民間の雇用主、州政府、地方自治体、公共施設は、アメリカ障害者法(Americans with Disabilities Act、ADA)や同様の市民権擁護法に基づき、効果的なコミュニケーションが行われることを確実にするために、耳の聞こえない人や耳の不自由な人のために手話通訳を雇うことを検討する必要がある。 アメリカ障害者法に基づき、雇用場所や、政府機関によって公共サービスが提供される場面で、および物品やサービスが公共施設で提供される場合に、効果的なコミュニケーションを提供するための要求事項が存在する。 アメリカ障害者法は、効果的なコミュニケーションを行う方法として、通訳を提供しなければならないと具体的に述べてはいないが、どんな場合に通訳が環境整備として適切な選択肢であるか、見極めることが肝要である。
効果的なコミュニケーションの提供を支援するために、通訳を同席させるべきか否かを決定する際に、以下の手引きが有益である。 JAN(Job Accommodation Network、JAN)の出版物は情報提供を目的とするものであり、法律上の助言と考えるべきではない。 本文で表明される意見は、必ずしもJAN職員の意見を表すものではない。 もし法律上の助言が必要ならば、然るべき政府公認の機関に連絡をとるか、弁護士または法律の専門家を訪ねていただきたい。
ADA Title I、Employment
アメリカ障害者法、表題Iは、15名以上の従業員を雇用する民間雇用主に適用し、米国雇用機会均等委員会(U.S. Equal Employment Opportunity Commission、EEOC)によって執行される。 http://www.eeoc.gov
TitleTに基づき、手話通訳者は、環境整備として、必要に応じて随時提供することができる。 通訳は、耳の聞こえない人や耳の不自由な人が雇用機会均等から恩恵を受けられるように、民間の雇用主によって提供される。 どの環境整備でも同じだが、通訳は環境整備が雇用主にとって過度の困難とならない範囲で提供すればよい。 アメリカ障害者法、Technical Assistance Manual for Title I、Chapter 3.9のなかで、EEOCは、過度の困難を「雇用主の規模、利用可能な資源、業務の特徴との関連で『かなりの困難または支出』」を要する行為」と定義している
よくある質問
アメリカ障害者法または類似する市民権擁護法に従い、雇用主は雇用環境整備として通訳を提供しなければならないか
EEOCによれば、そうすることが過大な困難とならない限り、雇用主は環境整備として資格のある通訳を提供しなければならない。 アメリカ障害者法、Technical Assistance Manual for Title I、Chapter 3.10.9を参照のこと.http://www.jan.wvu.edu/links/ADAtam1.html。
雇用主は、個人が仕事を効果的に遂行し、雇用機会均等から恩恵を受けることを可能にする環境整備を提供する義務がある。 必要な環境整備の種類を検討するときは、雇用主は遂行される個別的仕事と関連して、個人のコミュニケーション・ニーズを判断すべきである。 効果的なコミュニケーションは、例えば、メモ書き、コンピュータ支援による記録、リアルタイムの字幕、またはコミュニケーション用具といった代替方法を通じて実現することができる。
雇用主は必要とされるコミュニケーションの種類の長さと複雑度を考慮しなければならない。 例えば、新入社員や現行社員に医療補助を通知する場合や懲戒処分を討議する場合など、コミュニケーションが本質的に複雑ならば、資格のある通訳を同席させることが、従業員と雇用主の双方にとって得策となろう。 情報の誤った伝達が重大な結果につながりかねない場面では、効果的なコミュニケーションが行われることが絶対的に必要である。 しかしながら、日常会話については、通訳を同席させることは必要でないかもしれない。 メモ書き、Eメール、インスタント・メッセージ(IM)などを通じた文字によるコミュニケーションで、効果的なコミュニケーションが十分可能であろう。
個人の主たるコミュニケーションがアメリカ手話(American Sign Language、ASL)や、その他の形態の手話、口頭通訳を使って行われるような場合は、通訳を提供することが必要になるだろう。 耳の聞こえない人のなかには、自分の一次言語ほど英語を知らない人がいるかもしれない。 その様なケースでは言葉の壁が問題となる。 スペイン語やフランス語を第一言語とする人とのコミュニケーションと同様の状況であると考えてください。 結果的に言語障壁が生じると、個人は英語を読んだり書いたりすることができないため、メモ書きが効果的な環境整備でなくなる可能性がある。
