1973年のリハビリテーション法では、障害に基づく差別を禁止し、積極的差別是正措置(affirmative action)を求め、連邦政府の職員雇用と連邦政府のサービスにおけるアクセシビリティの確保を命じています。 障害に関するおもな条項は、501条、502条、503条、504条の4つです。501条: 連邦政府の職員雇用において差別撤廃を命じ、障害を持つ人の雇用、配属、昇進について積極的差別是正措置を求める。
502条: 連邦政府の資金で建設する建物について、アクセシビリティの基準を満たすことを保証する。
503条: 連邦政府と10,000ドル以上の契約を持つ請負業者に差別撤廃を命じ、従業員数が50名以上で連邦政府と50,000ドル以上の契約を持つ請負業者に障害を持つ人の雇用、配属、昇進について積極的差別是正措置を求める。
504条: 連邦政府の資金援助を受けて行われるプログラムや活動において、障害を持つ人への差別を禁止する。
すべての条項がなくてはならないものですが、このページの趣旨に合わせて、501条と503条のみを詳しく見てゆくことにします。
1973年に改正されたリハビリテーション法は、連邦政府、あるいは連邦政府と10,000ドル以上の契約を持つ請負業者が、障害者であると認められる人の雇用に対して差別を行うことを違法としています。 この法律は、連邦政府の資金援助を受けて行われるあらゆるプログラムや活動において、障害を持つ人への差別を禁止するとともに、連邦政府の資金で建設する建物について、アクセシビリティの基準を満たすことを保証しています。 この法律のもとで、連邦政府は障害を持つ人を雇用、配属、昇進させ、雇用機会の均等のモデルとなる義務を負います。
現在、リハビリテーション法による雇用における差別撤廃管理規則は、1992年のアメリカ障害者法(Americans with Disabilities Act(ADA))Title Iに類型化されています。1992年の改正リハビリテーション法によると、アメリカ障害者法の雇用基準は、リハビリテーション法501条が定める障害を持つ連邦職員もしくは連邦職員志望者が申し出た、積極的差別是正措置を取らないことによるあらゆる雇用差別に適用されます。
Pub.L.No. 102-569, 503(b), 106 Stat.4344 (1992)(codified as amended at 29 U.S.C. 791(g) (1994))
出典: 執行指針: 「執行指針:アメリカ障害者法に基づく妥当な環境整備と不当な困難」雇用機会均等委員会(EEOC)、1999年3月。
リハビリテーション法によって規制を受ける組織は?
リハビリテーション法501条の規定で、障害をもつ連邦政府職員に対して、雇用、配属、昇進の差別が禁止されています。 連邦政府の機関は積極的差別是正計画(affirmative action plans)を作成して、連邦政府が平等な雇用機会を提供していることを示すよう求められています。 この規定は、すべての省庁や連邦政府の行政機関に適用されます。
リハビリテーション法503条の規定で、連邦政府が利用する請負業者とその下請け業者も、差別撤廃条項による規制を受けます。 この規定は、連邦政府と10,000ドル以上の契約を持つ請負業者に適用されます。 従業員数が50名以上で連邦政府と50,000ドル以上の契約を持つ請負業者も、積極的差別是正条項の規制を受けます。
リハビリテーション法504条の規定で、連邦政府から資金提供を得ている組織は、障害に基づく雇用差別を禁止されています。 間接的もしくは直接的に連邦政府の資金援助を受けている、州の機関、団体、組織などがこの適用を受けます。
リハビリテーション法は、所属する機関の職員数に関わらず、すべての連邦政府職員に適用されます(アメリカ障害者法とは異なります)。 連邦政府が利用する請負業者も、従業員数によってはアメリカ障害者法の規制をうけることがあります; 1994年7月26日以降は、従業員数15人を超える民間企業、および州もしくは地方自治体の機関に適用。
リハビリテーション法501条の雇用条項については、まず連邦政府機関内の雇用機会均等指導局(法律違反の申し立てに対応する部署)が執行を担当し、ついで雇用機会均等委員会(EEOC)の管轄に移ります。 連邦契約遵守計画局(OFCCP)は、連邦政府の請負業者へのリハビリテーション法503条の執行に責任を持ちます。 法律の執行に関する詳細は後述します。
リハビリテーション法によって保護される人は?
