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障害のある教員・
教育関係者への職場環境整備
Job Accommodation
Network
1-800-526-7234 (V/TTY)
http://www.jan.wvu.edu
米国労働省障害者雇用政策オフィスのサービス
序
アメリカ障害者法 (ADA) にあるように、障害を抱える人たちへの適切な環境整備に対する理解が求められつつ あります。 適切な環境整備の知識は、企業にとって、障害者を雇用し、昇進させるための助けとなるでしょう。 機能障害を持つ人への環境整備は困難であるという誤解を持っている企業もあります。 しかしながら、その考えは必ずしも正しくはありません。 環境整備は、大抵は、費用が安く実行も簡単です。 Job Accommodation Network (JAN) が収集したデータでは、機能障害患者のために環境整備をした企業は、収支面で実質上利益を得ているという結果を示しています。 報告書によると、環境整備全体の3分の2は費用が500ドル以下であり、調査対象企業の半分以上が5000ドルを超える効果を報告しています。
障害のある教員・教育関係者の環境整備を考えるとき、そのプロセスは個別対応を基本に管理しなければなりませ ん。 その人固有の能力や機能制限を考慮し、問題のある業務を特定すべきです。 機能制限と環境整備はその人ごとに異なります。 たとえ同じ機能障害をもつ患者であっても、必要な環境整備には違いがあることがあります。 すべての患者が職務遂行に環境整備を必要とするわけではありませんし、必要な場合も、ごく簡単なものが大半であるということに注意します。 また、ADAはすべての機能障害を対象にしているわけではありません。
ADAによれば、障害者とは次のような人をいいます:
主要な生活活動を有 意に制限する身体的または精神的な障害を持つ者で;
前項にあてはまる障 害の記録がある; または
そのような障害があ ると見なされる者。
この法律とEEOC (雇用機会均等委員会) の規則により、企業に要求される適切な環境整備の一般的な類型が示 されていますが、状況によっては別の環境整備法が適切である場合もあります。 また、適切な環境整備とは、それが状況に適った成果をあげている限り、必ずしも最大限の環境整備である必要はありません。
以下はADA技術支援マニュアル (Title I, Section 3) からの環境整備例の引用です:
障害を持つ人が利用 しやすいように設備を整える;
付随的な職務機能の 分担を見直すことにより、職務内容を再構成する;
主要な職務機能につ いて、職務遂行の時間や方法を変更する;
パートタイム化もし くは勤務スケジュールの調整をする;
機器や装置を導入な いし調節する;
試験、教材、方針の 変更する;
資格をもった読み上 げ補助者や説明補助者を確保する;
空職ポストへ配置転 換する;
治療の必要に応じ て、未消化の有給ないし無給休暇の使用を認める;
運動障害患者には、 駐車場を確保する;
雇い主が提供する義 務のない機器や装置を、患者自身が用意することを認める。
環境整備の決定、実行、継続に際して 考慮すべき問題点
1. どのような症状や機能制限が見られるのか?
2. 機能制限は患者ないし患者の職務遂行にどの程度影響を与えているのか?
3. 機能制限のために特に問題が出る職務は何か?
4. 問題を避けるために、どのような環境整備が利用可能か? 環境整備の候補案を決定する際に、Job Accommodation
Networkなどのリソースはすべて活用されているか?5. どのような事故の恐れがあり、それに対してどのような解決策をとり得るか?
6. すでに実行中の環境整備の効果を評価し、他の環境整備が必要かどうか判断するための、機能障害患者との定期的な打ち合わせ
行われているか?7. 実行予定の環境整備法は、機能障害の肉体的な面だけでなく、心理学的な面への対応も支援するものであるか?
