔訓読〕一。灸法。生薑一大片,厚さ二分許(ばか)りを用う。灸盞の足を將(もっ)て,釘して薑片の上に在らしむ。灸盞の孔に照らし,銀針を將て薑片を穿通し,平らに放(お)き,灸穴の上に應ず。即ち艾絨を將て捏(こね)て一團を作り,盞内に置く。再び藥料を上げ艾を將て點燃す。少頃にして,則ち藥氣即ち透入すべし。如(も)し熱甚だしく禁ずること難きを覺ゆれば,銀盞を將て提起すること片時にして,仍って即ち放下するも可なり。盞内の藥 將に燃え盡きんとするを看れば,即ち取り起こし蜿ヲに換え,一次毎に藥を換えること三四回,便ち收止すべし。毎日或いは一次,或いは兩次,論ぜず。
〔訳〕一つ。灸法。生姜の大きな切片,厚さ二分ほどのものを用いる。灸容器の足を生姜の切片の上に釘を刺すように置く。灸容器の穴にあわせて,銀針で生姜の切片に穴をあけ,平らに置いて灸穴に一致させる。すぐに艾毛をこねて団子を作り,灸容器内に置く。さらに薬物を載せ,艾に点火する。短時間で薬気がすぐに透過進入できる。もし熱すぎて我慢できない場合は,銀の容器をしばらく持ち上げて,それからすぐに降ろしてもよい。容器内の薬物が燃えつきそうになったら,すぐに取り出して別のものに交換する。一回の治療で三四回換えたら,終わりにする。毎日一二回するが,回数は問わない。
〔注〕照 『中国針灸刺灸法通鑑』421頁の引用文は「点」に誤る。
Re: 灸法秘伝凡例2 神麹斎 - 2006/03/18(Sat) 20:26 No.24
あるいは:
平放應灸穴上=応に灸すべき穴の上に平らに放き
Re: 灸法秘伝凡例2 闖薗| - 2006/03/18(Sat) 20:43 No.25
なるほど。「平らに応に灸すべき穴の上に放き」がいいですね。
灸法秘伝凡例3 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/18(Sat) 19:56 No.23
一用灸,宜天氣温和,密室無風之所,焚一爐香,照法用灸。若遇人神所在,不宜灸之,切須忌避,孕婦亦不宜用。
〔訓読〕一。灸を用いるに,天氣温和に宜し。密室無風の所にて,一爐香を焚き,法に照らして灸を用う。若し人神の所在に遇えば,宜しく之れを灸すべからず。切に須く忌避すべし。孕婦も亦た宜しく用うべからず。
〔訳〕一つ。灸は天気が温和な日が適当である。密閉された風が入らないところで香を焚き,灸法にしたがう。もしその日が人神の所在と灸所が一致する場合は,灸すべきでなく,かならず忌避しなければならない。妊婦も灸はしないほうがよい。
〔注〕人神 日時に従い定期的に人神は体内を移動している。その所在にあたる日時には該当箇所には鍼灸は避けるべきであるという古代の鍼灸忌避説。なお,本書では十二時・十二支・十干の人神不宜鍼灸歌などを掲載するが,最後に「急病の際は避けなくともよい」という。
灸法秘伝凡例4 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/18(Sat) 20:53 No.26
灸後,必須靜臥片時,待其藥氣周流於臓腑脈絡之内,自然暢快病出,切切愼風節食,保精養神,爲第一著。
〔訓読〕灸の後は,必ず須く靜かに臥すること片時,其の藥氣の臓腑脈絡の内に周流するを待つべし。自然に暢快たりて病出づ。切切として風を愼み食を節し,精を保ち神を養うを,第一著と爲す。
