基礎の基礎 │浸透圧osmotic pressure│

  • 溶質は通さないが,溶媒は通す性質をもつ半透膜を隔てて濃度の異なる溶液が接した場合,低濃度溶液の溶媒が高濃度溶液の方に拡散しようとする現象を浸透現象といい,その圧力を浸透圧という。

  • 浸透圧とは、細胞膜で隔てられた濃度の異なる2液間で、濃度の低い方から高い方へ水が移動する力。

    浸透現象 osmosis: 半透膜を通って物質が拡散する現象
    溶液の浸透圧: 拡散する物質が溶媒であるとき、半透膜の溶液側に発生する圧力

  • 同一溶液であれば、浸透圧は溶液中の「粒子」の重量M濃度に比例する。
    溶質の種類に関係なく、M濃度が同じであれば、浸透圧も同じ。(←1Mの物質を構成する分子数は同じ)
    溶解中にイオン化するものは注意が必要!

  • 浸透圧の単位:osm (オスモル)、mosm/kg・H2O
     1 osm=1Mの理想溶液と等しい浸透圧
     1 mosm/kg・H2O=水1 kgに溶けている溶質のM数

  • 希薄溶液の浸透圧 π=cRT (von't Hoffの公式)
      c=容量モル濃度,R=気体定数(0.082),T=絶対温度
       ただし塩化ナトリウムのような電離する物質では電離度αを考慮する必要がある。
    血漿285 ± 5 mosm/kg・H2O
  • 溶液中のNaClはNaとCLに解離するので、1Mの浸透圧は2 osmとなる。
     Na=22.990 Cl=35.453 NaCl=58.452
     生理食塩水 0.9%食塩水=9*1000/58.452=154.0 mM/kg
     この濃度における塩化ナトリウムの解離係数:0.93
       (154*2)*0.93=285 mosm/kg
    (解離係数がわからないが、だいたい ↓
     等張高張高張
    食塩0.9 %3 %5.8 %
    mM154.0 mM513.3 mM1 M
    浸透圧285 mosm950 mosm1851 mosm
  • グルコース液は電離しない。 分子量=180 だいたい ↓
     低張等張高張
    グルコース液1 %5 %18 %
    mM55.6 mM277.7 mM1 M
    浸透圧55.6 mosm277.7 mosm1000 mosm
  • L グルタミン酸ナトリウム 分子量=187.13 解離係数? 青字文献から引用 ↓
     低張等張高張高張
    glutamate1.87 %2.66 %9.8 %18.7 %
    mM100 mM143 mM500 mM1 M
    浸透圧186 mosm285 mosm950 mosm2148 mosm
生理学用語集 >南江堂
(日本生理学会編)
浸透圧 osmotic pressure; 半透膜を介して浸透する溶媒の動きを防ぐために要する圧力
浸透圧クレアランス osmolar clearance; 尿に溶質を排泄するのに必要な血漿量。等張尿の浸透圧クレアランス(Cosm)は、尿(V)に等しい。
浸透圧受容体 osmoreceptor; 視床下部にあってわずかの血漿の浸透圧上昇に反応して興奮する受容体。
浸透圧性下痢 osmotic diarrhea; 吸収されない物質の摂取、または細菌などの作用で、そのような物質の産生が増えて起こる下痢
浸透圧抵抗 osmotic resistance; 赤血球の低浸透圧性溶血に対する抵抗
浸透圧曲線 osmotic fragility curve; 赤血球浮遊液の浸透圧と溶血度の関係曲線
浸透圧濃度 osmotic [osmolar] concentration; 浸透圧的に有効な溶質粒子の総濃度
浸透圧利尿 osmotic diuresis; 尿細管で再吸収されにくい物質の負荷で起こる利尿
浸透(現象) osmosis; 半透膜を通じて、水が溶質濃度の低い溶液から濃度の高い溶液に向かって移動する現象


W. Pfeffer 1845-1920 ドイツの植物学者。フェロシアン化銅の半透膜と水銀柱を使った浸透圧を用いて、稀薄溶液の濃度と浸透圧の関係,温度との関係を測定した。 参考
J. H. Van't Hoff 1852-1911 オランダの科学者、第1回ノーベル化学賞受賞者。化学熱力学の法則および溶液の浸透圧の発見。



・前視床下部にある浸透圧受容体(osmoreceptor)は,血漿浸透圧が高まる(280mOsm/l以上)とADHの分泌を増加させる。
  浸透圧のページ
  アルゼット浸透圧ポンプ








脳脊髄液   

Pain Relief