応募者が面接時に通訳を要望した場合、雇用主は環境整備の費用を支払わねばならないか
資格のある通訳者をつけることが合理的な環境整備ならば、答えはイエス。雇用主はかかる環境整備を提供する費用を負担する責任を負う。 EEOCによれば、環境整備費用の負担が雇用主に過大な困難を課さない限り、雇用主は本来的に環境整備費用を負う義務がある。 雇用主は、適切ならば、環境整備費用の支払について、国の社会復帰リハビリテーション・サービス(Vocational Rehabilitation Service)などの事業体に援助を請うことができる。
応募者から通訳の要請があったときは、雇用主は出願と面接時に通訳をつけることを検討しなければならない。 出願および面接時の効果的なコミュニケーションは、面接の成功にとって不可欠である。 通訳をつけることは、コミュニケーションが円滑かつ快適に進行する可能性を高める。 雇用主は実際にどのような効果的な環境整備を提供するか決定する権利をもっている。 もし通訳が合理的な環境整備と見做されないと決定すれば、雇用主は、代替方法が効果的である限りで、代替コミュニケーション法の提供を選択することができる。
雇用主は、アメリカ障害者法に基づき、研修や会議に出席する従業員に通訳をつけることを義務づけられているか
アメリカ障害者法、Technical Assistance Manual for Title I、Chapter 7.6によれば、「障害をもつ被雇用者は職務遂行能力を向上させるための訓練に参加する均等な機会と、昇進の機会を与えられなければならない」。 環境整備が過大な困難でない限り、合理的な環境整備を図る必要から、訓練機会を否定することはできない 雇用主は、研修や会議へ出席する従業員のために合理的な環境整備として、通訳を提供する義務を負う。
雇用主が例えば職業学校など、外部の訓練機関と契約を交わしている場合は、雇用主は訓練団体と事前に協定を結び、誰が通訳を提供するか決めなければならない。 訓練が雇用主によって要求または提供される場合は、雇用主が環境整備の手配を率先して引き受けるべきである。 状況によっては、雇用主と訓練団体の双方が環境整備にかかる費用を支払う義務を負う。 例えば、職業学校はアメリカ障害者法、表題IIIの効果的なコミュニケーションを提供する義務を負う場所または公共施設と見做される。
訓練中に環境整備を提供する義務に関する詳しい情報については、質問番号15を参照されたい: アメリカ障害者法における適切な環境整備と過度の困難:http://www.eeoc.gov/policy/docs/accommodation.html
ADA Title II、州政府および地方自治体政府のプログラムとサービス
ADA Title IIは州政府または地方自治体政府(公共団体)の運営するプログラム、活動、サービスに適用し、米国司法省によって執行される。 http://www.usdoj.gov/crt/ada/enforce.htm#anchor218282
よくある質問
公共団体の運営するすべての施設とプログラムは誰にでも利用しやすいものでなければならないか
Title IIの公共団体には、プログラムとサービスが障害をもつ個人にとって利用しやすいものであることを保証する要求事項がある。 基本的に、すべてのプログラムとサービスは、障害をもつ個人にとって容易にアクセス可能で、かつ利用可能であるものとする。 しかしながら、必らずしもすべての施設がアクセス可能であることを要求されるわけではない。 この要求事項は「プログラム・アクセスビリティ」として知られる。 例えば、税担当部門が提供するプログラムとサービスが容易にアクセス可能で、かつ利用可能である限り、各税務担当室が障害をもつ個人にアクセス可能であることは義務づけられていない。
公共団体は、依頼された補助支援や一般的に好まれる補助サービス(環境整備)を提供しなければならないか
アメリカ障害者法、Technical Assistance Manual for Title II、7.1100によれば(http://www.usdoj.gov/crt/ada/taman2.html)、公共団体は個人に希望する環境整備を表明する機会を与え、表明された選択を優先的に考慮することを義務づけられる。 もし同様に効果的な環境整備の手段が利用可能ならば、あるいは個人の一次選択が公共団体に過大な負担を課すようならば、公共団体はそれに代わる効果的なコミュニケーション手段を提供する権利をもつ。 環境整備の提供が「プログラムや活動の特徴、あるいは過度の資金負担及び管理負担に根本的な変更を引き起こす」ことを公共団体が立証できれば、結果として過大な負担が生じることになる (II-5.1000 http://www.usdoj.gov/crt/ada/taman2.html )
