双極性障害とは?
双極性障害は、躁うつ病とも呼ばれるうつ病の一種で、重い躁状態とうつ状態が両方見ら
れます。
患者の状態は、極端に「ハイ」で過敏な状態から悲しく絶望的な気分に変わることがあり、定期的な通常状態をはさんで、今度は逆の変化をします。
思春期から青年期にかけて発症するのが一般的で、症状は一生続きます。
双極性障害は、病気であるということに気づかないことがあり、数年、場合によっては数十年も、不必要に苦しむことがあります。
アメリカでは、200万人以上の成人が、双極性障害にかかっています。
血縁関係に関わりがあるようで、多くの場合遺伝により受け継がれると考えられています。
精力的な研究が行われていますが、この病気を引き起こす遺伝子欠陥は特定されていません。
双極性障害の発見
躁とうつの周期的変化を始めとする双極性障害。
躁状態 (分裂期を含む) の兆候および症状:
活力、行動性、競争意識が増し、落ち着きがなく、早口になること
極
度の「ハイ」もしくは多幸感
極
度の神経過敏と注意散漫
睡
眠の必要が減ること
能
力や権力に関する非現実的な思い込み
判
断力の欠如 (個性の範囲を超えるもの)
異
常な振る舞いを継続的に行うこと
性
的活力の増加
薬
物乱用 (特にコカイン、アルコール、睡眠薬)
挑
発的な、でしゃばりな、あるいは攻撃的な振る舞い
否
定的な情報をすべて拒否すること
うつ状態 (分裂期を含む) の兆候および症状:
持続的な悲しみ、不安、空虚感など
絶
望感や悲観
罪
の意識、虚無感、無力感など
性
交を含む、日常生活への興味や満足感の減退
活
力の減退、疲労感、「鈍化」など
集
中すること、記憶を思い出すこと、判断を下すことなどの困難
落
ち着きのなさあるいは神経過敏
睡
眠障害
食
欲減退、体重減少あるいは増加
肉
体的な病気を原因としない、痛みなどの慢性的な身体症状
死
や自殺について考えること (自殺未遂を含む)
*出典: 出典:National Institute on Mental
Health、Bipolar Disorder、Publication Number 96-3679 19995
http://www.nimh.nih.gov/publicat/bipolar.cfm
仕事場では、双極性障害: 考慮すべき問題点
1. どのような症状や機能制限が見られるのか?
2. 機能制限は患者ないし患者の職務遂行にどの程度影響を与えているのか?
3. 機能制限のために特に問題が出る職務は何か?
4. 環境整備の必要性について、患者本人と相談したか?
5. 問題を避けるために、どのような環境整備が利用可能か?
環境整備の候補案を決定する際に、Job Accommodation Networkなどのリソースはすべて活用されているか?
6.
すでに実行中の環境整備の効果を評価し、他の環境整備が必要かどうか判断するための、機能障害患者との定期的な打ち合わせは行われているか?
7. 上司や同僚に、意識向上のための研修の形で、精神障害に関する教育を行ったか?
双極性障害患者への環境整備案
注意:
双極性障害患者において以下の機能障害や症状の一部、場合によっては全部が進行することがあります。 機能障害は患者によってさまざまです。
双極性障害患者すべてが職務遂行に環境整備を必要とするわけではなく、必要な場合も、ごく簡単なものが大半であることに注意してください。
以下は考えられる可能性のほんの一例です。 この他にもたくさんの解決法や検討材料があります。
勤務中の体力維持:
柔軟なスケジュールを認める
通
常よりも長いもしくは頻繁な休憩を認める
新
しい職務を覚えるための時間を余分に与える
自
分のペースでの職務負担を認める
休
憩が必要な時のために、支援できる体制を取っておく
カ
ウンセリングのための休暇取得を認める
介
護士やジョブコーチの利用を認める
1
日のうち、あるいは週のうち、部分的に自宅勤務を認める
パー
トタイムにする
集中力の維持:
職場の混乱を抑える
仕
切り板か個室を用意する
ホ
ワイトノイズもしくは環境音楽機器の利用を認める
自
然光を多くとり入れるか、フルスペクトラムの光源を利用する
自
宅勤務を認め、必要な機器を用意する
勤
務時間が乱れないような勤務計画
頻
繁に休みを取ることを認める
大
きな任務は複数の小さな任務に分割して与える
必
要最低限の職務機能だけを含むように、職務を再編する
計画的な行動および締め切り遵守の困難:
毎日To Doリストを作成して、完了した項目に印をつける
会
議や締め切りに印をつけたカレンダーを利用する
重
要な締め切りは何度も確認する
電
子手帳を利用する
大
きな任務は複数の小さな任務に分割して与える
上司との協調:
誉めたり、肯定的な情報を与える
指
示を書面で与える
責
任や成果について何が望まれるのか、それを果たせない場合どうするかを書面にしておく
上
司とのコミュニケーションをオープンにする
長
期目標と短期目標をそれぞれ書面にしておく
事
前に問題解決計画を立てておく
環
境整備の効果を評価する手順を定めておく
ストレスや感情の制御の困難:
誉めたり、肯定的な情報を与える
カ
ウンセリングや労働者支援プログラムに相談する
医
師などに電話して支援を求めることを認める
同
僚や上司の意識向上のための講習を行う
介
助動物の利用を認める
同
僚による支援を後押しする
労働時間の問題:
健康問題があるときは退社時間を柔軟にする
自
分のペースでの職務負担と、柔軟な労働時間を認める
自
宅勤務を認める
パー
トタイム勤務を認める
勤
務しなかった分を後から補うことを認める
変化への対応:
双極性障害患者は職場環境の変化や上司の交替に対応することが困難な場合があるということを認識しておく
引
き継ぎが円滑に行われるよう、労働者同士や、前任と後任の上司の間でのコミュニケーションをオープンにしておく
1
週間から1カ月に一度患者とミーティングを開き、職場の問題や生産水準について話し合う。
双極性障害患者への環境整備例
ある印刷会社の管理職職員は、精神疾患のため注意力と記憶力が低下している部下への環境整備法につい
てJANに問い合わせた。 この部下の職務は、印刷機の操作、予備部品の管理、ファイリング、注文の確認などであった。
彼は仕事に集中したり、どの仕事を終えているのかを覚えておくことができなかった。
JANのコンサルタントは、1日の職務の一覧を印刷して、わかりやすい目印でチェックをつけていくことを提案した。
一時間ごとにアラームを鳴らして、他にするべき仕事がなかったかどうか思い出すように促す時計の利用も提案した。
ある双極性障害患者の労働者から、JANのコンサルタントに電話相談があった。この患者は、短期記憶
と集中力に障害があった。 忙しいオフィスで秘書として勤務していた。
追加の訓練時間、書面での指示、1日単位のチェックリスト、1日1時間の電話を取らずに職務に集中する時間の確保などを請求するよう提案した。
ある大うつと双極性障害患者の労働者は、忙しい中央銀行での勤務が困難であった。
大勢の部下を指揮し、カスタマーサービスを提供し、一日を通してオフィス全体の管理をしなければならなかった。
環境整備として、より小規模で忙しくない支店への転属を受け入れることにした。 賃金や管理職としての地位に変更はなかった。
問い合わせ先リスト
(完全なリストではありません)