〔訳〕灸治療を終えた後は,かならずしばらく静かに横臥して,薬気が臓腑脈絡のうちに周流するのを待つべきである。そうすると自然にのびのびと気持ちよくなり病気が出ていく。心をこめて風に当たるのを避け,食物を節し,精気・神気を保養するのが一番である。
〔注〕著 量詞。位次。
Re: 灸法秘伝凡例4 闖薗| - 2006/03/18(Sat) 20:56 No.27
本文,いちばんはじめに「一」を抜かしました。
〔訓読〕一。
〔訳〕一つ。
灸法秘伝凡例5 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/18(Sat) 21:32 No.28
一灸穴,宜審輕重,上體及當骨處,灸宜少,下體及肉厚處,灸多無害。
〔訓読〕一。灸穴は,宜しく輕重を審かにすべし。上體及び骨に當たる處は,灸は宜しく少なくすべし。下體及び肉厚き處は,灸多くとも害無し。
〔訳〕一つ。灸穴は軽重を明らかにすべきである。上半身と骨にあたる部分に対しては,灸は少なくするべきである。下半身と肉厚の部分は,多く灸しても害はない。
以上で凡例は終わりです。このあと,正面図・背面図が続きます。
『灸法秘伝』指節図 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/19(Sun) 11:09 No.30
指節圖
量穴道取寸法。以男左女右手中指第二節,屈指兩紋尖,相去爲一寸,取稻草心,或薄遽セ片,量之,若用繩線,則有伸縮不準。
〔訓読〕指節図。穴道を量り寸を取る法。男は左,女は右の,手の中指第二節,指を屈して兩紋の尖を以て,相去るを一寸と爲す。稻の草心,或いは薄き遽セ片を取り,之れを量る。若し繩線を用いれば,則ち伸縮有りて準ならず。
〔訳〕指節図(長い爪をした右手が雲紋?の上にあり,親指で中指の先端を屈して,DIP関節・PIP関節を示す図あり)。ツボの位置をきめ,寸法をとる方法。男は左手の,女は右手の,中指の第二節を屈曲させ,(第一関節と第二関節にある)二箇所の橫紋の尖端の間の距離を一寸とさだめる。稲の茎か薄い竹の皮を用いてはかる。縄の場合には伸縮性があるので,計測具とするには適さない。
〔注〕草心 草の芯。/ 遽セ ベツ。竹の皮。原書では,この字は「竹」冠+「四マイナス一」+「伐」で構成されているように見えるのですが,該当字が見当たらないので,「遽セ」の異体字と推定しました。/ 準 形容詞。正確である。
『灸法秘伝』灸盞図 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/19(Sun) 21:50 No.31
灸盞圖
古聖用九針,失傳久矣。今人偶用者,不但不諳針法,亦且不熟『明堂』,至於灸法亦然也。今用銀盞隔姜灸法,萬無一失。凡欲用此法者,須莉ソ此樣爲式。四圍銀片稍厚,底宜薄。須穿數孔。下用四足,計高一分許。將盞足釘在生姜片上,姜上亦穿數孔,與盞孔相通,俾藥氣可以透入經絡臓腑也。
〔訓読〕灸盞図(「仰式」と「俯式」の図あり。灸盞は,二つの把手と四足のある鍋状で,底に七~八個の穴あり。おそらく八個。一個は一本の足のかげに隠れていると思われる。以下の説明では「數孔」とある)。
