特異な学習障害を示すキーワード
特異的学習障害 (from PL 94-142,IDEA) -特異的学習障害とは、聞く、考える、話す、読む、書く、綴る、計算するなどの、話し言葉ないし書き言葉を使ったり、理解したりすることに関する障害を意味します
失読症 -知能は平均またはそれ以上だが、視覚、聴覚、運動のプロセスに障害があり、読みや読解力に障害が起こること; 文字を声に出して読む練習が困難なことがある。
書字障害 -知能は平均またはそれ以上だが、書字に問題があること。 まとまり、明確さ、つながり、内容の乱れ、手が動かない、反復、移行、文字や言葉の脱落などの問題がおきる。 つづりは不十分で、文字は読みにくく、書かれているアイデアはまとまりがなくわかりにくいことがある。
失算症 -知能は平均またはそれ以上だが、数字や事実を長時間にわたって記憶することが困難である。 空間認知に問題があり、適切に数字を並べることができない場合もある。 また、数字を逆にしてしまい、数学的操作ができない患者もいる。
統合運動障害 -脳から命令が身体の各部位に適切に伝えられないという障害; 筋肉自体に麻痺や衰弱はなく、運動供応という点に関して問題が生じる; したがって会話に問題があったり、姿勢の維持ができなかったり、方向感覚に問題があったり、ものを投げたり捕ったりすることが困難であったりします。
聴覚認知障害 -耳から正確な情報を受け取ることに困難が生ずるもの; 音声を耳や脳が受け取るプロセスには問題が起きていないが; 口頭での指示を理解したり、覚えたり、似たような音を聞き分けたり、騒音がある中で特定の音を聞き取ったりすることに障害がある。
視覚認知障害 -目から正確な情報を受け取ることに困難が生ずるもの; 背景からものを見分けたり、正確な順番でものを見たりすることに問題がある。
注意欠陥障害のキーワード
(taken from pp. 83-84, Diagnostic Criteria from DSM-IV, The American Psychiatric Association, 1994)
注意欠陥/多動性障害
(1)または(2)のいずれか
(1)少なくとも6ヶ月以上の期間、発達段階にふさわしくない次の症状が最低6つ見られるもの:
(a) 細かいところまで注意を払うことができない
(b) 課題に集中することが困難である
(c) 直接話しかけても聞いていないように見える
(d) 指示に従わずに課題や仕事を失敗する
(e) 課題や活動を整理することが困難である
(f) 努力が必要な課題に打ち込むのを避けたり、嫌ったり、いやいややったりする
(g) 課題や活動に必要なものを忘れる
(h) 外からの刺激によってすぐに気が散ってしまう
(i) 日常の活動を忘れがちになる
(2)少なくとも6ヶ月以上、発達段階にふさわしくない次の多動・衝動的な症状が6つ以上あるもの:
(a) 手足を落ち着かなく動かしたり、座席でバタバタする
(b) 教室や席に座っていなくてはいけない場面で席から離れる
(c) 不適切な場面で走ったり、突然物にのぼりだしたりする
(d) レジャーで静かに遊んだり、参加したりすることが困難である
(e) 動きっぱなしだったり、機械に操られているかのように振舞う
(f) 一方的に話す
(g) 相手の話が終わっていないのに無理やり答え始めようとする
(h) 自分の番が来るのを待つことができない
(i) 他の人を遮ったり、割り込んだりする
注意欠陥/多動障害(特定不能)-注意欠陥/多動性障害の基準に合わない不注意、多動・衝動性の顕著な症状がある障害のカテゴリー。
環境整備決定の際に考慮する問題点
クライアントに関する事柄
1. クライアントの役職は?
2. 問題のある職務は何か?
3. 問題のある職務について、クライアントが困難に直面しているのは、厳密に言うと何か? (具体的にひとつだけ挙げる)
4. 問題点の絞り込みの例:
綴りに問題はあるか?―綴りの問題は反転(学習障害かどうかの指標になる)が原因か?
視覚障害もしくは聴覚障害はあるか?
読字障害はあるか?―読字障害は視覚障害もしくは音声識別障害が原因か?
