第28回
2005年11月30日

千葉大学医学部付属病院 Ai 事始め ー
Ai大学モデル始動(1)放射線科の立場から

千葉大学附属病院放射線科
山本 正二

題名を決めてから今までの1000字提言を読み返すと、第16回大橋先生の題名と似通ったものになってしまいました。しかし、Ai学会の認定施設を閲覧すると大学附属病院施設での登録は千葉大が初めてであるようです。お許しを頂き、病院で実際に稼働に至るまでの経緯などについて述べさせて頂きたいと思います。

ご存じの方が多いかと思われますが、千葉大ではまず2004年1月に法医学教室の岩瀬教授が中心となって行政解剖前のCT検査を実施する運びとなりました。この話もまずは附属病院内の設備を使用して実施できないかと検討したのですが、各所からの反対などがあり、実際の運営はモバイルCTを民間業者から借用して実施するという、今考えるとかなり革新的な方法での検査となりました。その後病院内で何とか実施できないかと模索していたのですが、様々な壁に突き当たり1年以上計画が頓挫している状態でした。

転機となったのは私が応募していた“病理解剖にかわる死因解明画像診断法の多施設共有ネットワーク構築と診断精度の向上”という題名での文科省の科研費が通ったことがまず一番大きな出来事だと思います。応募の題名からわかるように、今までの法医学教室との連携とは別に、病院内の病理学教室との連携が必要となりました。千葉大学の場合、実際に病理解剖を実施している教室が3つあり、それぞれ当番制で、解剖を行っています。各教室により温度差が微妙にありましたが、実際の画像を見せながらの説明をするとある程度納得していただけたようです。ただ解剖を実施する側とすると、今までの検査開始時間がずれ込むこと、CTで病気があると判断された部位をすべて詳細に解剖し、検査時間が延長する事は困るという意見があがりました。また、放射線技師からの意見としては、通常の検査時間にご遺体が患者様の前を通るのにはやはり抵抗があるので、検査時間をまずは通常業務が終わった夕方にしてほしいとのことでした。これらを考慮すると、検査の実施は、亡くなられた当日の夕方から行い、病理解剖は翌日の9時からという線から始めるのがまず妥当であろうとの結論に達しました。この場合、遺体の保管場所が問題となり、看護師さん側からは病棟に何時までもご遺体を置いておくわけにはいかない。霊安室までの搬送はするが、検査の実施に際して、そこからCT室までの搬送について、私たちは関与できないだろうとのコメントが来ました。ここの1000字提言で死後看護についての報告もあり、どういった形で看護師さんの協力が仰げるかという点が今後の問題になるかもしれません。

病院内の各科へのアナウンスを実務者会議で行ったところ、やはり科によって温度差がありました。会議では死亡検案書を作成した後に、CT検査を行った場合、検案書とCT所見に相違があった場合どうすべきかという質問がありました。これに対しては、 “主治医も実際にCT検査に立ち会い、放射線科の読影医と所見のすりあわせを行ってから検案書を作製すれば問題がないでしょう” とコメントしました。当院ではやはり癌患者が剖検に回る率が高く、生前に撮像したCTが剖検の3ヶ月前などという場合が多々あります。この点に対して、臨床医は時相のある程度一致した画像所見と病理所見が対比できるとかなり興味を持ったようです。逆にCTをまず撮像し、この部位に病変があるから是非解剖を実施したいとご遺族を納得させる道具としても利用できるかもしれないという意見がありました。剖検率がかなり低下している現状ではこの点をもっとアピールして積極的な運用を図っても良いかもしれません。またこれも当然な意見なのですが、病理解剖まではしたくないのだが、遺体を傷つけないCTだけなら遺族が納得するかもしれないという意見もありその場合はどうしたら良いかと質問がありました。この点については今回の検査の主旨とははずれますが、かなり強い要望として今後あがってきそうです。こちらも今後の課題としたいと思います。

色々書きましたが、やはり重要なのは各々の部署への根回しであり、コメディカルとの協力体制を整える事が必要だと痛感させられました。各施設での検査導入の端緒となれば幸いです。