機能/運動に関する事項
(注意: 以下の環境整備案は、代表的な職務上の問題や機能制限の一例にすぎません。 すべての機能障害患者が職務遂行に環境整備を必要とするわけではなく、必要な場合も、ごく簡単なものが大半であるということにも注意してください。 もちろん、環境整備は個別対応を基本に決定する必要があります)教室の前に立つことが困難な場合
立ったり座ったりしやすいいす
抗疲労床材、クッションカーペット
高いすを使う
頻繁に立ったり座ったりする
教師が座ってもすべての生徒に見えるように座席を配置しなおす。 例。 半円状にするかがんで生徒を指導することが困難な場合
必要に応じて生徒が教師のところにきてもらうようにする
教務補助具や教育実習生の手を借りる
学生に手伝ってもらう。
かがんで物をとったり、ファイルを手に取ったりすることが困難な場合
自動の棚やファイリング装置を利用して、ボタンを押せば物が適切な高さに運ばれてくるようにする
よく使うものは手が届きやすい棚や引出しにしまっておく
必要に応じて、学生に手伝ってもらう長い時間机に座っていることが困難な場合
調節機能つきの、人間工学に即したいすを使う
授業中に姿勢を変更できるよう、高さを調節できる机を使う
頻繁な休憩をもうけて身体を回復させ、姿勢を変更できるようにする運動障害のために教室内での移動が困難な場合
場所や状況に応じて適切な援助が得られるようにする
通路を通りやすいよう、障害物を置かないようにする
床面の整備。 水平で滑りにくいものでなくてはならない。 じゅうたんを敷く時は、1/2インチ以下の厚さで、安全のために裏面に固定パッドを取り付ける必要がある。板書が困難な場合
チョークを持つために書字補助具
PCプロジェクターを使う
オーバーヘッドプロジェクター筆記が困難な場合
筆記用具を持つための書字補助具
頻繁に休憩を取って身体を回復させ、同じ仕事が連続して続かないようにする
定規、クリップボード/紙どめ、線が浮き出て見えるタイプライターと紙キータイプが困難な場合
キーガード
音声認識ソフトウェア
障害者向けキーボード
その他の入力装置.....ヘッドスティック、スキャン機能、その他...
ひじ当て
肘置きつきのいす
頻繁に休息を取るもしくは配置転換する
感覚に関する事項
(注意: 以下の環境整備案は、代表的な職務上の問題や機能制限の一例にすぎません。 すべての機能障害患者が職務遂行に環境整備を必要とするわけではなく、必要な場合も、ごく簡単なものが大半であるということにも注意してください。 もちろん、環境整備は個別対応を基本に決定する必要があります)視野狭窄のためにコンピュータの画面を見ることが困難な場合
大型モニタ
取り付け式の拡大機 (今あるモニターに取り付けられるもの)
画面を拡大するソフトウェア
フィルターを使ってちらつきを押さえ、窓にブラインドを取り付けて光の当たり方を調節する
解析度、コントラストが高く、ちらつきのないモニター
視野狭窄のために印刷物を見ることが困難である場合
携帯用/スタンド式/メガネ式の拡大鏡
閉鎖回路テレビ装置
電子拡大機
コピー機による印刷物の拡大
手元照明
頭上の照明や窓からの強い光線を避ける...
頻繁に目を休める全盲のためコンピュータ画面からの情報を得られない場合
コンピュータ画面読み上げソフトウェア
点字ディスプレイ
読み上げ補助者 (事務員など)全盲のため印刷物を読めない場合
光学的文字認識システム
読み上げ補助者ないし助手を使う難聴や失聴のために他者との意思疎通が困難である場合
補聴器 (FM、インフレア、パワーループ)
コンピュータのリアルタイムキャプションないしPCプロジェクター
補聴器を用いる
読唇を助けるため、配置や照明に注意する
教室のドアと窓を閉める、じゅうたんや防音板・防音天井などを設置する、空調や暖房機からの空気音を減ら すことなどによって、雑音を減らし、音響環境を整える
筆談
読み上げ補助者
電子メール (コンピュータを使う)ビデオテープから情報を得られるようにする場合
可能であればクローズドキャプションを利用する (新型のテレビ、デコーダがある場合)
補聴器を使う
もしビデオにクローズドキャプションがついていなければ、キャプションを追加する
聴覚障害のために電話での意思疎通が困難な場合
文字電話
拡声器付き電話、ヘッドホンや携帯用器具などを用いて音を大きくする
取次ぎをする
火事や緊急信号がわからない場合
視覚による警報信号を追加する
バイブレーション機能つきのポケベル
警報が鳴ったときに生徒や他の教員に知らせてもらう他の人が聞こえるよう大きな声で話せない場合
携帯用の拡声機
筆談用のコミュニケーションボード
会話量を減らすために合図を使う。アレルギー・化学物質過敏症
(注意: 以下の環境整備案は、代表的な職務上の問題や機能制限の一例にすぎません。 すべての機能障害患者が職務遂行に環境整備を必要とするわけではなく、必要な場合も、ごく簡単なものが大半であるということにも注意してください。 もちろん、環境整備は個別対応を基本に決定する必要があります)チョークアレルギーの場合
オーバーヘッドプロジェクターを使う
PCプロジェクターを使う
ホワイトボードを使う
大型のクリップボードを使う
換気をよくする、空気清浄機を利用する洗剤、タバコ、殺虫剤、香水、塗料、じゅうたん、その他の室内物質に対する過敏症の場合
空気清浄機の利用
可能な範囲で過敏症のもとになる物質を避ける
過敏症を誘発することが少なく、毒性のない塗料や洗剤に変更する
現在のじゅうたんを取り外す、交換する、消毒するなどし、毒性が少ない設備や器具を選ぶ
換気を良くする
対応策が取れるように、ペンキ塗りや殺虫剤の使用を事前に知らせる
化学物質過敏症の特徴や、香水の環境への影響を他の労働者に教育する
作業室や駐車場などから離れたところに職場を移動する心理的・神経的な事項
(注意: 以下の環境整備案は、代表的な職務上の問題や機能制限の一例にすぎません。 すべての機能障害患者が職務遂行に環境整備を必要とするわけではなく、必要な場合も、ごく簡単なものが大半であるということにも注意してください。 もちろん、環境整備は個別対応を基本に決定する必要があります)ストレス、感情、変化をコントロールすることが困難な場合
ストレスを感じたときには代理教員の援助を受ける
オープンなコミュニケーションができるよう、上司や同僚の支援を得る
カウンセリングやストレス管理支援講座のための時間をとる
教える科目数を制限する。 (一科目か二科目に専念する)
教室の生徒数を制限する
授業時間を毎日決まった時間に設定する
教室の移動をしなくてもいいように、受け持ちの教室を設定する
ストレス管理法を有効に利用する
沈静音楽や環境音楽を聴いて、書類処理をしている間の騒音が気にならないようにする
新しい業務を身につけるための時間をとったり、講習を受けたりする
情緒的な支援を得るために電話をすることを認める
職場、生産性水準、環境整備の効果などについて話し合いの機会をもつ...