古聖の九針を用いるや,失傳すること久し。今人偶(たま)たま用いる者は,但だ針法を諳(そら)んじざるのみならず,亦た且つ『明堂』にも熟せず。灸法に至りても亦た然るなり。今 銀盞隔姜灸法を用いれば,萬に一失無し。凡そ此の法を用いんと欲する者は,須く此の樣を莉ソ(なら)い式と爲すべし。四圍の銀片は稍や厚くし,底は宜しく薄くすべし。須く數孔を穿つべし。下は四足を用い,計るに高さ一分許(ばか)り。盞足を將(もっ)て釘して生姜の片上に在らしむ。姜上も亦た數孔を穿ち,盞孔と相通ぜしめ,藥氣をして以て經絡・臓腑に透入せしむるべきなり。
〔訳〕いにしえの聖人の九針法は,とおの昔に伝えられなくなってしまった。現代人でたまたま鍼灸をしているものは,針法を暗記してもいなければ,経穴の位置や主治についても習熟していない。灸のやり方にしても同様である。しかし,(本書にある)銀盞を用いた隔姜灸法を使用すれば,万に一つの失敗もない。この方法を使いたいひとはみな,この様式を基準とすべきである。(容器の)四周壁に用いる銀板はやや厚めにし,底板は薄いほうがよい。かならず穴を(底部に)数個うがたなければならない。四本足の容器を用い,だいたい(足は)一分ほどの高さとする。その容器の足を生姜の切片の上に釘のように刺す。生姜にもいくつか穴をあけて,容器の穴と通じ合うようにし,薬気が経絡や臓腑に透過滲入できるようにする。
〔注〕『明堂』 古代の鍼灸書。ツボの位置や主治などを記載する。原本は失われているが,閻ァ穴学書の代名詞として用いられる。/ 在 本書は清末の刊行で,「將」を「以」の意味で多用するなど,口語的な用字・用法が多い。「在」も動詞というより介詞「於」として用いていると考えられるが,訓読は従来通りの動詞として読んだ。
Re: 灸盞図 神麹斎 - 2006/03/21(Tue) 06:07 No.35
図を添付しようとしたのですが、何故だか上手くいきませんので、私のブログに載せました。
http://plaza.umin.ac.jp/~linglan/weblog/
Re: 『灸法秘伝』灸盞・ス... 闖薗| - 2006/03/21(Tue) 10:07 No.36
神麹斎先生,ご協力ありがとうございます。
『灸法秘伝』灸藥神方... 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/22(Wed) 10:37 No.37
()内は,双行。
灸藥神方
艾葉(一錢五分) 硫黄 乳香 没藥 麝香 皂角 枳殻 川闃氏@桂枝 杜仲 全蝎 白闃キ 細辛 松香 雄黄 獨活 穿山甲(以上各五分)
右藥,秤準分兩,各爲末,和丸,固藏,弗洩氣。
〔訓読〕右の藥,分兩を秤準し,各おの末と爲し,丸に和し,固く藏(おさ)め,氣を洩らすなかれ。
〔訳〕右の薬物の重さを量り,それぞれ粉末にし,こねて球状にし,しっかりと貯蔵し,薬物の気を漏らさないようにする。
『灸法秘伝』灸藥神方... 投稿者: 闖薗| 投稿日:2006/03/23(Thu) 22:04 No.38
(方解)艾葉,揉搗如綿,謂之熟艾。熟艾性熱,能通十二經,走三陰。以之灸火,能除百病。硫黄之性,純陽,能援陽氣暴脱,命欲埀危。没藥、乳香通行十二經絡。麝香、皂角宣開上下竅。枳殻破一切氣滯。川闃詩s一切血凝。桂枝調衛和營。杜仲舒筋壯骨,定厥陰之風。全蝎有力,化癰瘍之毒。白闃キ多功。細辛通竅散寒。松香陲ェ風止痛。雄黄殺百毒。獨活捜伏風。更以穿山甲,通行經絡,直達病所,方中諸品無處不行。所以主治諸逍エ。效如桴鼓。
