81)多発性硬化症の理学療法:臨p377、実p115、講義プリント

・MSにより引き起こされる機能障害は、
1)対麻痺、
2)四肢麻痺、
3)片麻痺、

4)単麻痺、
5)感覚麻痺、
6)小脳性運動失調、
7)視覚障害、
8)膀胱直腸障害、
 
9)精神障害、
10)その他:呼吸障害、褥瘡、関節拘縮
など
のように非常に多彩である。従ってこれらの各障害に対するリハプログラムが立てられることになる。

・薬物療法:ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤

・基本的には、
 1)脊髄障害での痙性対麻痺や四肢麻痺、排尿障害
 
 2)脳血管障害での片麻痺

 3)脊髄小脳変性症での小脳性運動失調(あるいは後索性運動失調)
などに準じたプログラムとなる。

・リハプログラム作成時の問題点・注意点としては以下のものがあげられる。

 1)運動障害と視覚障害の併発などの重複障害を示すこと。
 2)過労を避けた適度な運動訓練。
 3)入浴・温熱などで症状の悪化が少なくない為、それらを治療に使う場合の注意。
 4)原因が分からなく症状の変動をみることがあること。
 5)視覚障害では完全失明は少ないが、照明を明るくしたり盲人杖を与えたり通路の障害を除き
  手すりの取り付けなど環境の整備をし安全に気をつけること。

 6)感情の変動が激しくなる場合があり心理的サポートが必要。
 7)若年成人が罹患することが多く、結婚あるいは性についてのリハプログラムが 必要となることがある。 
 8)若年成人が多く、職業復帰・職業訓練あるいは自動車運転の訓練が重要なことがある。

投与されている薬剤の効果と副作用の確認(ステロイドを減らしている時期は運動量も減らす)

・高温環境、高体温は神経ブロックを招き脱力を誘発しやすい。温熱療法は原則として禁忌である。

運動負荷は過労を避ける
褥創管理:知覚障害では予防が大切。
・再発に関与する因子(ストレス、過労等)に注意、肥満に注意
            「多発性硬化症」:新p1183、ベp309

・(15ー50歳)特に30歳代、女性に多い脱髄疾患
 
(中枢神経系の髄鞘脱落を主病変とする)である。原因は、自己免疫説、遅発ウイルス感染説が有力。

症状:病巣が複数の部位に存在(空間的多発性)、
    緩解と増悪をくり返す(時間的多発性)、
    深部腱反射の亢進、バビンスキー反射等病的反射の出現、有痛性強直性痙攣、レルミット徴候、小脳失調等

「視神経脊髄炎:Devic病」はMSの一部であり、日本ではこの型が多い。

・視神経障害と横断性脊髄炎がおこる。 

82)ステロイドの副作用:南山堂医学大事典P1038、新P938

・継続により生命予後に影響をもたらす重篤な副作用

 1)DM
 2)消化器潰瘍
 3)骨粗鬆症
 4)無菌性骨壊死
 5)白内障
 6)感染症の誘発
 7)ステロイド精神病
 8)高血圧及び血栓症
 9)ステロイドミオパチーなど。

・軽症な副作用

 1)多毛、
 2)満月様顔貌、
 3)肥満
,4)ステロイド紫斑など。

83)PMDの理学療法:臨p386、実p122

障害の進行に合わせた適切なマネージメントにより、QOLを高めることがポイントになる。
以下のような障害期に応じたプログラムを作成する。

1)歩行期(Stage1〜4):
  拘縮の進行遅延と筋力維持による歩行能力の延長が中心
となる。
  従って短縮しやすい部位のストレッチ、姿勢・肢位の左右差の矯正、 疲れない範囲での筋力維持などを行う。
  またこの時期には可能な限り普通校に通わせることも大切である。

2)装具歩行・手動車椅子期(Stage5〜6):
  装具による歩行・立位の維持、座位 保持が課題
となる。

  a.装具歩行:廃用症候群の予防と心理的効果の面から重要である。
  歩行が不安定となったり(1日3回以上転倒)、左右の非対称性や尖足・内反傾向がみられたら装具を処方する。
  平行棒内で練習後、日常生活の中で2時間以上装着する。

  b.装具起立:装具歩行が困難となれば、アライメントの調整が容易な側彎出現前に起立用装具を処方し、1日15分の起立を行う。

  c.座位保持:装具歩行は移動手段としての実用性が低くなるので手動車椅子を処方する。
  これは駆動性とともに脊柱変形の予防になるが、必要に応じて座位保持具を併用する。
  和式生活では座椅子・低床式車椅子も考慮する。