事前に問題解決計画を立てておく
職務上期待される責任と、それを果たせない場合どうするかを明確にしておく計画的な行動、職務継続、書類処理、時間管理に関する困難
電子手帳、ペースセット、メモ記録機、管理ソフトウェア、カレンダーなどの管理機器...
教室の移動をしなくてもいいように、受け持ちの教室を設定する
授業時間を毎日決まった時間に設定する
色分け: ファイル、書類、本など...
詳細な指導計画や要領をつくる
教える科目数や授業数を制限する
大きな職務は複数の小さな職務や段階に分ける環境整備の例
JANの問い合わせ者の機密性を保持するために、以下のシナリオは
JANのケースに編集を加えたものと不特定の状況を想定したものとなっています。ある注意欠陥障害患 者の高校のガイダンスカウンセラーは、職場の外からの騒音によって集中できなかった。 学校は騒音を減らすために、電話を光で知らせるようにし、防音装置をつけ、ホワイトノイズを発生させるためのファンをとりつけた。 この整備は非常にうまくいき、費用は600ドル以下だった。
あるカウンセラー は、失読症のためにキーボードを打つことと書面の事例を読むことができず、コンピュータで音声識別プログラムを使うことで環境整備をした。 コストは合わせて250ドルであった。
ある大学の社会福祉 講師は、慢性疲労症と精神障害のために。 時間どおりに出勤したり、負担の大きい職務をこなしたりすることが困難であった。 環境整備のため、職務を次のように再編成した。 自分のペースでの職務遂行、フレックスタイム、他の職員との職務の入れ替え。 環境整備費用は0ドル。
ある公立小学校の6 年生の担当教員は、注意欠陥障害であった。 その結果、書類処理、職務の継続、教えている科目への集中、時間どおりの出勤、時間の適切な管理などに問題があった。 現在、計画的行動やスケジュール管理などを助ける、日程管理カレンダーのソフトウェアを使用している。 また色つきシールを貼ったフォルダーをケースに入れて持ち歩いており。 メモやノートもこのケースの中に入れている。 同僚へのサポートも行った。 整備のためのおおよその費用は40ドルであった。
ある公立学校の 事務職員は、聴覚障害のため電話での意思疎通が困難であった。 拡声器が有効だったので、購入したところ、非常に効果が高いようである。 報告によると、かかった費用は約90ドルで、有能な職員を維持することができ、新しい職員を訓練するコストをかけずにすんだという。
ある教務助手は、重 い障害をもった子どもを介助していて背中を痛めた。 そのために、子どもがトイレに行ったり教室からセラピーに移動したりするのを援助するのが非常に難しくなった。 彼女は長期的な理学療法を受けるために融通の利くスケジュールにしてもらった。 現在、子どもを持ち上げるためのリフトの導入を検討している。 リフトのおおよその費用は6400ドルである。
ある用務員は視野狭 窄のためコンピュータ画面の情報を読むことが困難であった。 拡大器が有効であったので、安価な画面拡大ソフトウェアを購入した。 報告によれば、この整備は有効で、保険費用、新しい労働者を雇うにあたっての用務員への補償金など1000ドルから5000ドルが浮いたとしている。
あるかかとに障害を 持った教師は、階段の上り下りに大きな制約があった。 環境整備のため、学校は一階建ての別の校舎へ配属しなおした。 全体の整備費用は0ドルで、雇用者側も被雇用者側もこの整備に大変満足しているという。
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