〔訓読〕艾葉,揉み搗(つ)くこと綿の如し。之れを熟艾と謂う。熟艾の性は熱,能く十二經を通ぜしめ,三陰に走る。之れを以て灸火は,能く百病を除く。硫黄の性は,純陽にして,能く陽氣の暴脱して,命の危に埀(なんなん)とせんと欲するを援(たす)く。没藥、乳香は十二經絡を通行せしむ。麝香、皂角は,上下の竅を宣開せしむ。枳殻は一切の氣滯を破る。川闃獅ヘ,一切の血凝を行(めぐ)らす。桂枝は,衛を調え營を和す。杜仲は,筋を舒し骨を壯にし,厥陰の風を定む。全蝎 力有り,癰瘍の毒を化す。白闃キ 功多し。細辛は,竅を通じ寒を散ず。松香は,風を陲ェ(さ)り痛を止む。雄黄は,百毒を殺す。獨活は,伏風を捜す。更に穿山甲を以て,經絡を通行し,病所に直達し,方中の諸品をして處として行らざるは無さしむ。諸逍エを主治する所以なり。效あること桴鼓の如し。
〔訳〕艾葉は綿のように揉み,つきくだく。このようになったものを熟艾という。熟艾の性質は熱であり,十二経脈の流れをよくし,三陰にいく。このため灸の火は多くの病を除くことができる。硫黄の性質は,純陽であり,陽気がにわかに脱出して,生命の危機に瀕した状態から救うことができる。没薬と乳香は十二経絡の気を通行させる。麝香と皂角は,上下にある九竅を開かせる。枳殻は,あらゆる気の滞りを解消する。川闃獅ヘ,あらゆる血の凝滞を解いてめぐりをよくする。桂枝は,営衛の気を調和させる。杜仲は,筋をのびやかにし骨を壮健にし,厥陰の風をしずめる。全蝎には力があり,癰瘍の毒を無毒化する。白闃キには効能が多い。細辛は,九竅を通じやすくし,寒邪を消散させる。松香は,風邪をのぞき,痛みをとめる。雄黄は,あらゆる毒物を解毒する作用がある。独活は,隠れている風邪を探り出(して治療)す。更に穿山甲を使って,経絡のめぐりをよくし,病所に直に達するようにし,処方中の諸品の効能を体のあらゆるところに到達できるようにさせる。これが諸病を治療できる理由である。そのききめは,たちどころに現れる。
〔注〕埀 垂の異体字。/ 全蝎 (尻尾だけでなく)サソリまるごと。『本草綱目』巻40蠍「今入藥有全用者,謂之全蠍」。/ 無A不B AトシテBセザルハナシ。どんなAでもBする。/ 桴鼓 バチとつづみ。打てば響くたとえ。
他覚性耳鳴 投稿者:闖薗| 投稿日:2006/03/07(Tue) 19:50 No.15
張登部主編『難病とどう取り組むか』緑書房 315頁
男性10歳 患者は麻疹にかかり、10日間近く発熱した。そのあと両側の耳に他覚性耳鳴が現れた。その音は時計の音のようにリズムを持っている。……患者の耳元に時計の音と同じようなリズムを持つ音が聞くことができ、その音は心拍とは一致していない。……
編者解説 他覚性耳鳴の一種であり、客観性耳鳴に属し、振動性耳鳴ともいう。しかし臨床ではあまり見られないものである。その特徴は観察者にも耳鳴の音が聞こえ、音の多くは「カチャ」あるいは拍動性雑音である。前者は……
取穴:天井・陽輔・行間(すべて両側)
扁鵲倉公列伝の他覚性耳鳴を思い出したので、引用させていただきました。
句読の質問 投稿者:神麹斎 投稿日:2006/02/23(Thu) 18:17 No.2
少氣者,脈口、人迎菫ア少而不稱尺寸也,如是則陰陽菫ア不足。…補陽則陰竭,寫陰則陽脱。如是者可將以甘藥,不愈,可飲以至齊。…如此者弗灸不已,因而寫之,則五藏氣壞矣。
【楊上善注】如此二皆是虚,可以湯液補者,日漸方愈,故曰不久不已。若不如此,即用鍼寫,必壞五藏之氣也。為不灸於義不順,灸當為久也。