  d.動作訓練:四つ這いやずり這いは、歩行不能後の移動手段として重要であり積極的に行う。

3)電動車椅子期(Stage6〜8):
 車椅子駆動が非実用的となったら生活範囲の拡大とQOL向上のために電動車椅子を考慮
する。
 上肢は近位筋の弱化に伴う到達機能障害に加え拘縮も目立ってくる。
 ストレッチやスプリントの工夫とともに、機器の活用によるADLの容易化とQOLの向上をはかる。
 この時期は介護量や医療的ケアの増大により在宅生活が困難となるため、
 支援体制の強化と入院を含めたケアの見直しが必要となる。

4)末期(Stage8):
 呼吸管理を核とした全身管理と心理的ケアによるQOLの維持・向上が課題
となる。

  a.呼吸管理:肺胞低換気の改善を目的に、体幹変形の予防・徒手胸郭伸張
  呼吸筋力の維持・効率的な呼吸法の習得・排痰・気道感染の予防を行う。
  呼吸不全末期には人工呼吸器の使用で生存期間が延長する。

  b.QOL:疾病の進行や死への不安から、なげやりや諦めの気持ちに支配され内向的になりやすい。
  共感を基礎とした心理的支持・自助具の工夫による活動性の向上や余暇活動を行う。
  創造性を発揮できる種目(陶芸など)や患者の積極的な関心のもとに行われる内容
  (例えばパソコン通信など)が望ましい。

DMDに対する基本的アプローチ」

handicap軽減のため介護者及び移動手段の確保が重要であり、
 基本的には廃用性症候群の予防、変形の予防、学校との協力により教育問題を解決することが 大切である。

・歩行期間の延長がリハの最大の課題である。

1)Impaimentレベル:筋力維持、関節拘縮・変形に対する予防と治療、

                 リスク管理と心・呼吸機能の維持

2)Disabilityレベル:ADL(歩行、移乗、上肢)の維持、補装具の適応、

                  環境整備、心理的援助

3)Handicapレベル:教育、職業、QOL

 

1)歩行期の目標:歩行機能の維持

2)車椅子期の目標:上肢機能維持、脊柱変形防止

3)ベット生活期:手指機能、心肺機能維持

・理学療法上の注意点:

適度な休息をいれた運動療法。

自動運動、筋腱伸張運動、歩行等過負荷にならない程度に行う。

 

84)PMDと装具の関係:臨p386

障害の進行に合わせて、可能な限りADLの自立期間を延長することができる為の装具の処方を考える。

1)独立歩行が困難になり、歩行の距離、速度の減衰、転倒しやすい、
 関節拘縮の増悪など筋力低下が強くなると長下肢装具(KAFO)を処方する。
 徳大式バネ付き装具や膝固定式(リングロック)装具が有名である。

 装具の効果としては、歩行能の再獲得と維持、関節拘縮防止、バランス感覚の維持、
 廃用性筋萎縮の防止、呼吸循環系への好影響、さらに心理学的好影響もあげられる。

2)装具歩行が不能となった後も装具起立は続ける
 体幹筋力が弱いときや脊柱変形があるときは体幹コルセットをKAFOに追加することもある。
 また手押し 起立車や電動式起立車などの処方も考える。

3)歩行不能後の移動手段として車椅子を処方する。
 車椅子は移動手段として生活空間を拡大するだけでなく、上肢・体幹の機能訓練にもなる。

4)普通車椅子での自力操作が困難になったときは電動車椅子を処方する。
 重症になるとリクライニング機構を取り入れることも必要である。

5)その他、BFO、アームサポート、スプリント、電動歯ブラシなど・・・。

 

85)顔面神経麻痺の理学療法:リハビリテーション技術全書p825、p306、p1177

・脳卒中のときみられる下顔面筋のみの中枢性麻痺とベル麻痺のような末梢性の上・下顔面神経麻痺がある。

1,評価

a,MMT

b,RD

 電気的検査として電気変性反応:RD(reaction of degeneration)、i/t曲線、クロナキシー、筋電図がある。
 RDのないものは1ー3ヶ月、
 RDの有るものは6ー12ヶ月かかるとする。

2、治療プログラム

  発病直後              2ー4週間後
    ↓             ↓ 

 

顔面補助具による変形防止

 

