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ブラ、ブレブの換気について
日時: 2009/01/08 18:00:29
名前: CD

はじめて質問させていただきます。私はまだまだ呼吸器初心者のMEです。初歩的な質問ですがよろしくお願いします。
当院ではSLOW-PV等は測定できませんので、こちらの掲示版で議論されている様な、理想的な換気はできておりませんが、高めのPEEPと40cmH2Oを超えないPCVでなんとか、肺障害と無気肺を起こさない換気を心がけています。そのような中、以前巨大ブラを伴った呼吸不全の方が来られました。酸素化不全でしたので、高めのPEEPをかけたかったのですが、ブラがありましたので、PIPを上げたくないとのことで、高O2で我慢して乗り切りました。ブラ・ブレブで気胸が起こりやすいことは分かるのですが、実際いくらくらいの圧で、破れてしまうというデータはあるのでしょうか?よろしくおねがいします。

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Re: ブラ、ブレブの換気について ( No.1 )
日時: 2009/01/08 19:28:46
名前: ももたろ・う

ブラやブレブがいくつの圧で破綻するか、それは人それぞれであり、また人工呼吸の換気条件(モードではなく、設定詳細部分)や、個々の生体により異なるのはわかりますね?。

そのためいくらの圧で破けるかというのは、経験上からも答えることが出来ないのが現状です。

しかし少しだけ、そんな状態の患者さんでの人工呼吸で役立つ情報は記しておきます。

巨大なブラに成長している場合は、普段の生活のうえでそこまで成長したということの結果です。ブラに対する陽圧の危険性は今更ではありませんが、普段の自発呼吸環境で気道内が陽圧に曝される条件が全く存在しないかといえばそうではなく、例えば咳をした場合などは最大で100cmH2Oの圧がかかるとも言われています。実際にそんな環境で生活してきたのですから、ブラが成長するのです。またブラが融合して器質化すれば少しの陽圧でも耐えられるようになります。胸腔内膜に癒着してブレブになればもっと強くなります。

逆に小さなブラではまだまだ成長していないこともあり、意外に低い陽圧でも破綻することがありました。例をあげれば30cmH2Oに満たない気道内圧でも気胸を起こした症例を何例か経験しています。

巨大ブラでは50cmH2Oのrecruitmentでも破綻した経験はありません。

Slow Flow P-Vは肺気腫などブラが存在する場合には、特に巨大ブラが存在する際にはあまり役立ちません。ブラのために見かけ上のコンプライアンスは大きくなっています。開通圧も低い圧から開くのが分かり切っているので、数値上で測定結果が良い値になってしまいます。見かけ上で騙されます。

PEEP設定の指標となる一番良いものはEtCO2です。PaCO2の値と解離するのは当然ですが、一番近い値になるPEEPを探し出すのが良いでしょう。

そうはいっても全症例で血ガスが計れるとも限らないので、簡単に求められる方法し記しておきます。これは私が行うセミナーで示していますが、教科書にも論文等の文献にもありませんので、もし詳細が知りたい場合には私のとことへ見学に来られるか、セミナーに参加していただくことでしかお伝えする方法がないので、その点はご了承願います。(セミナー関連は今年のアカデミーを請け負わないので、NPO呼吸管理運営機構だけになってしまいます)

前置きが長くなりましたが、人工呼吸にメインストリームのEtCO2を使用してください。人工呼吸器に付属してあれば、タイムチャート上の表現でベストなのですが、機種が限られているので。ベッドサイドモニターでもかまいません。メインストリームを推奨するのは測定タイムラグが少ないので、サイドストリームを使用するよりも便利です。メインストリームがなければサイドストリームでもかまいません。

ここでEtCO2の値は普通に測定されていれば参考程度でしかないので見なくてもかまいません。重要なのは波形です。

波形が狭窄パターンを示す場合、プラトーを呈するまでPEEPを増やしてください。ただし喘息重責発作などがある場合にはプラトーを呈することはないので、PEEPを上げすぎない様に注意してください。

