また、合理的な環境整備は障害者が応募プロセスに参加でき、他の従業員と同等に雇用上の便益・権利を享受できるよう、供与されなければなりません。
事業主の事業運営に過度の負担となる場合を除いて、既知の身体的・精神的制限がある適格障害者に対し、合理的な環境整備を供与しないことはADAに違反することになります。 過度の負担とは、環境整備を供与することが相当の支障と莫大な費用を伴うことを意味します。
合理的な環境整備を決定する最適の方法とは?
通常、適格障害者が合理的環境整備を要求した場合、適切な環境整備は明らかに分かります。 障害者は自身の日常生活や職務経験に基づいた合理的な環境整備を提案できます。 合理的な環境整備が分かりにくい場合、特定するための合理的努力をしなければなりません。 最も良い方法は、障害者が応募プロセスに参加する、あるいは職務上の基本的機能を遂行することができるよう、考えられる環境整備について非公式に話し合うことです。 適切な環境整備を特定できない場合、EEOC、州・地方政府の職業リハビリテーション機関、または障害者を代表する、あるいはサービスを提供している州・地方団体に相談してください。その他リソースとしてJob Accommodation Network(JAN)があります。 JANでは事業主のために個人に合わせた環境整備に関する相談も無料で受けることができます。 電話番号は下記の通りです.1-800-526-7234(V/TTY)。
どのような場合に合理的な環境整備が過度の負担となりますか?
過度の負担となる場合、必ずしも合理的な環境整備を供与する必要はありません。 過度の負担とは、環境整備が莫大な費用を必要とし、広範囲にわたり、相当の混乱を生じ、事業の性格や運営を根本から変えてしまうような場合を指します。 環境整備が過度の負担であると判断される要因は、環境整備の費用、事業主の事業規模、財源、事業運営の種類と構造です。
環境整備が過度の負担となる場合は、過度の負担にならない別の環境整備を特定するよう努めなければなりません。 費用が過度の負担となる場合、環境整備の費用を職業リハビリテーション機関のような外部からの融資でまかなうことも考慮に入れ、同時に費用が州・連邦税の控除あるいは所得控除の対象となるかについても検討する必要がある。 事業主は障害のある応募者または従業員に環境整備を供与する機会を与えるか、過度の負担となる環境整備の費用の一部を負担しなければなりません。
事業主は健康診断を要求することができますか、また、障害について質問することができますか?
下記の事項は法律違反です:
- 応募者に障害者であるかどうか、あるいは障害の種類や程度を尋ねること
- 応募者に正式な採用通知を出す前に、健康診断を要求すること。
事業主は応募者に、障害に関する言葉を使わないかぎり、職務に関連する機能の遂行能力についての質問はできます。 また、事業主は、合理的な環境整備の有無にかかわらず、応募者が職務に関連する機能をどのように遂行するのかについて説明や実演を求めることもできます。
正式採用後、職務に就く前に、同じ職種の応募者全員が受ける場合、事業主は応募者に健康診断を求めることができます。 健康診断の結果によっては、採用に条件をつけることもできます。 ただし、健康診断で障害が明らかになったことを理由に採用されなかった場合、事業主は、職務関連および事業活動の必要性から、採用を取り止めた理由を提示することが求められます。 さらに、事業主は、障害者が職務の基本的機能を遂行できるような合理的な環境整備がなかったことを示すことができなければなりません。
応募者を雇用したら、職務関連および事業活動の必要性からでない限り、健康診断を要求することも、障害についての質問もしてはいけません。 事業主は従業員保健プログラムの一環として、自発的な健康診断を実施することは可能です。
障害についての健康診断の結果および情報は秘密を保たねばなりませんし、独立した場所に医療ファイルとして保管しなければなりません。 州の労働者補償法で要請された医療情報は、その法律を管轄する州政府機関に届け出ることは可能です。
違法な麻薬使用者はADAの下での権利を認められますか?
現在違法に麻薬を使用している人はADAにより保護されません。また違法な麻薬使用を理由として、雇用を拒否、または解雇される場合もあります。 ADAでは、事業主が、現在違法に麻薬を使用しているか応募者・従業員をテストすること、あるいは実証結果に基づいて雇用するか否かを決定することを妨げていません。 ADAの下では、違法な麻薬使用者か否かのテストは、健康診断とはみなされません; したがって、採用前の健康診断は禁じられていません、また、職務関連のテストであるとか、事業の必要性に適合するテストであるということを示す必要もありません。 すなわち、ADAでは麻薬テストの奨励、是認、あるいは禁止を意図していません。
どのようにしてADAは執行され、どのようなことが有効な救済措置となりますか?
