第2回
2003年12月1日

新医師臨床研修制度のCPC研修でAiの活用を!

日本医科大学付属病院病理部
田村 浩一

インターン制度が廃止されて以来36年ぶりに、日本の医師臨床研修制度が抜本的に改革された。この中で、CPCへの症例呈示とレポート作成が必修項目となっている。全国で1800名余しかいないの病理専門医が、毎年8000名の研修医に対するCPCの面倒をどのように見るか、さまざまな検討がなされているが、現状で準備が整っている研修病院は少ないと思われる。病理医は「CPC」研修と聞くと「病理学」を教えなければと思うが、これは「臨床研修」の一環であり、病理研修ではない。また学生時代から顕微鏡を見ると頭痛が…というような研修医もいる中で、各科をローテイトする臨床研修医全員に、一緒に顕微鏡を見ながら「病理学」を伝授できるはずもない。剖検例を用いて臨床病理学的に症例を総括させ、全身を診ることを学ばせることが重要であり、研修医に病理所見のとり方を教え込む必要はないのである。ただし、そのためには最終剖検診断の内容が十分に理解されなければならない。

ここでAiの活用が期待される。病理医にとっては臓器の肉眼所見はお馴染のものであり、画像を見れば肉眼所見が思い浮ぶし、肉眼所見から画像所見を想像することもある。しかし始めて剖検に立ち会うような臨床研修医に、肉眼所見をもとに臓器障害を説明しても、どの程度の理解が得られるのだろうか。彼らにとって、肉眼所見よりも画像所見の方がはるかに馴染み深い。先にAiで症例の全身所見が把握できれば、病理医が提示する組織所見を含めた最終剖検診断への理解も深まり、症例を臨床病理学的に総括する研修目標の達成にもつながると思われる。もちろんAi所見と剖検所見の対比は臨床側の画像診断の教育にも有用であるし、病理側もAiの併用は症例から得られる情報量を増して剖検を効率化するだけでなく、研修医指導がかなり楽になるはずだ。

ただしCPCレポートにAiを活用することを病理医に呼びかけても、院長を説得して導入する所まではなかなか至らないだろう。Aiを推進するためには、年間8000名生まれる臨床研修医をターゲットにすべきである。Ai画像と剖検の肉眼所見を並べたレポート例を呈示すれば、興味をもつ研修医は少なくないはずだ。彼らがAiの素晴らしさに気付き、CPC研修にAi導入を望む者が増えれば、研修施設として考慮する所が増えるであろう。そしてAi世代として育った研修医が指導側に立つ時こそ、Aiが「常識化」するのではないだろうか。