序
JANは、機能障害を抱えた、潜在的な職務能力のある労働者の、新規雇用や失業の防止を実現するため
の情報ネットワークであり、相談窓口でもあります。
企業、リハビリテーション専門家、そして機能障害患者自身が、興味や必要のある事柄をJANの人間工学コンサルタントに問い合わせ、環境整備問題解決のた
めの提案を得ることができます.JAN職員は環境整備法についてのわかりやすい情報を提供します。たとえば、適切な問い合わせ先の名前、住所、電話番号な
どです。 付加情報については個々に問い合わせをすることが可能です。 情報提供は無料で、電話、郵便、電子メールを利用可能です。
アメリカ障害者法 (ADA) の条文ともあいまって、睡眠障害患者への適切な環境整備についての知識を
得ることの必要性が高まってきています。 適切な環境整備についての知識が、企業による新規雇用や失業の防止を促進する可能性があります。
機能障害を持つ人への環境整備は困難であるという誤解を持っている企業もあります。
しかしながら、その考えは必ずしも正しくはありません。 環境整備は、大抵は、費用が安く実行も簡単です。
JANが収集したデータでは、機能障害患者のために環境整備をした企業は、収支面で実質上利益を得ているという結果を示しています。
報告書によると、環境整備全体の3分の2は費用が500ドル以下であり、調査対象企業の半分以上が5000ドルを超える効果を報告しています。
睡眠障害患者への環境整備を検討する際には、他の機能障害と同様、環境整備のプロセスは個別対応を基
本に管理しなければならないということに注意が必要です。 (ADAの技術支援マニュアルTitle I、1992年アメリカ司法省) 。 Title
I、セクション3.7「企業と機能障害をもつ労働者は、適切な環境整備法の決定のため、共に努めねばならない」によると。
機能障害や環境整備法は、患者一人一人、職業一つ一つによってさまざまです。
たとえ同じ機能障害をもつ患者であっても、必要な環境整備には違いがあることがあります。
すべての機能障害患者が職務遂行に環境整備を必要とするわけではなく、必要な場合も、ごく簡単なものが大半であるということに注意します。
また、ADAはすべての機能障害を対象にしているわけではありません。
ADA (Title I, Section
2.2) によると、機能障害患者とは以下の条件に当てはまる者を言います:
主要な生活活動を有意に制限する身体的または精神的な障害を持つ者で;
前
項にあてはまる障害の記録がある; または
そ
のような障害があると見なされる者。
この法律とEEOC (雇用機会均等委員会) の規則により、企業に要求される適切な環境整備の一般的な
類型が示されていますが、状況によっては別の環境整備法が適切である場合もあります。
また、適切な環境整備とは、それが状況に適った成果をあげている限り、必ずしも最大限の環境整備である必要はありません。
以下はADA技術支援マニュアル (Title I, Section 3) からの環境整備例の引用です:
障害を持つ人が利用しやすいように設備を整える;
付
随的な職務機能の分担を見直すことにより、職務内容を再構成する;
主
要な職務機能について、職務遂行の時間や方法を変更する;
パートタイム化もしくは勤務スケジュールの調整をする;
機器や装置を導入ないし調節する;
試験、教材、方針の変更する;
資格をもった読み上げ補助者や説明補助者を確保する;
空職ポストへ配置転換する;
治療の必要に応じて、未消化の有給ないし無給休暇の使用を認める;
運動障害患者には、駐車場を確保する;
雇い主が提供する義務のない機器や装置を、患者自身が用意することを認める。
職場環境整備の際に考慮すべき問題点
クライアントに関する事柄
1. クライアントの役職は?
2. 問題のある職務は何か?
3. 職務上の問題点は何ですか?
長期欠勤?
締め切りを守れないこと?
職務への集中の困難?
仕
事中の居眠り?
4. どうしたら上記の問題を修正することができますか?