リハビリテーション法は、障害を持っており、職務上不可欠な職務機能を発揮することができないと認められる人を、障害に基づく仕事上の差別から守ります。 リハビリテーション法の定める障害者とは、ひとつ以上の主要な生活行為(歩く、見る、聞く、話すなど)を実質的に制限する肉体的もしくは精神的な症状を有することが条件です。 同様に、そのような病歴を持っている場合にも、リハビリテーション法による保護を受けられます。 また、障害を持っていない労働者を、障害を持っているかのように扱った場合も、法律の適用を受けます。
障害者として認められるには、軽微なものではなく、相当程度の能力の制限がなくてはなりません。 主要な生活行為に支障があることが必要です。
相当程度の能力の制限がどのようなものであるかは、能力の制限そのものではなく、それぞれの患者の状況に合わせて検討する必要があります。 能力が制限されることによって行うことができなくなる職務の質と量、通勤先の地理的な条件、職務経験、リハビリの進み具合などを吟味する必要があります。 503条の意図として、障害のために就職、継続勤務、昇進などに支障が出る恐れがあれば、その人には相当程度の能力の制限があると判断されます。
リハビリテーション法による保護を受けるには、合理的な環境整備がなされているかどうかに関わりなく、職務上不可欠な職務機能を発揮することができないと認められる必要があります。 職務上不可欠な職務機能が何であるかは、その役職がもっぱら行う職務であるかどうか、一部の人にしか行うことのできない職務であるかどうか、高度に専門的な職務をこなす専門家として雇われているのかどうかなどを考慮して決定します。 その職務に必要な、教育水準、経験、技能などは持ち合わせている必要があります。 合理的な環境整備がなされているかどうかに関わらず、職務上不可欠な職務機能がすべて果たされている場合には、障害を理由に雇用や昇進を拒否することはできません。
合理的な環境整備とは?合理的な環境整備は、障害を持つ人が平等な職務待遇を受けるための鍵となります。 合理的な環境整備とは、職場環境の変更や調整をして、障害を持つ人に就職の機会の獲得、職務上不可欠な職務機能の発揮、障害をもたない労働者が享受しているのと同じ職務上の利益の享受などを可能にすることです。 合理的な環境整備の一例として、以下のようなものがあります :
障害を持つ人が利用しやすいように職場環境を整える 職務の再構成 機器や装置を提供ないし調整する 読み上げ補助者や説明補助者を確保する パートタイム化もしくは勤務スケジュールの調整をする 空職ポストへ配置転換する
合理的な環境整備は、まずは役職の変更なしに行う必要があります。 有効な環境整備方法が他にない場合に限って、配置転換による環境整備を検討します。 従来、裁判所は配置転換を501条の定める環境整備として認めてきませんでした。 1992年の改正で、雇用機会均等委員会が、連邦政府機関は、極端に大きな支障がない限り、障害によって現在の職務を遂行することができなくなった職員を配置転換させなければならない、と規定しました。 連邦政府機関に関する配置転換条項は、環境整備の義務というよりは、アメリカ障害者法で論じられているように、積極的差別是正義務として捉えられています。雇用者は、障害を持っていると認められる求職者や労働者に対して、それが業務に極端に大きな支障を及ぼすものでない限り、合理的な環境整備を提供する必要があります。 極端に大きな支障とは、業務の規模、種類、財務状態などと、環境整備の費用を勘案して決定します。 環境整備が相当程度に困難であるか、もしくは実行に相当程度の費用がかかるかといったことを判断する必要があります。 従業員の数や予算額の大きな会社の方が、小さな会社と比較して、より多くの費用を捻出できるでしょう。
合理的な環境整備の請求方法は?
環境整備を得るためには、雇用者に環境整備が必要であることを伝えねばなりません。 請求を行う前に書類を提出するよう定めている場合もあるでしょう。 法律では、書面による請求でなくてはならないという決まりはありませんが、後で参照できるように、所定の書式で請求を出しておくことを推奨します。 環境整備の請求は、以下のような要領を含み、上司もしくは雇用者に直接提出します:
自分が障害者であることを示す リハビリテーション法に基づき環境整備を請求する旨を示す 支障のある職務が何であるか示す 環境整備の提案を示す 雇用者側からの環境整備の提案を促す 環境整備の請求書類に添付した医療書類に関する説明、もしくは医療書類の入手先の説明 (環境整備の請求があった場合、雇用者には障害に関する記録を請求する権利がある) を要請する 雇用主に上記要求に対して遅滞のない回答を請う
環境整備の請求が提出されたら、雇用者は請求の合理性について検討しなければなりません。 環境整備の実施に極端に大きな支障がなければ、遅滞なく実行に移します。 患者の請求する環境整備の質と、雇用者が環境整備に利用できるリソースが鍵となります。リハビリテーション法に基づいて権利を主張した労働者に報復を行うことは違法行為です。 環境整備の請求をしたために報復をされたと感じた場合は、監督官庁に苦情を申し立てることができます。
雇用行為はどこまでの範囲を指すか?
