第1回
2003年12月1日

Autopsy imagingと臨床(医療)監査

群馬大学大学院医学系研究科・応用腫瘍病理
中島 孝

Autopsyimaging(Ai)学会設立にあたり、「この学会は医療の発展にどのように役立つ学会なのであろう」、と考えるのは当然と思う。この学会の構成は「Autopsy」に直接関係する病理学、法医学、解剖学に携わる方々、「Imaging」に直接関係する放射線科や核医学の方々が中心となることは予想できるが、この学会を通して、今後どのようなことができるかを病理の立場から考えてみることにした。

昭和63年の「病理解剖指針について」をみると、「死体解剖保存法」よりは具体的に、病理解剖が「病死した患者の死因又は病因及び病態を究明するための最終的な検討手段」であり、「刑法190条の死体損壊罪の適応を免れる」と記載されている。病理解剖はこのような目的のために行なわれてきたのであるが、現在、剖検数の減少という世界的共通の問題に晒されている。この最大の原因は臨床におけるImaging技術の著明な進歩にあることは間違いない。Ai学会は、ほぼ成熟して傾きかけた「Autopsy」、片や日の出の勢いの「Imaging」が一緒になることであり、「Old+New=Advance」となることを期待したい。

これまで、病理は医療において診断業務の他に、医療監査の重要な担い手であると自負して来たし、日本病理学会もその方向を現在も指向している。このAi学会活動の一つの方向が医療監査であることは衆目の一致するところであり、しかも、病理解剖単独よりは、集学的であり、より正確に行なえる。ところが、この医療監査という言葉の本来の意味は、法律的には我々が考えている内容とは異なるようである。欧米ではMedicalauditとClinicalauditという2つの言葉があるが、どうも我々が考えている医療監査はClinicalauditに近いように思われる。Clinicalauditは「臨床活動の質に対する系統的ならびに批判的解析」を行なうものとされており、まさに、このAi学会の使命の1つがこのClinicalauditではないかと考え始めている。