プラトーを呈する最低PEEPが見つかったら、今度は人工呼吸の呼気中に患者さんの胸を呼気に合わせて、スクウィージングのように押してください(Chest compression)。その時にEtCO2波形を観察しながら行うことは忘れないでください。

ブラがあり、換気に関わってもガス交換に関わらないブラが多く存在する場合にはChest compressionの際にEtCO2波形が低くなります。これは死腔換気により呼気二酸化炭素が希釈されるためです。ブラがあっても、ブラ周辺の肺毛細管に血流が存在する場合には、通常の換気では呼出されない肺胞気が、Chest compressionで呼出されるようになり、EtCO2波形はプラトー部分の位置を超えて立ち上がります(Rise up)。(これらはプラトーを呈するEtCO2波形でもPaCO2とEtCO2(分圧)が解離する大きな理由の一つです。よく差が大きいと機器の測定精度批判をされてしまう事柄ですよね) そのRise upがいちばん少なくなる最低のPEEPがブラの存在を考慮した際のベストなPEEP設定になります。しかしこれがあくまでも換気力学的、物理的なベストとなるだけで、臨床上で最適かどうかは別になります。血圧やその他の要素が絡むことになるので絶対の値ではないことは忘れないでください。(患者さんの予後を考えれば、何らかの方法で循環を維持することの方が大切で、当施設ではそのあたりを医師が理解を示してくれるのでとてもありがたいのですが、全施設がそうとは限らないので・・・)

その上で最高気道内圧を制限した人工呼吸を行えば、PEEPが高くなっても最高気道内圧は制限されているためDriving Pressure(PIP-PEEP)が少なくなり、肺保護には有効な環境になります。

PEEPを低く設定した場合には、Driving Pressureが大きくなり、いくら最高気道内圧を制限したところで、毎呼吸で加わる換気圧は大きく、特にコンプライアンスの大きなブラにに加わる換気絶対値圧が大きく、ブラのストレスが相当なものになってしまいます。

人工呼吸を行わなくてはならないほどになった呼吸不全での巨大ブラというものは、思ったほど弱い物ではなくいのですよ。Driving Pressureを少なくした人工呼吸でブラが破綻した経験は・・・・・無いなぁ。

小さなブラでは低い圧で気胸を起こした経験はあります。

以上、参考までに。

それからこれは最適なPEEP設定を施すために求める高度な考え方になると思いますが、当方もまだ施行出来る環境にないので、これを読んでいる皆様で興味のあるかたは試してみてください。

EVITA-XLの最新バージョン(Ver.7.0)にタウイー(τe)という測定機能があります。その測定値の呼気時間チャート上に示されるATC波形のトラキア圧(気管先端部分=分岐部圧)が換気可能な肺胞部分を除いた内因性PPEE圧(Auto PEEP)になるはずなので、呼気波形が異常のないパターンを前提にした形状であればτeが一番短くなる時間のトラキア圧、その値が物理的理想的なPEEPになるはずです。

私のところでも試してみたいのですが、某社から見れば格下secondaryの当方です。頂上扱いprimaryの某病院ICUには導入され格差を見せつけられてしまいした。そんな格下の当方には導入できる環境にあるはずもなく試すこと以前に触れることさえ出来ません。出来る環境にあるかたは是非試して、そして詳細を教えてください。
Re: ブラ、ブレブの換気について ( No.2 )
日時: 2009/01/09 00:55:05
名前: CD