(環境整備について検討するのはこの段階です)
職場に関する一般的な事柄
1. 職場の物理的な配置はどうなっているか?
2. 特に利用する機器は何か?
3. 利用している照明の種類は何か、騒音のレベルはどの程度か?
4. 職場周辺に視覚的にもしくは聴覚的に注意を散漫にするようなものがないか?
5.
クライアントが職務を遂行できるようにするためには、職場の物理的な配置をどのように変更すればよいか?
6. クライアントにとってより遂行しやすい職務を担当できるよう、職務を再構成することは可能か?
7. 職務遂行の助けとなる補助機器などにはどのようなものがあるか?
睡眠障害に関する一般的情報
もっとも一般的な睡眠障害の種類
不眠症 - 数日から数年間にわたって、睡眠の開始ないし維持が困難になる症状です;
他にも身体的ないし心理学的な疾患がある可能性があります。
睡眠時無呼吸症 - 夜間に数百回にわたって30秒以上呼吸が停止する症状です。 大きないびきが前兆であることもあります。
ナルコレプシー - 抗しがたい睡眠発作を起こす症状;
突然の睡眠発作や、昼間における過度の眠気、筋肉の衰弱、幻覚、突然のREM (Rapid Eye
Movement=急速眼球運動の略で、睡眠段階のひとつ) 発作などを引き起こすことがあります。
下肢不安症 - 動かすことによって解消する下肢の不快感、もしくは下肢に刺激を与える症候群のことで;
刺すような痛みや何かが這うような感覚を伴なうことがあります。 この不快感のために、快適な睡眠をとることができなくなります。
過眠症 -
主たる症状は、最低でも1ヶ月以上にわたり過度の眠気に襲われるといったものであるが、睡眠不足といった明白な問題が原因でもなく、ナルコレプシー等の既
知の要因が原因でもない。 そういった眠気の症状は、通常、幼児期の終わりごろや十代の頃、20代の初めごろに見られ始めます。
悪夢障害 - 睡眠時や仮眠時に、後で正確に思い出せるような非常に恐ろしい夢を見て、何度も眼を覚ますといった症状をもつ障害。
夜驚症 - 睡眠時にパニック状態の悲鳴と共に突然眼を覚ますといったことが繰り返し起こる障害。
夢の詳細については全く覚えていません。
夢遊病 - 睡眠時にベッドから起き上がり歩き出すといったことを繰り返す症状。
眼を覚ましたときには、そのときのことを思い出すことはできません。
昼間に現れる症状の例
眠気
不安
集中力散漫
記憶障害
過敏症
睡眠障害患者への環境整備案
シフト勤務ではなく、常時決まった勤務時間帯 (望ましくは昼間の時間帯) で勤務するよう、スケジュールを調整する。
毎日の症状の変化に順応できるよう、柔軟な勤務スケジュールを認める。 始業時間や終業時間に柔軟性が必要な場合もある。
たとえば、7時から10時までの間の任意の時刻に始業し、3時から6時のまでの間に終業するということが考えられる。
患者自身によって、その日ごとに始業時間を決定することが必要な場合もある。
柔軟な勤務スケジュールを認めて、必要に応じて休憩を取れるようにする。
1時間の昼休みと15分間の休憩2回が割り当てる場合、いつ休憩を取るかを決めずに必要に応じて休憩を与える。 その例は以下の通りです:
午前中の休憩が不要で、昼休みも30分しか必要ではないが、午後に1時間の休憩が必要であったり。
もしくは、30分の昼休みと、複数回の10分の休憩を必要とするなど。
一日のうちでもっとも眠気が強い時に仮眠を認めるというものも効果的といえます。
この場合、終業時間や始業時間をずらすなどして就業時間を調節してください。
勤務中、自由に立ち上がったり歩き回ったりできるようにすることも必要となるでしょう。
仕事が座り仕事であるならば、座ったり立ったり姿勢を変更できるように職場環境を再構築してください。
