第26回
2005年9月30日

オートプシー・イメージングと機器開発

東京女子医大 法医学教室
澤口 聡子

『PMI(死後画像診断)はAiのプロトタイプであるが、実は全く異なる概念であり、 Aiの概念が覚醒した時には、PMIはAiに内包される(江澤英史 100万人のAi入門 篠原出版社より)。』

本提言では、標題でもAiを用いているが、実際にはPMIに近い概念で用いて、論を進めている箇所も多いと思われる点をご留意戴きたい。この提言の趣旨は、死後画像診断が試みられてから既に20年以上経過している現在において、死後画像診断専用の機器開発を考慮してもいいのではないか、という主張を提示することにある。

既に、そのような趣旨の先行する主張があり、1995年(今から12年前)、第79次日本法医学会総会における高津光洋教授の特別講演では、バーチャルリアリテイや多次元シミュレーションによる高次元画像データ処理が、実現されている。又、2003年10月19日の朝日新聞では、一回のCT撮影で臓器を一括診断する新システム開発が試みられるとの記事が掲載されており、4年後即ち2007年である今年が試作の年として提示されている。

ここでは、上述の試みとは視点を変えて、新たに、死後画像診断専用の機器開発に関して、次のような可能性を指摘したい。東京女子医科大学医学部法医学教室で司法解剖を施行するようになってから、既に10年以上が経過しているが、最近2年間は、当大学放射線科学教室のご協力を得て、司法解剖を施行する上で必要となる場合即ち盲管銃創や虐待における骨折診断等に、一般患者用の機器を用いて、単純X線、CT等の画像診断を剖検前に施行してきた。このような流れの中で、東京女子医科大学高倉公朋学長から、X線についてもあるいは磁場についても、死後においては照射線量や被爆線量を生前より高めてもさしつかえない可能性があることが指摘され、この旨日立基礎研究所の小泉英明氏にも伝えられた。つまりより高解像度の画像が期待できる機器を開発し得る側面がある。この場合、遮蔽の設備の問題や死体損壊の可能性あるいは小型化が可能かどうか等の問題があり、日立メデイコで検討してみてはどうかという様な具体案も出された。このような新たな視点に基づく、Ai専用の機器開発が試みられてもよい時期に来ていると思われる。