障害をもつ個人が環境整備の費用を請求されることはあるか
公共団体は環境整備を提供する費用について、障害をもつ個人に請求したり、追加料金を課すことはできない。 (II-3.5400 http://www.usdoj.gov/crt/ada/taman2.html )
Title II of the ADAに基づき、通訳者を環境整備として提供しなければならないか
効果的なコミュニケーションは義務だが、特に通訳が求められているわけではない。 アメリカ障害者法に基づき、通訳は効果的なコミュニケーションまたは均等なアクセスを提供する1つの手段となりうる。 この他にも代替案と見做すことのできる効果的なコミュニケーション法があるかもしれない。 通訳がより効果的なコミュニケーション方法であると決定するには、個人のコミュニケーション技能のみならず、コミュニケーションの長さと複雑度を評価することが必要である。 詳しい説明については、以下の抜粋を参照されたい。
通訳が提供される場合、その通訳は認定されていなければならないか
ADA Technical Assistance Manual for Title IIは、資格のある通訳(qualified interpreter)を提供しなければならないが、必ずしも認定通訳者(certified interpreter)でなくともいいことを明確にしている。 Section 7.1200は、有資格通訳者を次のように記述している。「。。。。。通訳者が必要とされる場合は、公共団体は資格のある通訳、すなわち、聞き手が話していることを耳の聞こえない人に手話で伝え、耳の聞こえない人が手話で話していることを聞き手に声に出して伝えることのできる通訳を提供すべきである。 コミュニケーションは、必要な専門化された語彙の使用を通じて、効果的に、正確に、かつ公平に伝えられなければならない」 (II-7.1200 http://www.usdoj.gov/crt/ada/taman2.html )
ADA Title III、公共施設
Title IIIは公共施設として知られる事業体に適用する。 例えば、ロッジング、レストラン、医療施設、小売店、銀行、教育機関、レクレーション施設、許認可団体といった場所。 Title IIIは米国司法省によって執行される。
http://www.usdoj.gov/crt/ada/enforce.htm#anchor218282
よくある質問
公共施設は耳の聞こえない人や耳の不自由な人に通訳を提供しなければならないか 例えば、医師は耳の聞こえない患者に通訳を提供しなければならないか
障害をもつ個人に財やサービスに均等なアクセスを与えることが必要な場合、そうすることが過大な負担やサービスの変更をもたらさない限り、公共施設は補助的支援とサービスを提供しなければならない。 公共施設には効果的なコミュニケーションを提供する義務がある。 通訳を提供する決定は、個人のコミュニケーション技能のみならず、交わされるコミュニケーションの長さと複雑度に基づいて行われる。 Title III、Chapter 4は次のように述べている。「均等なアクセスを提供するために、公共施設が効果的なコミュニケーションを保証することが必要な場合は、利用可能な然るべき補助的支援とサービスを行わなければならない。 効果的なコミュニケーションを保証するために必要な補助的支援またはサービスの種類は、コミュニケーションの長さと複雑度に応じて変わる」 (III-4.3200 http://www.usdoj.gov/crt/ada/taman3.html)
公共施設は、アメリカ障害者法に基づき、環境整備として通訳者をつける費用を支払わなければならないか
アメリカ障害者法に基づき、公共施設に対して環境整備として通訳者を提供するよう要請が出されたならば、公共施設は通訳者を提供できるか否か決定しなければならない。 もし公共施設が通訳者を提供すると決定したなら、そのときは、公共施設は環境整備として通訳者を提供することに関連する費用を支払う責任がある。 米国司法省(DOJ)によれば、障害をもつ個人が自分自身の通訳者を供給する場合、個人は公共施設に通訳者費用の支払いを期待することはできない。 例えば、個人が予約して医者の診察を受けに行くときに通訳を連れて行くが、事前に環境整備として通訳を要請していない場合は、個人が通訳サービスの費用を負担しなければならない。 公共施設は環境整備を提供する費用をカバーする目的で、障害のある個人に追加料金を課すことはできない。
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