記憶障害はあるか?―記憶障害は、注意力の欠如、集中力の欠如か、
外からの刺激をより分けることができないことなどが原因か、
短期記憶障害もしくは長期記憶障害か?
5. 神経学的な障害は何か? (熟慮の上推測する必要がある)
6. 障害を補うにはどのようにすればよいのか? (環境整備について検討するのはこの段階です)
職場に関する一般的な事柄
1. 職場の物理的な配置はどうなっているか?
2. 特に利用する機器は何か?
3. 利用している照明の種類は何か、騒音のレベルはどの程度か?
4. 視覚的もしくは聴覚的に気が散る環境か?
5. クライアントが職務を遂行できるようにするためには、職場の物理的な配置をどのように変更すればよいか?
6. クライアントにとってより遂行しやすい職務を担当できるよう、職務を再構成することは可能か?
7. 職務遂行の助けとなる補助機器にはどのようなものがあるか?
ADA技術支援マニュアルからの環境整備例の引用
(Title I, Section 3)
この法律とEEOC(雇用機会均等委員会)の規則により、企業に要求される適切な環境整備の一般的な類型が示されていますが、状況によっては別の環境整備法が適切である場合もあります。 環境整備は個別対応を基本に検討します。 また、適切な環境整備とは、それが状況に適った成果をあげている限り、必ずしも最大限の環境整備である必要はありません。
環境整備の例:
機能障害患者が利用しやすいように設備を整える;
付随的な職務機能の分担を見直すことにより、職務内容を再構成する;
主要な職務機能について、職務遂行の時間や方法を変更する;
パートタイム化もしくは勤務スケジュールの調整をする;
機器や装置を導入ないし調節する;
試験、教材、方針の変更する;
資格をもった読み上げ補助者や説明補助者を確保する;
空職ポストへ配置転換する;
治療の必要に応じて、未消化の有給ないし無給休暇の使用を認める;
運動障害患者には、駐車場を確保する;
雇い主が提供する義務のない機器や装置を、患者自身が用意することを認める。
学習障害かつ(または)注意欠陥障害を持つ人のための環境整備の一例
読むことの問題
読字障害用にテープに録音された本(学習障害を持っている人はこのサービスを受ける資格があります)
指示、メッセージ、資料をテープに録音すること
読み取り機器
コンピュータ使用時の画面読み上げソフトウェア
読みやすいようにする、透明な色つきカバー
説明書や要綱、地図の色分け
ハードコピーをコンピュータシステムに取り込むスキャナー
書くことの問題
パーソナルコンピュータ/ラップトップコンピュータ
コンピュータにキー入力された内容を強調したり(合成音声を使用して)読み上げたりする音声出力ソフトウェア。
ユーザーの声を認識し、文章に変換してコンピュータ画面に表示する音声入力ソフトウェア。
キーボードの数字や文字を識別するためのロケータードット
ワープロソフト
スペルチェックソフトウェアまたは電子スペルチェッカー
強調する機能をもったソフトウェア
文法チェックソフトウェア
単語予測ソフトウェア
注文票、苦情受け付け用紙、申請書類、クレジットカード履歴などの定型文書をデジタル化するための表計算ソフトウェア。
カーボンレス・ノートテイキング・システム
計算の問題
分数、少数などを扱える統計処理用の電卓
音声出力付の計算機
計算/数学用コンピュータ利用学習(CAI)ソフトウェア
構造/工学用コンピュータ利用デザイン(CAD)ソフトウェア
計算機用の大画面と追加機器
透明な色付カバー(原簿台帳の列を色分けする)
計画スキル、記憶、時間管理の障害
手帳
電子手帳/スケジューラー
強調する機能をもったまたはもたない計画ソフトウェア
LCD腕時計、データバンク時計、タイマー、カウンター、アラーム
個人情報管理装置 (P.I.M.S.)