職業上の差別を禁じているADAの規則はEEOCによって執行されます。 1992年7月26日以降、障害が原因で差別を受けたことがあると思う人は、合衆国全域に設置されている委員会事務局に訴えることができます。 障害を理由とした差別に対する救済も規定している州・地方の法律がない限り、差別に対する告発は差別を受けてから180日以内に行われなければなりません。 そのような場合、原告には告訴までに300日間の猶予が与えられます。
EEOCは調査を行い、まず調停により訴訟の解決を図りますが、これは1964年の公民権法の第Z編に基づいて提訴された差別の訴えの際の取り扱いと同様の手続きを踏襲しています。 ADAでは同第Z編の救済策も盛り込んでいます。 救済策には、採用、昇進、復職、バックペイ、弁護士費用などが含まれます。 ADAでは合理的な環境整備も救済策の一つとされています。
ADAを遵守したいと考えている事業主をEEOCはどのような方法で支援するのですか?
EEOCは、事業主がADAを遵守することを望んでいると信じており、遵守の方法について充分な情報が与えられれば、進んでこの法律を遵守すると考えています。
委員会は、ADAへの自主的な遵守を促進するため、積極的に技術支援プログラムを実施しています。 プログラムは、事業主が自分たちの責任を理解する一助となり、一方、障害者は自分たちの権利とADAを理解するための手助けとなるよう策定されています。
1992年1月、EEOCは、特定の雇用活動に求められる法的要件の実際的な適用を援助する技術支援マニュアル(Technical Assistance Manual)を、順守を支援する情報資源の要覧とともに、発行しました。 さらに、EEOCは、その他の教材を作成し、事業主・障害者に対するADAに関する訓練を提供し、また、他の団体主催の会議や研修プログラムにも参加しています。 EEOCのスタッフは、情報と支援に関する個別の要求にも対応します。 EEOCの技術支援プログラムは、その施行責任とは別であり、区別されています。 事業主は、EEOCから情報や支援を求めたことを理由に、是正措置をとる必要はありません。
EEOCも、また、誤解のため、事業主と障害者との間にADA要件にかかわる見解の相違や紛争が生じる可能性があることを認識しています。 こうした紛争はしばしば、ADAの公式な執行手続きによるのではなく、非公式な交渉または仲介手続きを通じて、より効率的に解決されます。 したがって、EEOCは、こうした取り組みが法律によって認められた法的権利を奪うことなく、代替の紛争解決策により意見の相違などを解決へと導く努力を奨励しています。
米国障害者法(ADA)に関する追加の質問と回答
質問 ADAと1973年のリハビリテーション法の関係は?
回答 1973年のリハビリテーション法は、連邦政府、連邦事業請負業者および連邦財務支援受領者に対して、障害による差別を禁じています。 ADAの議会通過前に、リハビリテーション法で適用対象になっている場合、ADAは適用されません。 ADAの条項の多くはリハビリテーション法第504条および施行規則を基にしています。 連邦財務支援を受け、第504条を遵守している事業主は、多くの場合、ADAで追加された要件部分を除き、雇用に関するADA要件を遵守していることになります。 リハビリテーション法第503条の連邦事業請負業者としての非差別要請はADAの下でも本質的には同様です; しかし、ADAには規定のない、第503条に定める付加的な差別撤廃措置要件は継続されます。
質問 ある職務に対し数人の適格応募者がいた場合、ADAでは、事業主は障害のある応募者を採用しなければならないと規定していますか?
回答 いいえ。 事業主は最適な応募者を採用することができます。 ADAでは、障害を理由に適格障害者を差別することを違法行為としているだけです。
質問 糖尿病を患っている従業員がおり、毎日インスリンを服用しています。 その結果、雇用には重大な問題はありません。 従業員はADAで保護されますか?
回答 はい。 ある人がADAの下での障害者であるか否かの判断は、薬の服用、補助者の支援、合理的な環境整備といった軽減措置に関係なく決定されます。 ある人が主要な生活上の活動に相当な制約があるような障害を持つ場合、病状、症状またはその影響が改善・是正されるかまたはコントロールできるかに関係なく、ADAの下では保護されます。
質問 従業員が、治癒する可能性がある怪我を腕にしましたが、一時的に職務の基本的機能を遂行できなくなりました。 この従業員はADAで保護されますか?
