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すべての医療機関の禁煙化は急務(保団連新聞2004年11月25日号掲載)

久芳康朗(青森県保険医協会理事)

 ほとんど全ての施設における受動喫煙防止対策を義務づけた健康増進法が施行されてから一年半が過ぎましたが、今年に入って青森県でも学校の敷地内禁煙や市役所など公共施設の建物内禁煙の動きが加速しています。

 一方、保団連東北ブロックで会員に実施したアンケート結果では、医療機関の敷地内禁煙は二十六%、建物内禁煙が四十一%で、合わせて六十七%に留まっています。ここ数年で急増しているとはいえ、回答率が二十一%だったことを考慮にいれると、実際にはもっと低率であることは間違いありません。

 今年七月に判決が下された江戸川区受動喫煙訴訟では、「健康被害との法的因果関係はともかく、放置したのは安全配慮義務に違反する」と認定し、慰謝料の支払いを命じました。タバコ病訴訟弁護団の伊佐山芳郎氏は、この判決が健康増進法施行前の違反を認めた点に着目し、「施行後の事案ならなおさら責任が問われやすい。現在十分な対策をしていない企業や飲食店などに対しては強烈なインパクトがある」と述べています。

 医療機関にもこの判例が適用されるのはもちろん、タバコの害を教え、健康を守る場所である医療機関、学校、行政施設は完全分煙では不十分で、禁煙でなければいけません。喫煙室を設置するということは、医療機関が喫煙者に対してタバコを止めさせるのではなく吸い続けるための環境を提供することを意味し、許されることではありません。

 この三分野のうち、学校と行政施設の禁煙化が加速しているのに対し、医療機関は取り残されつつあるのが現状ではないでしょうか。

 私たち医療者は、タバコ税大幅増税や屋外タバコ自販機撤去など、有効なタバコ抑制政策の推進に声を上げていかなくてはいけない立場にありますが、肝腎の医療機関が禁煙になっておらず、医師や歯科医師が人前で喫煙しているという事実が大きなネックになりつつあります。喫煙医師・歯科医師はプロとしての責任を自覚し、喫煙者特有の甘えから脱却して禁煙に取り組むべきでしょう。

 保団連を含む各医療団体・学会は、全医療機関の禁煙化への明確な指針を示し、早急に成果を上げていくことが求められています。

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