記憶補助として電子メールを使う
身体環境の維持
視覚的/聴覚的な気を散らす要因を避けるため、ついたて/パーティションを用いる
個人専用オフィススペース
サウンドスーザー/環境音楽機器によって「ホワイトノイズ」を利用する
色付ファイルの使用
職場/オフィスの見取り図を作成する
学習障害者に対する環境整備例
ある警備員は、複数の職務を担当しており、記憶に障害があった。 環境整備として、一度に担当する職務を一つだけにした。 この患者は書面による指示を読むことにも困難があった。 環境整備として、指示を読むときには、一人で読むのではなく、周りの人が注意を促すようにした。 事務局側に費用はかからなかった。
ある警察官は、学習障害患者で、表現的書字障害であると診断されていた。 環境整備として、試験を受ける際に時間の延長を認められた。 試験中に辞書を使用することも認められた。 事務局側に費用はかからなかった。
ある短大生は、失読症、失算症、記憶障害があり、テキストを読んだり課題を完成させることが困難であった。 環境整備のため、Arkenstone Readingソフトつきのコンピュータを貸し出した。 このコンピュータには音声出力装置とスキャナがついたものであった。 コンピュータとソフトウェアは卒業後に返却された。 環境整備の費用は6245ドルであった。
ある学習障害患者の工員は、インチ数を分数で計算することが困難であった。 財布にちょうど入る大きさの、分数の一覧をカードを作った。 このカードと、正しい分数を見分けるための定規を使って、一覧にされている分数と実際の寸法を比較することができるようになった。 環境整備の費用は5ドルであった。
あるプログラマーは、学習障害があり、文字の読み取り、計算、綴りなどに障害があった。 手順の概要の図解を用意して支援を行った。 この患者は視覚的な識別力に障害があり、「耳で覚える」タイプだったので、読み上げ補助者と「復唱」テープも用意した。 環境整備の費用は30ドルであった。
ある書類管理担当の事務員は、学習障害患者で、分野分けしたり書類を探したりすることが困難であった。 視覚的に気を散らす要因を避けるため、座席を変更した。 この事務所では、タスクシーケンスを採用していた。 書見台、色つきの付箋、白熱光の照明なども導入した。 環境整備の総費用は20ドルであった。
ある学習障害患者の学生は、ノートを取ることが困難であった。 家に帰ってから自分のペースでノートを取れるよう、テープレコーダを用意した。 環境整備の費用は、テープレコーダの購入費60ドルである。
ある事務員兼受付係は、学習障害患者で、原稿を見ながらのタイピングが困難であった。 行を飛ばさないように、自動の「ラインガイド」を用意した。 環境整備の費用は、原稿押さえとラインガイド、および照明とカーソル拡大ソフトの購入費256ドルであった。
ある電子部品修理専門学校の生徒は、学習障害患者で、読字が困難であった。 テープレコーダを用意した。 教科書をテープに吹き込んだものを用意し、地元の学校で「非常時における読字能力」という講義も受講した。 環境整備の総費用は、携帯式のカセットレコーダの購入費127ドルであった。
あるキーパンチャーは失読症患者で、電話番号情報を入力していた。 口頭による電話番号の確認や見直しのための時間延長などによって環境整備をした。 会社側の環境整備費用は0ドルであった。
ある青少年事務局員は、失読症患者で、ケースワーカー業務に支障があった。 口述筆記機器、週に一度の上司との打ち合わせ、ケースワークガイドラインなどを用意した。会社側に費用はかからなかった。
ある育児補助員は、学習障害があり、読字能力が低かった。 童話の内容や、童話を話して聞かせるときの手振りを教えるためのビデオを用意した。 患者は、このビデオを見て練習をした。 環境整備の総費用は、ビデオテープの購入費50ドルであった。
ある事務員は、電話応対、パンフレット配布、顧客への応接、質問への回答などの業務に、通常よりも時間がかかった。 二週間の日程でジョブコーチを手配し、その後も再訓練の必要に応じて指導を受けた。 会社側に費用はかからなかった。
ある皿洗い係は、学習障害患者であり、多くの職務を受け持っていた。 図と文字による担当職務(特に時間の余裕がないもの)のリストを利用して、仕事を忘れないよう支援した。 リストの利用は、計画性や効率の向上にも貢献した。 この環境整備に費用はかからなかった。