回答 いいえ。 この従業員は確かに障害がありますが、回復までの期間が限定されていれば、主要な生活上の活動に相当な制約はありませんし、その影響は長期にわたりません。
質問 事業主が従業員の身体的、精神的な障害に気づいていない場合、事業主は合理的な環境整備を供与する義務が生じますか?
回答 いいえ。 事業主の合理的環境整備を供与する義務は、従業員の身体的、精神的障害を知った場合のみ適用されます。 しかしこのことは、応募者または従業員が常に自分の障害を知らせなければならないということを意味するものではありません。 車椅子を使っているといった障害が明らかな場合、雇用者は応募者が言わなくても障害を『知る』ことになります。
質問 合理的な環境整備が適切か否か、また、使用されるべき環境整備の種類をどのように判断するのですか?
回答 これら要件は、多くの場合、適切な環境整備を提言できる障害者の要求に基づいて判断されます。 環境整備はケースバイケースにより供与されますが、これは障害の症状の種類および範囲、さらには職務上の要件がそれぞれ違うからです。 環境整備の種類を選ぶ際の基本となる事項は、環境整備が効果的かどうか、すなわち、その環境整備で障害者が職務の基本的機能を遂行できるか否かです。 主に考慮すべきことは障害者の嗜好をきくことですが、必ずしも最高の環境整備でなくても、また障害者の嗜好に沿う環境整備である必要はありません。 事業主は効果的な環境整備を選択する最終権限者ですから、費用の掛からない取り付け易いものを選択できます。
質問 合理的な環境整備として、障害を持つ従業員を別の職務に移す配置転換はいつ考えなければなりませんか?
回答 障害を持つ従業員が、合理的な環境整備を供与しても現在の職務を達成できない場合に、事業主は、合理的な環境整備があるなしにかかわらず、職務を達成できるポストに配置転換することを考えなければなりません。 配置転換の考慮要件は応募者ではなく、従業員を対象としたものです。 ポストを新設する必要はありませんし、空きポストを作るために他の従業員を解任する必要もありません。 また、障害を持つ従業員を一段上のポストに昇進させる必要もありせん。
質問 応募者あるいは従業員が事業主の提示した環境整備の受け入れを拒否したらどうなるでしょうか?
回答 ADAの規定では、事業主は適格障害者に対し、その人が要求しない、または必要としない環境整備を受け入れることを要求することはできません。 しかし、必要とされる合理的環境整備を拒否された場合、その人は適格者でないと考えることはできます。
質問 事業主が建物内に健康保養施設(SPA)をもっている場合、障害を持つ従業員も利用できるようにしなければいけませんか?
回答 はい。 ADAの下では、同様な状況にある障害のない従業員が利用できる雇用上の便益・権利を、障害を持った労働者にも平等に利用できるようにしなければなりまません。 非労働設備にも適用される合理的な環境整備を供与する義務は、従業員すべてのために、事業主によって提供・運営されます。 これにはカフェテリア、ラウンジ、ホール、社員用輸送手段、カウンセリング・サービス等が含まれます。 既存施設を利用できるようにするのが過度の負担になる場合、事業主は、過度の負担とならない限り、他の従業員が享受していると同等の便益・権利を障害者に対しても供与しなければなりません。
質問 従業員用に研修コースの開発のためコンサルティング会社と契約を結び、その訓練コースを、従業員の一人が利用できないホテルで行う場合、事業主はADA上の責任を負うことになりますか?
回答 はい。 事業主は、ADAで直接禁じられていることを、契約あるいは他の関係を通じても行うことができません。 過度の負担にならない限り、事業主は、障害を持つ従業員が容易にアクセスでき、使用できる場所を選択する必要があります。
質問 事業主として、施設をアクセスできるようにする責任とはなんですか?
回答 ADA第T編では、事業主として、過度の負担にならない限り、障害を持つ適格応募者・従業員のために施設を合理的な環境整備としてアクセス可能とすることが責任とされています。 アクセシビリティは、適格応募者が求職申込み手続きに参加でき、適格障害者が職務の基本的機能を遂行でき、かつ他の従業員と同等の雇用上の便益・権利を享受できるよう確保されなければなりません。ただし、事業所が公共の施設内(例えば、レストラン、小売店、銀行等)にある場合は、ADA第V編では、公共のためのアクセシビリティを確保する義務が別途生じます。 第V編では、公共施設および商業施設(オフィスビル、工場、倉庫等)を新設する場合または既存の建物を改装する場合、アクセシビリティを供与することを求めています。 詳しい情報については第V編を執行する米国法務省から入手できます。 (22ページを参照).