 

温熱療法

 

 

顔面筋筋力増強訓練

 

 

低周波通電

 

 

a,補助具

 顔面用スプリント等必ずしも必要でない。

b,温熱療法

 発病初期の項部、顔面、後頭部の不快感、疼痛を取るのと局所血液循環を良くするために発病直後から行う。

c,筋力増強訓練

 鏡の前で行う。普通の筋力増強訓練と原則は同じである。

(末松による顔面筋筋力評価基準では、筋力0、Tのときはセラピストの指で介助しして他動的にし、要領は筋機能再教育と同じである。筋力Pではセラピストの指で介助して行い、筋力Fでは介助しないで自動的にやらせる。筋力Gではセラピストの指で抵抗を与える)

d,低周波通電

 発病後1ヶ月後くらいまで筋力増強訓練と温熱療法をして、それでもあまり変化のないときに低周波を始める。顔面筋は他の部位より痛みがあり、1mAより始め3mAまでである。

その他、

心理面:神経損傷の結果麻痺が回復せず不全のままの場合、特に顔面麻痺では表情筋のアンバランスの結果、美容上にも影響を与え本人のショックは大きい。

 

86)パーキンソン病の理学療法:臨p363、実p89

・基本方針は、運動機能の維持改善のための運動療法家族指導や家屋改造などを中心とした環境整備
趣味活動などを中心としたQOLの向上に対する働きかけが中心となる。
慢性進行性の変性疾患であるため、Yahrの重症度に応 じてリハ処方を行う。

理学療法の目的は、全身的な運動機能の低下を防ぐことにある

  Yahr1、2:立位で行えるパーキンソン体操と通常の生活を続けるためのADL指導

  Yahr3:パーキンソン体操、拘縮予防に対する関節可動域訓練、伸張訓練、姿勢矯正訓練
      拘束性肺機能障害予防のための呼吸訓練、姿勢保持障害に対するバランス訓練、
     応用歩行や方向転換訓練、ADL訓練
などが必要となる。

  Yahr4:Yahr3のリハ処方と同じだがこの時期が最もリハを必要とする時期である。
     感染症と転倒による骨折などの合併症に注意する。
     嚥下障害が出現しやすいので誤嚥による窒息や肺炎を未然に防ぐための工夫が必要となる。

 Yahr5:ケアが中心となる時期であり、リハも廃用症候群の予防のための訓練が主体
     
(斜面台による起立訓練、関節可動域訓練、呼吸訓練、筋力維持訓練等)、
     患者のQOL向上に努める。

 

87)ALSの理学療法:臨p373、実p108、リp194、講義プリント

ALSのdisabilityは、手麻痺、歩行障害、呼吸麻痺、言語障害、嚥下障害があり、それぞれに対処する必要がある。
身体障害者手帳を早めに作り装具や車椅子を迅速に処方できるようにする。
進行性の疾患であるため障害の進行に合わせて以下のようなプログラムを行う。「リp194表参照」

進行するにしたがい持久力がなくなるので、訓練は過度にならないように配慮する。
 進行例では自助具や装具、車椅子などの使用により工夫してADLの向上をはかることが大切であり、
 やがて末期には嚥下・呼吸管理が中心になる。

1)関節可動域訓練、拘縮予防、ストレッチの目的に合わせたROM exercise
2)廃用性症候群・疲労の防止(筋力低下した筋ではなく、その周囲の筋への筋  力増強は行う。変性を起こした筋への筋力増強はしない)
3)残存機能を利用した装具,自助具,車椅子,電動器具等の効果的な導入・利用
4)精神心理的サポート(QOLに十分配慮)

88)多発性筋炎の理学療法:臨p391

・最も大切なのは理学療法の開始時期で、回復期に入った時点での理学療法の開始が筋病変の予後を左右するとされている。
 しかし、激しい筋肉の自動運動をあまり早くから行うと、再生された新しい筋線維の破壊が生じるので、
 病勢に応じた適切なアプローチをタイムリーに行うことが重要となる。
 原則として次のような対応が考えられる。

 1急性期:安静と薬物療法が主体であり、理学療法は合併症、二次的障害の予防が中心となる。
  回復期:症状の再燃・憎悪に十分注意を払い、積極的な機能回復、動作能力の獲得をはかることと共に、
 生活環境を整備し、社会復帰に努める

  慢性期:薬物療法により症状の回復が得られても、障害が残る場合や再燃する場合が多いから、
 病院でのアプローチに留まらず、在宅での継続的な指導体制を組むことが望まれる