リハビリテーション法501条の規定では、連邦政府による、雇用行為における障害に基づく差別は禁止されています。 連邦政府と契約のある請負業者も、雇用行為における差別を503条で禁止されています。 法律が規定する雇用行為とは:
募集 解雇 採用 昇進 訓練 福利 配属 休暇 一時解雇 給与 その他雇用に関するあらゆる活動
請求者が医学的な試験を求められたり、障害について質問されたりすることはあるか?1992年に改正されたリハビリテーション法では、雇用者は、請求者が障害者であるかどうかをたずねたり、障害の質や程度について質問することは許されないとしています。 質問が許されるのは、合理的な環境整備があった場合となかった場合のそれぞれに、職務を遂行することができるかどうかということです。 合理的な環境整備があった場合となかった場合のそれぞれに、どのようにして職務を行うつもりであるかを説明する必要もありえます。 ただし、連邦政府と、連邦政府が利用する請負業者には、リハビリテーション法501条と503条の、積極的差別是正義務が適用されるため、この義務を果たすために、求職票などの採用前に提出する書類で、求職者に障害を持っていることを明かすように促すことができます。 この促しは自主的な判断に任せたものでなくてはならず、求職者が、障害を持っていることを雇用者に知らせるかどうか判断する権利を侵してはなりません。
職種によっては、適性を判断するために医学的な検査が必要となる場合もあるでしょう。 医学検査を行う場合には、前もって条件付きの求人を出しておく必要があります。 条件付きの求人を出した上で、求職者全員が医学的な検査をうける必要のある職種についてのみ、検査を行うことができます。 医学検査で求人者が障害をもっているということが判明しても、それが職務に関係のあるもので、職務遂行に必要な能力でないかぎり、雇用を拒否することはできません。
採用後には、職務上必要な場合以外では、障害について質問したり、医学検査を求めたりすることはできません。 任意参加の医学検査や健康診断を行うことはできます。 検査の結果や障害に関わる事柄は、機密事項とし、別々のファイルで記録を保管しなければなりません。
リハビリテーション法に基づく申し立てはどのように処理されるのか?
リハビリテーション法501条に基づくもの:
職場において、障害に基づく差別を受けていると感じた連邦政府職員は、法律違反の申し立て先である雇用機会均等指導局に相談する必要があります。 申し立ては差別的行為があった日から45日間以内に行わなければなりません。 申し立てを受けた雇用機会均等指導員は、30日以内に回答を出さなければなりませんが、申し立てをする側と法律違反を指摘された側双方の合意があれば60日までの延長が可能です。 指導員による指導期間が終了した時点で、申立て人に不服がある場合は、雇用機会均等指導員は雇用機会均等委員会に正式な申し立てをする権利がある(この申し立ては15日以内に行わなければなりません)ことを申し立て人に知らせます。 雇用機会均等委員会が申し立てを受理すると、180日の調査期間があり、必要に応じて90日間までの延長があります。 雇用機会均等委員会の判断を受けて、その判断を受け入れるか、行政審理官の聴取を受けたり裁判を行ったりするかを決定します。 連邦政府期間の側が決定を不服とした場合、雇用機会均等委員会に不服申し立てをすることができます。
申し立て手続きにはいくつか例外規定があります。 全体として、まず雇用機会均等指導員に不服申し立てを行い、問題が解決しない場合には雇用機会均等委員会や裁判所に申し立てをすることになります。 さらに詳細な情報が必要な場合は、管轄の雇用機会均等指導局までお問い合わせください。
雇用機会均等委員会の地方支局は全米にあります。 雇用機会均等指導局の担当官に差別の事実を申し立てて、満足の行く結論が出なかった場合は、お手持ちの電話帳のアメリカ合衆国政府の欄を参照して、雇用機会均等委員会に連絡をしてください。 最寄りの地方支局の所在地については下記まで問い合わせてください:
米国雇用機会均等委員会
1801 L St., N.W.
Washington, DC 20507
(202) 663-4519
(202) 663-4593 (TTY)
(800) 669-4000
(800) 669-6820 (TTY)
http://www.eeoc.gov
Facts About Federal Sector Equal Employment Opportunity Complaint Processing Regulations (29 CFR Part 1614)
http://www.eeoc.gov/facts/fs-fed.html
リハビリテーション法503条に基づくもの:
職場において、障害に基づく差別を受けていると感じた連邦政府が利用する請負業者の従業員は、連邦契約遵守計画局(OFCCP)に相談する必要があります。リハビリテーション法503条をアメリカ障害者法Title Iに矛盾しないものとするために連邦契約遵守計画局が定めた新しい規則では、連邦政府が利用する請負業者の従業員は、障害に基づく雇用上の差別に関する申し立てを、300日以内に行うことになっています。 申し立ては、連邦契約遵守計画局の本局もしくは全米の地方支局に書面で行わなくてはなりません。 連邦契約遵守計画局が事情調査を行います。
申し立てに関する詳細な情報は、以下まで問い合わせてください:
米国労働省
連邦契約遵守計画局(OFCCP)
