ストレスや筋肉の使いすぎによる肩凝りは、通常僧帽筋に現れる。
ー僧帽筋は、下行部、横行部および上行部の3部に分けられる。
- 各部にしこり(索状硬結)を伴うトリガーポイントの好発部位があり、トリガーポイントを圧迫すると関連痛が現れる。
- 下行部と横行部のトリガーポイントを圧迫すると、頭、頸部に関連痛が現れる。
- 上行部のトリガーポイントを圧迫すると、肩から首にかけて関連痛が現れる。
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- 精神的な緊張が高まった時に肩に力が入ると、これらの筋が持続的に収縮する。その結果、血流障害を伴う筋収縮による発痛物質の蓄積が起こって、筋肉痛:肩凝りとなる。
- この段階で肩凝りが始まっている。肩の筋肉が収縮した状態が持続したり、反復したりすると、ピンと張った筋線維の束:しこり=索状硬結が現れる。このしこりにトリガーポイントが見出され、そこを圧迫すると離れた場所に関連痛を感じる。→筋筋膜痛症候群
- 肩たたき、マッサージ、筋のストレッチが筋筋膜痛症候群の拘縮を解除し、肩凝りがやわらぐ。
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- 僧帽筋の筋力が弱い女性の方が肩こりになりやすい。僧帽筋では、速筋と遅筋の両方の筋線維の直径は、男性よりも女性の方が細い。
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肩関節と直立歩行
- ヒトは直立して歩行し、手を自由に使えるようになって、大きな脳をもつことができた。それを可能にする骨格の変化が起こった。その代わり、肩を持ち上げる必要が生じ、僧帽筋、肩甲挙筋 Levator scapulae muscle に負担がかかる。
- ヒトの肩関節は、あらゆる関節の中でもっとも広い運動範囲を持っている。
- ウマやイヌは鎖骨を持たない。これらの動物が四足で直立すると、肩関節の関節窩が水平になる。
- 鎖骨を持つ人の胸郭は横幅が広く前後径が短くなっている。そのため人の肩関節は横に移動し、腕を360度回すことができる。その代わり、ヒトが直立歩行すると肩関節の関節窩がほぼ垂直になる。
- 肩関節に上肢がぶら下がっているので、肩が下がりやすい。肩関節の関節法の上部を複数の靱帯が補強している。これらをさらに回旋腱板が補強している。
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欧米人には「肩凝りがない」と言われるが、同様の症状は欧米にもみられる。
- 日本人の考える肩凝りの「肩」は首の付け根から肩の関節までの間の部分であるが、この部分は欧米では、首あるいは胸郭に含まれる。
- 欧米人にとっての「shoulder」は肩関節の周りに限られるので、肩凝りがない。
- 英語の「shoulder pain」や「stiff shoulder」は、「肩の関節部」「肩先」や「肩甲骨」を中心とした部分の痛みや凝りを指し、これらはスポーツや事故による痛みや凝りを意味することが多い。
- 「stiff neck(首の凝り)」あるいは、「Trapezius Myalgia(僧帽筋の筋肉痛 )」と呼ばれる痛みが、日本人の肩凝りに近い表現。
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