遺伝カウンセリングの相談内容

染色体や遺伝子がかかわる病気や特性・体質には様々なものがあり、遺伝カウンセリングで相談される内容は特定の診療科に限定されません。ここでは例として4つの領域をあげて遺伝カウンセリングの相談内容を紹介します。認定遺伝カウンセラー®(CGC)は、診療領域にかかわらず、臨床遺伝専門医や各診療科の医師と連携して患者さんや家族を支援しています。

妊娠前・妊娠中

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妊娠を考えている、あるいは妊娠中の方々から色々な相談がありますが、出生前検査についての質問は少なくありません。出生前検査にはいくつかの種類があり、分かること、検査のリスク、受ける時期(妊娠週数)などが違います。出生前検査には限界があり、すべての生まれつきの病気が分かる検査はありません。出生前検査にかんする遺伝カウンセリングでは、検査でどのようなことが分かるのか、それが何を意味するのかを知ることが基本になります。その上で、その検査がクライエントにとって必要なのか、検査結果が出た後のことも想像しながら一緒に考えます。遺伝カウンセリングを受けて、検査は必要ないと考える方もいます。
特定の病気の遺伝的リスクや再発リスクについての相談にも応じています。赤ちゃん(胎児)の病気が分かった後のご両親に寄り添い、支援します。生まれた後も継続して心理社会的サポートが受けられるように小児科の医療従事者と連携します。

こどもの先天性・遺伝性の病気

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お子さんの生まれつきの病気や特性にかかわる遺伝カウンセリングでは、お子さんの両親がクライエントになります。お子さんの病気や遺伝子・染色体との関連などについて詳しく丁寧に説明します。染色体や遺伝子検査を検討するときは、検査がお子さんや家族にとって役に立つかを一緒に考えていきます。検査を受けた場合は、小児科の主治医と連携しながら検査結果とそれから得られた情報について解説し、結果が他の家族に与える影響についても話し合います。お子さんの病気の受けとめや検査結果の理解に時間がかかることもありますので、何度も話し合うことも珍しくありません。
また、病気のあるお子さんが成長していく過程で自分の病気と健康管理について学ぶ機会が持てるように、さらに将来結婚しこどもをもつことを考えた時に自分のもつ特性がどのように次世代に影響するのかを理解できるように、お子さんの成長と状況に合わせて継続的に支援します。

遺伝性の腫瘍(がん)

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日本ではおよそ2人に1人が生涯のうちに何らかのがんになると言われています。多くのがんは遺伝性ではありませんが、約5%は遺伝性腫瘍(遺伝性のがん)の関連がんと考えられています。様々な遺伝性腫瘍があり、それぞれ原因となる遺伝子やがんになりやすい部位(臓器)と発症リスクが異なります。遺伝性腫瘍と診断されることで、その原因やがんリスクに合った治療や予防対策が選択できるようになります。
がんの遺伝についての相談では、がんの既往歴や家族歴を詳しく確認し、遺伝性腫瘍の可能性について評価します。遺伝性腫瘍について、関連がんのリスクだけでなく、がんの早期発見やリスクを低減するための対策についての情報提供を行います。遺伝性腫瘍かどうかを調べる検査の選択肢についても話し合います。
遺伝カウンセリングでは、遺伝性腫瘍と診断された患者さんだけではなく、まだがんになっていない血縁者からの相談にも応じています。血縁者の遺伝的リスクを評価し、適切ながん対策や検査の選択肢について情報提供します。

遺伝性の神経・筋疾患

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遺伝性の神経・筋疾患の中には成人してから発症し、徐々に進行するものがあります。有効な治療法が確立していない場合が多く、難病に指定されていることもあります。患者さんは自身の病気や生活だけでなく、家族へ遺伝する問題を含めて様々な困難を抱え、心理的にも苦しい状況になることがあります。 遺伝カウンセリングでは、病気の確定診断のために遺伝子検査を検討するとき、あるいは診断が確定した患者さんからの困りごとや心配ごとの相談にも対応しています。同様に、患者さんの家族からの相談にも対応しています。その時点で症状のない血縁者を対象とする検査(発症前の検査)について話し合う際には、検査を受けることのメリットとデメリットを一緒に考え、来談者が納得のいく決定ができるようにサポートします。検査結果が本人や家族に与える様々な影響、倫理的な問題、社会的な問題なども考慮します。