 変化する症状に柔軟に対応すること、後手に回らないように先を見越した予防的理学療法を展開することである。
 筋痛に対してはホットパック等のマイルドな温熱療法が効果的な場合もあるが、
 あくまでも全身状態を勘案し、医師と十分協議を行った上で実施されるべきである。

・理学療法の目的:廃用症候群を防ぐため、ROMや筋力の維持・改善をはかりつつ、
 筋力低下の程度に応じて効率的動作やADL獲得のための理学療法を行う。

・理学療法上の問題点:
 臨床検査データ
 使用薬剤
 病棟内安静度の確認
 関節や 筋の伸張は過伸張を起こさないように愛護的に
 Overwork weakness等に注意

89)脊髄性進行性筋萎縮症の理学療法

・理学療法は基本的にはALSに準ずる。重症度に応じて、
 1)関節可動域の維持及 び拘縮予防。
 2)廃用症候群・疲労の予防。
 3)残存機能を維持するために、装具・車椅子・自助具の効果的な導入。
 4)精神心理的サポートを考慮したリハ処方を行う

・脊髄性進行性筋萎縮症:南山堂医学大事典p1086

 脊髄の運動神経細胞の変性によって筋萎縮が出現するもので、
 運動ニューロン病と言われる疾患群がこれに属する。
 一次ニューロン障害を含むALSは含まない。

1)狭義の脊髄性進行性筋萎縮症:中年発症、感覚障害はない。
2)Werdnig-Hoffmann病:小児期に発症
3)ク-ゲルバーグ・ウエランダー病:幼児期あるいは思春期に発症

<参考>       (運動療法Up118-)

脊髄性進行性筋萎縮症(Werdnig-Hoffmann):臨床リハビリテーション小児リハビリテーションUp250

@診断

Werdnig-Hoffmann病が小児期に発症する病型である。
進行性の脊髄前角細胞、および脳運動神経核の変性、脱落を主体とする疾患で、
常染色体劣性遺伝形式をとる。

 T型は新生児期、乳児期早期に発症し、floppy infantの臨床症状を呈する。 
 floppinessは高度で他の疾患のような月齢による改善はみられない。
 脳神経核は病理学的にはすべて異常があるが、臨床上明らかなのは下部運動神経核である。
 したがって、摂食障害、嚥下障害、呼吸障害が早期からくる。
 坐位を獲得せず2歳以前に呼吸不全、呼吸器感染で死亡する。 

 U型は、6カ月以後に発症し、坐位までは獲得し以後の進行も緩徐である。

深部腱反射の消失、舌や骨格筋に認められる筋の細かな動き(筋線維束性攣縮:fasciculation)や
筋電図で脱神経所見(筋線維性攣縮:fibrillation電位など)を確認することで診断する。

A管理

(1)関節拘縮が早期に高度に発生するためその予防が重要である。

   肩関節の内旋拘縮、手関節の屈曲拘縮、MP関節過伸展、PIP・DIP関節の屈曲が特徴的である。

(2)下部脳神経核支配の筋群の萎縮も特徴であり、顎関節の拘縮による摂食障害も1歳以降は問題となる。
  また、嚥下障害のための口腔内分泌物の貯留、誤嚥、さらに呼吸筋群の萎縮から
  気道感染、無気肺を高頻度に生じ、呼吸管理が生命予後を決定する。

   U型は、思春期、成人まで生存しうるが、呼吸機能が予後を左右するため、呼吸訓練が重要である。

(3)顔面筋群の萎縮のため表情が乏しく、発声も微弱であり体動も少ないことから知能障害と誤られやすいが、
  知能は正常であり、残された機能を用いて意志の表出を盛んにする。

   この点を考慮して補助具の使用によりQOLを高める工夫も重要である。

<参考>

Floppy Infant

筋緊張低下の著しい乳児の総称

・全身特に近位筋群の筋緊張低下を示す乳児の総称。
 筋疾患・神経疾患・代謝性 疾患など多くの原因疾患(筋ジストロフイ、ウェルドニッヒ・ホフマン病等)があり、
 乳児期には単に筋緊張低下のみを呈する事もあるので注意を要する。

1)frog position,
2)traction responseの消失,
3)loose shoulder,
4)scarf sign,
5)double folding などを徴候として判定する。