200 Constitution Ave., N.W.
Washington, DC 20210
(202) 401-8818
(202) 219-9471 (TTY)
(888) 37-OFCCP
労働基準局連邦契約遵守課 (Employment Standards Administration Office of Federal Contract Compliance Programs)
Section 503 Fact Sheet
http://www.dol.gov/esa/regs/compliance/ofccp/fs503.htm
リハビリテーション法501条に関する質問と回答
求職者に対して、合理的な環境整備を提供する必要はあるか?
環境整備の要請が合理的なものであり、極端に大きな支障を生じるものでなければ、環境整備を提供する必要があります。 求職者には、既に働いている労働者と同様、合理的な環境整備を受ける権利があります。 求職の申し出や面接などを行うために、環境整備を必要とする求職者もいるでしょう。 たとえば、聴覚障害を持つ求職者であれば、面接時に手話通訳者の手配を要請するといったことが考えられます。 あるいは、学習障害を持つ求職者であれば、技能試験実施の際に時間延長の検討が必要な場合もあるでしょう。
求職者は雇用者に、障害を持っていることを伝えるべきか?
障害を持っていることを明かす必要があるのは、求職活動や職務上不可欠な職務機能の発揮のために、合理的な環境整備が必要になる場合だけです。 雇用者が障害について知らされていなかった場合は、環境整備を提供する義務は発生しません。 一般に、環境整備が必要であることを雇用者に知らせるのは、労働者の責任です。
連邦政府と、連邦政府が利用する請負業者には、リハビリテーション法501条と503条の、積極的差別是正要件が適用されるため、この義務を果たすために、求職者に障害を持っていることを明かすように促すことができます。
環境整備を受ける場合、それに対して代金を支払う必要はあるか?
リハビリテーション法が雇用者に求めている無料での環境整備の提供が、雇用者の業務に極端に大きな支障を生じる可能性があります。 環境整備の費用があまりにも大きい場合、雇用者は複数の選択肢を示すことができます。 どちらか一方では費用を負担しきれない場合、費用を分担することも可能です。
環境整備が必要であることを理由に、減給されたり、同じ職務を行っているほかの労働者よりも安い賃金を設定されることはありますか?
雇用者は、障害者の認定を受けた人を、障害を持たない人よりも優先して雇用する必要があるのか?
リハビリテーション法の501条と503条にはともに、連邦政府と、連邦政府が利用する請負業者の一部への、雇用に関する積極的差別是正要件が盛り込まれています。 しかしながら、雇用者には、障害を持っているかどうかに関わらず、募集する役職にもっとも適切な人を採用することが望まれます。 雇用者が禁じられているのは、障害をもっているという事実そのものや、職務上不可欠な職務機能の発揮に合理的な環境整備が必要であるということを根拠に、障害を持つ人の雇用を拒否することです。
雇用者は、労働者が望むままに環境整備を提供する必要があるのか?
雇用者が要求される環境整備は、職務上不可欠な職務機能の発揮を助け、すべての労働者が同じ権利を享受できるようにする上で、効果のある環境整備です。 もっとも手厚い環境整備や、もっとも労働者が望んでいる環境整備が、もっとも効果の高い環境整備であるとは限りません。 雇用者には、環境整備を選択する権利があります。
雇用者は、既存の疾患に適用しないという健康保険規定を採用することができるか?
はい。 リハビリテーション法は健康保険規定の既存疾患除外条項を規制していません。
雇用者は、障害を持つ人が利用しやすい職務非関連設備(カフェテリア、ラウンジなど)を設けたり、交通手段を用意したりする必要があるか?
支障がない限り用意する必要があります。 合理的な環境整備の義務は、雇用者が提供するあらゆるサービス、プログラム、職務非関連設備などを対象とします。 リハビリテーション法502条の規定では、連邦政府の資金で建設される建物は、利用の容易さを備えていなければなりません。 連邦政府の施設は、すべてが連邦政府の資金で建設されるわけではありませんが、かならず利用の容易さを備えていなければなりません。
さらに詳細な情報についてはJANまでお問い合わせください。