質問 ADAの下では、事業主は違法な麻薬使用者の採用を拒否できますか、あるいは違法に麻薬を使用している従業員を解雇できますか?
回答 はい。 現在麻薬を使用している人をADAは保護していません。 ただし、下記のような人は除かれます
質問 ADAはエイズ患者を適用対象としていますか?
回答 はい。 議会記録は、議会がADAによりAIDS/HIV患者を差別から保護することを意図していたことを示しています。
質問 事業主は、障害のある応募者を採用するかどうか、従業員を維持するか否かを決定する際に、健康面と安全面を考慮することができますが?
回答 ADAでは、事業主は、個人が本人または職場の他の人々の健康・安全を脅かす直接的な脅威を与えてはならないと要求することができます。直接的な脅威とは大きな危害を受ける相当なリスクを意味しています。 事業主は、本人あるいは他者に危害を加える危険性がわずかに高まったことを理由に、採用または解雇を拒否することはできません。 また、憶測による危険性や関係のほとんどない危険性を理由に拒否することもできません。 ある人が直接的な脅威となっているか否かという判断は、その個人の職務の基本的機能を遂行する能力に関する客観的、実証的な証拠に基づいて行わなければなりません。 障害を持った応募者あるいは従業員が自分自身あるいは他人の健康、安全面に脅威となる場合、事業主は、合理的な環境整備を供与すれば、そのリスクを取り除くことができるか、あるいは許容できるレベルまで低減させることができるか、考慮しなければなりません。
質問 事業主は障害を持つ従業員のために保険を追加する必要がありますか?
回答 いいえ。 ADAでは、他の従業員に適用される健康保険と同等の保険を障害を持つ従業員のために供与することを求めているだけです。 例えば、事業主のある治療のための年間健康保険金が一定の限度額に抑えられ、従業員が、その障害のために限度額以上の保険金が必要であった場合、ADAは従業員のための保険金をカバーするための健康保険に加入することを事業主に求めていません。 また、ADAは、既存の健康状態にかかわる適用条件を除外・制限する保険プランの変更を求めていません。
質問 ADAは同法の要件に関する説明文を掲示することを要求していますか?
回答.ADAでは事業主は、応募者、従業員および労働組合員に同法の条項を判りやすい形で掲示することを求めています。 EEOCは、非差別に関するADAおよび他の連邦法の要件をまとめたポスターを事業主に配布しています。 EEOCは、これらの情報を障害者がアクセスしやすい形態で作成したガイダンスも提供しています。
雇用にかかわるADA要件について、詳細は下記に連絡してください:
Equal Employment Opportunity Commission
1801 L Street、NW
Washington、DC 20507
(800)669-4000(Voice)、(800)669-6820 (TDD)
(202) 663-4900 (Voice-for 202 Area Code)
(202) 663-4494 (TDD-for 202 Area Code)
公共施設と州・地方政府のサービスにかかわるADA要件について、詳細は下記に連絡してください:
司法省
Office on the Americans with Disabilities Act
Civil Rights Division
P.O. Box 66118
Washington、DC 20035-6118
(202) 514-0301 (音声)
(202) 514-0381 (TDD)
(202) 514-0383 (TDD)
新築および改築の建物のアクセス可能な設計にかかわる要件について、詳細は下記に連絡してください:
建築と移動のバリア
Compliance Board
1111 18th Street、NW
Suite 501
Washington、DC 20036
800-USA-ABLE
800-USA-ABLE(TDD)
交通関係にかかわるADAの義務についての詳細は下記の通りです:
運輸省
400 Seventh Street、SW
Washington、DC 20590
(202) 366-9305
(202) 755-7687 (TDD)
電気通信にかかわるADA要件について、詳細は下記に連絡してください:
Federal Communications Commission
1919 M Street、NW
Washington、DC 20554
(202) 634-1837
(202) 632-1836 (TDD)
事業における障害関連の連邦税控除および所得控除に関する詳しい情報は下記にコンタクトしてください:
Internal Revenue Service
Department of the Treasury
1111 Constitution Avenue、NW
Washington、DC 20044
(202) 566-2000
この小冊子は点字、大きめの活字、テープ、コンピュータ用の電子ファイル等で手に入れることができます。 Office of Equal Employment Opportunity on(202)663-4395(voice)or(202)663-4399(TDD)、or write to this office at 1801 L Street、N.W.、Washington、D.C. 20507まで連絡してください。