主要臨床症状:
 1)奇妙な姿勢、
 2)被動運動に対する抵抗の減弱、
 3)ROMの増加

「蛙状肢位」:脳p71

全身の筋トーヌスが低下したときにみられる姿勢で、
 上肢は肘を屈曲し、肩関 節を外転・外旋し、下肢は膝屈曲、股関節外転・外旋する姿勢。
 FloppyInfant
の診断の1項目

「二つ折れ姿勢」

Double Folding。上体が容易に前屈して下肢についてしまう。
 筋緊張の低下でおこる。FloppyInfantの診断の1項目

「スカーフ徴候」

上肢を頸に回すと上腕が下顎に容易につき、頸と肘関節の間に隙間ができない。 
 FloppyInfantの診断の1項目。筋緊張の低下を示す。

 

90)末梢性進行性筋萎縮症:削除

91)Neuropathyの理学療法;リp221

・予後による分類と理学療法アプローチ

1)進行性(Charcot-Marie-Tooth病):機能の維持

2)非進行性(Polio):二次的な関節変形の予防 

3)一過性(Guillain-Barre症候群):機能回復を予見し原疾患による筋力低下の自然回復を阻害しない

 

92)重症筋無力症の理学療法

重症筋無力症は易疲労性の疾患であるため、低負荷・高頻度の筋力増強訓練を行う。
 過度の筋力増強訓練はOverwork-weaknessを生じるため逆効果である。

 対処療法として、抗アセチルコリンエステラーゼとステロイドを投与するため けいれん、骨粗鬆症などの副作用に留意する必要がある。

 

93)Overwork weakness:理学療法評価そのクリニカルアプローチp81

・過用によって筋力が低下するが休息により回復し得る可逆性変化。

・過用性筋力低下とは過度な運動によって生じる筋力低下のことを言う。

1915年のLovettによるポリオ患者での報告に始まる。

このような現象についてBennettらは、ポリオ患者の臨床的観察により、
ある一定期間の筋使用によって引き起こされた絶対筋力と筋持久力が持続的に低下する状態を“overwork weakness”と定義し、
筋力増強訓練によって改善しない点が廃用性筋力低下と異なる
としている。

同様の筋力低下は脊髄神経根障害、Guillain-Barre症候群、筋萎縮性側索硬化症、
多発性筋炎、筋ジストロフィー、多発性硬化症などの神経筋疾患
で認められる。
このように過用性筋力低下(overworkまたはoveruse muscular weakness)を来す疾患は多く、
単なる筋疲労による短期間で一過性の筋力低下は含まれない

また、診断名ではなく病態を示す概念であることに注意したい。

  過用性筋力低下が生じるメカニズムについては、原因疾患の多様性もあり、一概に述べることは困難であるが、
蜂須賀は神経軸索終末の消滅と直接筋障害を生じる筋原性変化が混在していると考えている。

  さて、いったん過用性筋力低下を生じると非可逆的な場合もあり、
 リハビリテーション場面でしばしば患者は、運動負荷量に比例して効果が高まると思いこむことが多いため、
 十分な説明が必要である。

臨床の場で注意すべきこと

@overwork weaknessは完全麻痺よりも不全麻痺の場合に、また回復初期などに生じやすいことである。
 したがって、運動は低負荷、多数反復訓練が必要である。

A患者の主観的な疲労感のみでなく、日々の動作、活動場面や運動前後で特定の筋を選び、
 筋力の差の有無をチェックすることで疲労の程度を把むこともひと つの方法である。

B回復安定期にはいっても一気に活動量をアップさせないこと。
 常に筋疲労、筋のこわばり感に注意すること。

C社会復帰後も一部分の筋線維のみが過使用にならないように、
 生活場面で自己 管理ができるように指導しておくことなどが、この対応策として考えられる。

 <参考>

Benettはoverwork weakness(過用性症候群)を
「ある期間の仕事の結果、筋の絶対筋力の耐久性の低下が持続する状態である」と定義
している。

 このような状態を起こしやすい因子として、
a)筋に同等もしくは過度の最大筋力や耐容が繰り返し要求されている場合
b)筋の最大の仕事が筋血流を促進させていかないとき
c)個体が神経支配の影響と反応の拡がりとの差に耐えているとき
d)初期の神経支配の増大がみつけられる変化よりも低い場合
e)運動を実施するためにモチベーションが高すぎ疲労感を否定する場合
  などをあげている。        (菊地延子:臨床理学療法マニュアル、p394 南江堂 1996)