ある切断工は、学習障害患者で、計算や順序だてた思考が困難であり、フォームシートから部品を切り抜くことを職務としていた。 計算目盛りつきのポケットサイズカードを用意し、フォームシートの切断を支援した。 環境整備の総費用は、ポケットカードの購入費25ドルであった。
ある記録係の事務員は、学習障害とてんかんがあり、書類に関する苦情を受け付けたり、請求された書類を見つけ出したり、書類を整頓したりすることを職務としていた。 ジョブコーチを手配し、さまざまな角度から再訓練を行った。 会社側に費用はかからなかった。
注意欠陥障害のための環境整備の例
注意欠陥障害をもつあるジャーナリストは多動性があり、視覚的・聴覚的な妨害に非常に敏感であった。 気を散らす要因を排除するためパーティションスペースを与えた。 あらかじめ職務に関する質問を用意できるように追加時間をあたえるといった、柔軟な勤務スケジュールもみとめた。 耳栓やテープレコーダー使用を認めた。 これらの環境整備に費用はかからなかった。
注意欠陥障害と学習障害をもつある従業員は、パーソナルコンピュータ、個人情報マネージャ(P.I.M)を与えられた , さらに、ヘッドホン付の環境音楽機器を提供された。 加えて、読み取りがしやすいように、黄色透明シートの色分けを行う色付マーカー、オレンジ色の付箋を使った。 これらの環境整備にかかったコストは2,350ドルだった。
注意欠陥障害の弁護士は自分に対して以下のような環境整備を行った: 自分の落ち着かなさを軽減するため、基本的なものとして、ソフトウェア・オーガナイザー、P.I.Mを使い、色付ホルダーや色分けを活用した。 さらに、イライラするときは音楽を聴くようにした。 コンピュータ用にカラーモニターを購入し、自身に効果的な様々な色分けを行った。 スクリーン上で一度に1つ以上の課題ができるワープロソフトを使った。 カラーモニタとソフトウェアオーガナイザーのための費用は490ドルだった。
注意欠陥障害をもつある学校教師は、講義室の使用予定管理のためにコンピュータを購入した。
タイマー機能のあるスケジュール/計画ソフトウェアを使用した。スクリーン上にソフトウェア・タイマーをかなり大きく表示させ、点滅させるようにした。 授業期間中の時間変化がより分かるようになった。 最後に、ToDoリストをつけ、色分けしたファイルフォルダを集めた大きなファイルボックスを使用した。 カラーモニターを購入し、自分に見やすい青と緑で表示するようにした。 環境整備の総費用は2500ドルであった。
注意欠陥障害をもつマネージャーはスケジュール・計画ソフトウェアと、口述筆記機器を使用した。 計画ソフトウェアの費用は30ドルであった。
交代制勤務であるある注意欠陥障害の労働者は仕事のスケジュール調整を行ってもらい、1日労働したら次の日から2日間の休みを連続してとることができるようにした。 会社側に費用はかからなかった。
注意欠陥障害の造園業者は道を覚えること、それに伴う仕事を覚えることに困難があった。 現在では、日課の計画化により大きな成功を収めている。 費用は年間で10ドル。
注意欠陥障害の高校ガイダンスカウンセラーは学校の雑音のため集中することに困難があった。 学校は騒音を減らすために、電話を光で知らせるようにし、防音装置をつけ、ホワイトノイズを発生させるためのファンをとりつけた。 この整備は非常にうまくいき、費用は600ドル以下だった。
ある注意欠陥障害の技術アナリストは色々な責任事項を決められた時間に行うことが難しかった。 自作の日課計画化用紙を使用した。 コストは合わせて10ドル以下であった。
小売店で働くある注意欠陥障害患者は、毎日のフロアでの責任感によりイライラが増すようになっていった。 彼女は一日のスケジュールを細かく分割した。 費用はかからなかった。
注意欠陥障害をもつ銀行勤務のあるアカウント事務員は集中困難があった。 オフィスを防音にし、また自然音をホワイトノイズとして流すステレオを自ら用意した。 この環境整備のための費用は1000ドル以下であった。
注意欠陥障害をもつマーケティング・コンサルタントは自分のアカウントの全てを管理することに困難があった。 環境整備として、1つは予定議事録、1つはデジタル腕時計、1つはコンピュータと、様々な日課計画法を自ら用意した。 本人にとって、200ドル以下の費用で非常に成功した環境整備であった。
問い合わせ先1・問い合わせ先2
(完全なリストではありません)