序
以下に、肝炎患者への環境整備を選択する際に、考慮に入れる問題点の例について基本情報を示します。
環境整備に関する問題点を解決するには、患者本人からの意見を得ることが、有効な環境整備結果を達成するための、もっとも基本的な事項です。
まったく同じ環境整備を必要とする患者は2人といないということと、機能障害をもつ患者すべてが環境整備を必要とするわけではないということに注意してお
くことは、非常に重要です。 以下は環境整備の例です。
この文書は教育目的に用いることのみを目的としており、環境整備問題の最終的な解決方法であると見なすべきではありません。
ここに列挙されていない環境整備の例も、もちろんあるでしょう。
それぞれの環境整備例、機能障害患者に関わる法律、問い合わせ先などについての、より詳しい情報は、JAN ( (800) 526-7234) までお問い合わ
せください。
肝炎についての一般的な情報
肝炎とは? (A型、B型、C型についての知識)
肝炎にはいくつかのタイプがあり、感染経路、症状、治療法などがそれぞれ違います。
もっとも一般的なタイプは、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎です。
A型肝炎
以下の情報は疫病管理予防センター (CDC) の国際感染症局の
A型ウイルス肝炎FAQからの引用です
(CDCの著作物はパブリックドメインとなっています)
http://www.cdc.gov/ncidod/diseases/hepatitis/a/faqa.htm
A型肝炎は、もっとも症例の多い肝炎です。
この病気は、A型肝炎ウイルス (HAV) に感染することで発生します。
感染経路
HAVは家族との接触や性行為、あるいは汚染された水や食料の摂取といった、糞口経路で感染します。
血液感染はまれです。 患者と親しい関係にある人は、感染の危険が高まります。
CDCと保健社会福祉省は食品を扱う業務を通して感染する恐れのある病気のリストを公開しています。
A型肝炎は、感染者が食品を扱ったあとに、病原菌が感染力を保つ病気のひとつに挙げられています。
A型以外の肝炎が、食料によって感染することはありません。
症状は慢性的ではなく、20日から50日の潜伏期間があり、重症の場合入院が必要なこともあります。
ほとんどの場合、3週間くらいで回復し始めますが、最長で6カ月目くらいまで、症状が再発することもあります。
症状
疲労、吐き気、黄疸、発熱、腹痛を始めとする症状があります。
治療と予防
現在のところ治療法はありませんが、A型肝炎ワクチンによって予防が可能です。
衛生環境の向上も、予防に効果があります。
B型肝炎
以下の情報は疫病管理予防センター (CDC) の国際感染症局の
B型ウイルス肝炎FAQからの引用です
(CDCの著作物はパブリックドメインとなっています)
http://www.cdc.gov/ncidod/diseases/hepatitis/b/faqb.htm
B型肝炎は肝臓を害するウイルスによって起こる、重い病気です。このウイルスは、B型肝炎ウイルス
(HBV) と呼ばれ、生涯にわたって感染症、肝硬変、肝臓がん、肝機能障害を起こし、死亡することもあります。
感染経路
HBVは、感染者の血液や体液への接触によって感染します。
このウイルスが食品、飲用水、通常の接触によって感染することはありません。
症状
黄疸、疲労、腹痛、食欲減退、吐き気、嘔吐をはじめとする症状があります。
治療と予防
B型肝炎に治療法はないので、予防する事が非常に重要です。
B型肝炎ウイルスワクチンが、最良の予防手段です。
C型肝炎
以下の情報は疫病管理予防センター (CDC) の国際感染症局の
C型ウイルス肝炎FAQからの引用です
(CDCの著作物はパブリックドメインとなっています)
http://www.cdc.gov/ncidod/diseases/hepatitis/c/faq.htm
C型肝炎はC型肝炎ウイルス (HCV) が起こす肝臓病です。
感染経路
HCVは傷口への接触や汚染された血液によって感染します。
症状
黄疸、疲労、吐き気、食欲減退、腹痛、嘔吐をはじめとする症状があります。
C型肝炎ウイルスへの感染例
不法薬物
ないし通常の薬物の注入に用いる注射器がHCV感染血液によって汚染されていた場合
HCV感染者から、輸血、血液製剤、その他の臓器提供を受けた場合
長期間の腎臓疾患により、知らないうちに、他人の血液が付着した機器を利用していた場合
職業上血液に触れる機械の多い医療従事者など (事故で手を傷つけるなど)
HCV感染者と性行為を行った場合 (まれ)
HCV感染者と、かみそりや歯ブラシなどを共用していた場合
HCVが、くしゃみ、抱擁、せき、食品や飲用水、食器の共用、通常の接触で感染することはありませ
ん。 HCV感染を理由に、職場、学校、娯楽場、子供の世話、その他の場から患者を排除すべきではありません。
HCV感染者100人あたり約85人は長期的な感染症に進行し、70人は慢性的な肝臓疾患に進行し、
15人は肝硬変に進行し、5人は長期的な感染症の結果死亡します。
治療と予防
HCVの治療には、インターフェロンなどの抗ウイルス薬や、インターフェロンとリバビリンの併用など
が考えられます。 治療が有効なのは、10〜40%です。 副作用には、インフルエンザに似た症状などが考えられます:
発熱、悪寒、頭痛、筋肉や間接の痛み、心拍数の上昇など。 継続的な治療が必要になることもあります。
また、疲労、頭髪の減少、精神不安定、抑うつなどの症状が誘発されることもあるます。
さらに、リバビリンとインターフェロンの併用治療では、貧血 (赤血球減少) を引き起こすこともあります。
C型肝炎と保健医療従事者
疫病管理予防センター (CDC) の国際感染症局のC型ウイルス肝炎FAQからの引用です
(CDCの著作物はパブリックドメインとなっています)
http://www.cdc.gov/ncidod/diseases/hepatitis/c/faq.htm
HCVに汚染された血液の付着した針からの感染リスクは?