集中力を保つための、扇風機、「乗用車運転用ビープアラーム」、その他のアラーム機器の利用。
睡眠障害を持つ人は、仕事を始めると何をするべきだったのかを忘れてしまうこともありえます。
作業を思い出させるために、チェックリスト、電子手帳、アラームが鳴るペース調整機器などを使用する。
脱力発作 (筋肉の緊張が失われることで、軽く膝を落とす程度から、全身が脱力して完全に「ぬいぐるみ」の状
態になる程度まで―ナルコレプシー患者に発生することがある) が見られる場合、危険を伴なう職場での安全問題にも対応する必要がある。
脱力発作は、ナルコレプシー患者全員に見られる症状ではない。 発作は、普通、激しい感情の表れにともなって起こる。
患者本人が、発作が起こりそうであると気づいた場合は、発作時に必要となる安全措置をとることができる。
睡眠障害患者への環境整備案の一例
JANの問い合わせ者の機密性を保持するために、以下のシナリ
オは
JANのケースに編集を加えたものと不特定の状況を想定したものとなっています。
あるカスタマーサービス責任者は、睡眠障害患者であった。 電話中に注意力を保つことに問題があった。
雇用主は「ビープ」アラームを購入し、以前よりも頻繁に休憩を取ることを認めた。 環境整備の費用は12ドルで、たいへん大きな成果があがった。
あるナルコレプシー患者のソーシャルワーカーは、運転中に眠気がさすため、定時に出勤するのが困難であっ
た。 始業時間を遅らせ、午前中に服薬の時間を設けることを認めた。 環境整備の費用は0ドルで、たいへん大きな成果があがった。
あるナルコレプシー患者の配電盤技師は、勤務中「ビープ」アラームを利用していた。
耳の後ろでビープ音がなる装置で。
頭が下を向く (患者が眠りに落ちるときによく見られる動作) と、穏やかな警告音で知らせ、患者を起こすようになっている。
ある睡眠時無呼吸症の電話機修理工は、注意力を保つことが困難であった。
会社はCPAP (持続的気道内陽圧) 機器を用意し仕事中に使用させた。 従業員は仮眠中にCPAPを使用しました。
眼が覚めている間、注意力を高めることができた。 環境整備の費用は不明。
ある管理職兼務の専門職職員は、ナルコレプシー患者で、勤務中に仮眠時間を必要とした。
事務所内に睡眠場所が用意され、日に何度か休憩を取ることができた。 この患者は定期的な休憩を取っているが、標準的な仕事量以上をこなしている。
ある睡眠時無呼吸症患者の渉外担当職員は、仕事中に眠ってしまうことがあった。
雇い主は、その従業員に対して追加の休憩を与えました。 さらに、他の同僚に対しては睡眠障害についての教育を行って理解を深めた。
この環境整備は成果をあげ、費用は0ドルでした。
ある事務員はナルコレプシー患者でした。
その事務員は、疲労、仕事中や会議中に寝てしまうこと、朝起きるのが困難なことなどであった。
実行した環境整備は、仮眠を取るための休憩に入る時間の柔軟な決定、仕事をしやすい場所と安静に休める場所を探すこと、担当職務の変更、机で寝てしまった
ときに起き上がる訓練、単調さを避けるためにいろいろな仕事をすることなどである。 環境整備はそれぞれ成果をあげ、費用は0ドルであった。
ある電話会社社員は、ナルコレプシー患者であった。 この会社員は柔軟なスケジュールを必要としました。
1日に合計90分の休憩時間 (15分の休憩を2回と1時間の昼休み) を与えた。 1日の中でこれらの休憩を必要に応じて振り分けることができた。
視覚的に注意を阻害するものをなくし、生産性を向上させるために、座席をいくつか移動して、患者の座席を目立ちにくい場所に移した。
問い合わせ先リスト
(完全なリストではありません)