経文だけ見ているぶんには、何も不思議を感じないけれど、楊上善の注を見ると、「如此者弗灸不已」は「如此者弗灸,不已」のつもりではないかと思う。何とも不思議なんだけど、「弗灸不已」で「灸せざれば已えず」と読むというのは、彼の念頭には無いらしい。「不久不已」で「久しからざれば已えず」なら良いみたいですが……。古代漢語の語法から考えて、そういう違いが有るんですかね。それとついでに、「因而灸之」と「因而久之」は、語法的に両方とも可能ですか。
これは『太素』の話なんだけど、今『太素を読む会』の掲示板が停止中なので、ここに書きます。『醫説』鍼灸が終わって、こちらもえらく静かになっちゃったみたいだし。
Re: 句読の質問 古医書 - 2006/02/24(Fri) 08:30 No.3
先生の疑問の内容が,どのようなことがらを念頭に置いておっしゃられているのか,浅学のわたくしにはまったく不明です。申し訳ありませんが,質問させて下さい。
まず最初の問題提起について:
〉「如此者弗灸,不已」のつもりではないかと思う。
楊上善がどのように解釈したつもりか,現代語訳してみていただけないでしょうか。
Re: 句読の質問 神麹斎 - 2006/02/24(Fri) 11:04 No.4
いや実は私自身もちょっと説明不足かとは思ったんですが、続けて書き込むのも何だから、ちょっと待ってました。
甘薬のほうは、「甘薬を飲ませるべきであって、もしそれでは効果が無い場合には、斉(剤)を飲ませてみろ」ということでしょう。少なくとも楊上善はそのつもりです。
(私自身は、今のところ『霊枢』の「如是者可將以甘藥,不可飲以至齊」をとって、「甘薬を飲ませるべきであって、至斉なんてとんでもない」と解するほうが良いと思ってます。)
で、灸のほうですが、「如此者弗灸不已因而寫之則五藏氣壞矣」を、楊上善は「如此者弗灸,不已,因而寫之,則五藏氣壞矣」と句読して、「こういう人に灸をしてはいけない、そんなことをしても治らないし、だからといって瀉したりしたら、五蔵の気を壊滅させてしまう」と解していると思うんです。(私自身はこの解釈に同意しません。)楊上善の注は「こういう二つとも虚していて、湯液で補うべきものは、日々に少しずつ治っていくものだから、不久不已と言うのである。もしこうしたものに、針で瀉法を施したりすると、必ず五蔵の気を壊してしまう。灸をするなというのは、理屈に合わないから、灸ではなくて久とするべきである。」つまり、「灸をするなというのは、理屈に合わない」と批難するためには、「弗灸不已」で「灸せざれば已えず」(灸をしなければ治らない)と読むということは考えてないらしい。「灸をするな」は変だから、「灸ではなくて久とするべき」だと言う。で、「不久不已」なら「久しからざれば已えず」(時間をかけなければ治らない)と読むつもりらしいので、ますます分からない。「不久不已」(久しからざれば已えず)は良いけれど、「弗灸不已」(灸せざれば已えず)は拙いという、語法的な根拠が有るんですかね、というのが私の疑問です。
ついでの質問というのは、人迎脈口倶に三倍以上のときの「如此者,因而灸之,則變易而為他疾矣」も、似たような話なんだと思うけれど、こちらには楊上善も「灸當為久」と言わない、何故だろう、ということです。「因而久之」には、語法的に問題有りますかね。
Re: 句読の質問 神麹斎 - 2006/02/24(Fri) 14:21 No.5
もう一つ書き忘れました。
如此者弗灸不已,因而寫之,則五藏氣壞矣。
これを、『黄帝内経太素語訳』では、どのように現代語訳してますか?