針や鋭利物にHCV陽性の血液が付着していた場合、100人中およそ2人 (1.8%) の保健医療従事
者がHCVに感染しています (0%〜10%の範囲内) 。
HCVに感染した保健医療従事者の職務は、制限するべきか?
制限するべきではありません.HCVに感染した保健医療従事者の職務を制限するべきだという推奨は
(疫病管理予防センターからは) 一切なされていません。 保健医療従事者から患者への感染の危険性は、非常に低いようです。
すべての保健医療従事者に推奨されているのと同様に、HCV陽性の医療従事者にも、手洗いの適切な実施、厳重な殺菌技術の適用、隔離度の維持、針や鋭利物
などの慎重な廃棄をはじめとする、標準に基づいた予防措置が必要です。
職場環境整備の際に考慮
すべき問題点
症状、医学的な特徴について
1. 患者の診断結果は?
A型肝炎
B型肝炎
C型肝炎
2. 患者に見られる機能障害は?
疲労
インフルエンザに似た症状
吐き気
食欲減退
腹痛ないし嘔吐
黄疸
認知障害
治療薬の副作用
心理学的な障害
3. 医師に禁止されている事項はあるか?
職務や日常生活について
1. どのような職業に従事していますか?
事務員、
肉体労働者、セールス、専門職、医療関係者、教員など。
2. どのような職務を受け持っており、機能障害によって困難になるのはどのような仕事か?
疲労のた
め職務の遂行が困難
肉体的緊張を伴なう職務
計画的な職務
どのような職務機能に機能障害による困難があるのかについてはっきりとしたイメージを得るのに十分なだけの質問をする
3. 普段、どのようにして職務をこなしているか?
どのように職
務を行っているのかについてはっきりとしたイメージを得るのに十分なだけの質問をする。
たとえば、利用可能な機器、実際に利用した機器、仕事のやり方など。
4. 薬物療法は職務機能の向上に効果をあげているか?
疲労に伴
なう問題
吐き気
職務への集中の困難
発熱
頭痛
筋肉ないし関節の痛み
5. すでに実施済みの環境整備は (あれば) ?
6. 管理職職員や、場合によっては同僚職員への教育は必要か?
患者の職
務に影響を与える機能障害などについての一般的な教育が、職場環境の改善につながることがある。
その場合、機能障害を持った人が特定されてしまうようなやり方は避けるべきです。
多くの場合、機能障害への一般的理解の第一歩として教育を行うのが最善です。
肝炎患者への環境整備例
以下のリストは、環境整備実施のヒントの一例です。
さらに詳しい情報については、JANまで問い合わせてください。
肝炎患者への環境整備は、その性質から、職務を通常どおりに行う方法についての環境整備案の方が、機
器の導入よりも頻繁に行われます。
疲
労ないし虚弱がある場合
柔軟な休暇取得
たとえば、疲労の症状や病院の予約を取る必要がある場合、環境整備として休暇の取得を検討しま
す。 傷病休暇や年次休暇の使用を認めるという案もあります。 休暇を使い切っていた場合は、無給の休暇を追加します。
スケジュール調整
環境整備の例としては次のようなものがあげられます、出社ないし退社時間の調整;
勤務時間中に途中休憩をもうける; 勤務時間を減らして勤務日数を増やす; あるいは
パートタイムの勤務スケジュールにするなど
職場への通いやすさ (スロープ、駐車場など)
頻繁な休憩
激しい運動を避ける
立っ
たり座ったりすることを柔軟に認める (調節機能つきの座席)
寝台つきの休憩所を用意する
ジョブシェアリング
認
知障害がある場合
指示を書面で与え、仕事に優先順位をつける
職務をなるべく秩序だてる
手帳ないし電子手帳を利用する
気を散らす要因を最小限におさえる
心
理学的な障害がある場合
(機能障害への対応、ストレス、その他)
ストレスの原因を特定し、ストレスを軽減する
同
僚への教育を行う (ただし患者の症状は秘密にしておく)
情緒的支援を得るために電話をかけることを認める
上司に対するオープンドアの方針
カウンセリングやセラピーのために時間を取ることを認める
誉めたり、肯定的な情報を与える
そ
の他
自宅勤務の選択
配置転換
配置転換は、一般に、患者が担当の役職に不可欠な職務機能を、環境整備をしても果たすことができ
なくなってから検討します_
肝炎患者
への環境整備について相談したい場合は、下記までお問い合わせください:
肝炎に関する情報源
(完全なリストではありません)
他のインターネット資料:
http://www.hepatitisdoctor.com/
http://hepatitis-central.com/