非常にわかりやすい説明をありがとうございました。幸い、当院にはポータブル式のETCO2モニターがありますので、今後症例がありましたら、是非試してみたいと思います。
PEEPを上げることによりdriving pressureを小さくして肺保護するという発想は恥ずかしながらありませんでした(PIPを下げることばかりに重点を置いていました)。VOLUMEによる弊害があるのは、もちろん分かっておりますが、とはいえ、CO2排出の為にはある程度の圧較差が必要だと思います。SLOW P-Vが測定できない場合、正確な肺胞の開くタイミングと閉じるタイミングは分からないと思うのですが、その場合はやはり、有効な換気が得ることができるPEEPを設定して、血ガスを見ながら可能な限りPIPを下げるという考え方でよろしいでしょうか?(血ガスだけを見て呼吸器設定をしている人に怒っているももたろうさんのコメントを何回も拝見しているので、このような質問は非常に恐縮です)
よろしくお願いいたします。
Re: ブラ、ブレブの換気について ( No.3 )
日時: 2009/01/09 12:06:36
名前: ももたろ・う

>CO2排出の為にはある程度の圧較差が必要だと思います。SLOW P-Vが測定できない場合、正確な肺胞の開くタイミングと閉じるタイミングは分からないと思うのですが、その場合はやはり、有効な換気が得ることができるPEEPを設定して、血ガスを見ながら可能な限りPIPを下げるという考え方でよろしいでしょうか?

基本的には何も問題にならないと思います。

CO2排出には確かに圧差は必要ですが、それ以前に換気エリアが確保されているか否かが問題になってきます。要するに無気肺が改善され、たとえ換気に預かれない肺胞エリアだとしても、エアースペースとしての開通が得られているかが問題になってきます。

換気エリアが確保されていれば二酸化炭素の拡散も確保されます。その良い例がAPRVです。無気肺になりやすい末梢気道が内因性PEEPを獲得してしっかりと開存すれば二酸化炭素は恐ろしい勢いで減少します。正常範囲で獲得維持することが難しいくらいです。そのためには末梢エリアを開通させるためのRecruitmentの手技と、開通を維持するためのPEEPが重要になってきます。

因みに当方で肺に問題のない心臓血管外科手術後の患者さんに施すPEEPは(この場合slow flow P-Vで調べていますが)最低で7〜8cmH2O、多いときには12cmH2Oにも及んでいます。これらのPEEP設定に関しては、又は患者さんの胸の動きや換気状況を正しくアセスメント出来なければ、そして背景や状態を正確に伝えられなければ、一般的には施されにくいレベルのPEEP圧です。また症例の多くは、胸部、腹部、前側、背側で呼吸音(換気音)が等しく聴取されたりもします。場合によっては背側の方が呼吸音が良い時があります。それによってもたらされるものは、換気-血流比の改善と抜管後の無気肺予防につながっています。これらを目の当たりにする、過去の経験的常識にとらわれているスタッフ(医師を含め)は驚き、そして支持していただけます。

これらは換気エリアを確保、改善して酸素化効率を改善するだけでなく、二酸化炭素拡散効率をも改善しているからこそ得られる結果です。

これらを経過して、それでも二酸化炭素が蓄積するような重症症例の場合にはPermissive hyper capneaの手技が選択されます。

現在は先に記したようにDriving pressureを少なくして肺を保護するとともに、内因性PEEPを獲得しながら換気回数を増やして管理する手法も取り入れられています。この場合には見た目のPEEPは少ないように見えますが、実際には内因性PEEPを利用しているので、PEEPの多いエリアと、PEEPの少ないエリアが存在し、外的にHigh PEEPを施している時よりもDriving pressureは大きくなります。Driving pressureを必要とする症例も存在しています。

>(血ガスだけを見て呼吸器設定をしている人に怒っているももたろうさんのコメントを何回も拝見しているので、このような質問は非常に恐縮です)

恐縮することはありませんよ。上記の様な事柄を理解したうえで(読んだだけでも違います)血ガスを指標にPCVを行っているのと、血ガス結果で設定を動かすVCVユーザーとは雲泥の差があります。そんなかたがたと比較したら貴殿は何百倍も良いと思いますよ。
Re: ブラ、ブレブの換気について ( No.4 )
日時: 2009/01/13 08:19:05
名前: CD

わかりやすい説明をありがとうございました。また、初歩的なことをお聞きすることもあると思いますが、その際はよろしくお願い致します。

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