お持ちの人に書き込みをお願いしたい。
Re: 句読の質問 闖薗| - 2006/02/25(Sat) 00:28 No.10
像這種情況,也不能用温陽的灸法。仮如病不見好而誤用瀉法,就会造成五臓之気敗壊。
Re: 句読の質問 闖薗| - 2006/02/25(Sat) 00:31 No.11
なお,掲載原文の句読点は,以下の如し。
如此者弗灸,不已,因而寫之,則五藏氣壞矣。
Re: 句読の質問 神麹斎 - 2006/02/25(Sat) 07:41 No.12
そうなんですよ、楊上善の言い分では原文は、「如此者弗灸,不已,因而寫之,則五藏氣壞矣。」(此の如き者は灸することなかれ、已えざればとて、因りてこれを写せば、則ち五蔵の気壊す)のはずなんですよ。
で、楊上善としては「像這種情況,也不能用温陽的灸法。」(こうした情況には、温陽の灸法を用いることはできない)などいうのはおかしいと考えたから、「為不灸於義不順,灸當為久也。」(不灸というのは意味的に変だから、灸は久とすべきである)と主張している。
だけど、『黄帝内経太素校注』の「如此者弗灸不已,因而寫之,則五藏氣壞矣。」で、「弗灸不已」を「灸せざれば已えず」と訓めるんだったら、楊上善の主張は頓珍漢なことになるでしょう。「灸せざれば已えず」と訓んじゃいけないのかね、という質問なんです。だって、現代中国人のほとんどは「如此者弗灸不已」と句読してますよ、どういうつもりかしら、とね。
それと、うっかりしてましたが、これは『太素』巻十四の人迎脈口診の一部です。
Re: 句読の質問 唐辺睦 - 2006/02/26(Sun) 09:38 No.13
ただね、「灸せざれば已えず」ということ自体に反対して、「久からざれば已えず」とするべきだ、と言っている可能性も全く無いわけでは無い。艾灸は真陰を消耗させるという考え方ですね。
Re: 句読の質問 神麹斎 - 2006/02/26(Sun) 10:02 No.14
少気の患者に甘薬で対処すべきだというのは当然として、それで駄目なら峻劑を試みよと言いながら、艾灸は真陰を傷なうから駄目と言うのは納得できません。
纏足 ふたたび 投稿者:闖薗| 投稿日:2006/02/24(Fri) 17:12 No.6
その形容に「三寸金蓮」の語があり、文字通り10センチほどの足をよしとした。ただ、このような足は労働にはむかないから、多くは遊食階層か、男性の歓楽相手となる女性に限られた。
陳舜臣監修『中国歴史紀行』第五巻明・清96p佐野公治「女性を苦しめた奇習」
Re: 纏足 ふたたび 唐辺睦 - 2006/02/24(Fri) 17:57 No.7
『金瓶梅』は『水滸伝』中の西門慶と潘金蓮の故事から派生したということはご存じですよね。
で、『水滸伝』には居ないのに、『金瓶梅』に登場するものとしては、潘金蓮がらみでは亭主の武大のなくなった先妻に娘が有って、小間使いがわりに使っている。ここのところを日下翠著『金瓶梅』では「作者は、短時間とはいえ金蓮に水仕事をさせるにしのびなかったものとみえる。あるいはこの作者にとって、自分で水仕事をするような下等な女性が恋愛の対象になるということは、考えられなかったのかも知れない。」と解説しています。「この作者」は読書人の端くれで、様々な纏足についての雑事を書き留めたのも、やはりそうしたお仲間で、江湖をすみずみまで解説しているとは限らない。侍女に世話をされ、腋から支えられるようにして歩くのがステイタスであったろうけれど、無論、中流以下ではそうもいかない。無理して頑張って機会をうかがったものも有るだろうけど、早々と諦めて現実的に生きた女性も多かったはずだ。現実には、「纏足が美人の資格の第一?!それどころじゃないよ!!」というのが大多数でしょう。何ごとも、そうそう理屈通りにはいかない。
一寸前まで、世界中に「妻にするなら日本人」という言い方が有ったでしょう。嘘であることは我がもっとも良く知っている。
むかし、マリリン・モンローが来日したとき、全裸で指圧をうけたという話があって、妙に関心したけれど、金髪の女性の誰もがそうするわけでもあるまい。私には欧米人の治療の経験が無いんだけど、経験の有る人にお伺いします。お宅ではそういう眼福に恵まれましたか。