PHISEM

PHISEMの概要

東京大学部局横断型プログラム「こころの総合人間科学」
Program for Human Integrative Science and Education of Mind (PHISEM)

PHISEMの概要

人間のこころは多種多様であり、様々な側面があります。そのため、人間のこころを真に理解するためには、各分野の研究者が手に手をとり合う必要があります。遺伝子、脳構造・機能、認知・行動、大規模調査など、様々なレベル、多様な側面からこころの問題の解明に向けて研究が進んでいます。しかし、分野間のつながりは、これまで十分ではありませんでした。たとえば、近年、経験や環境により遺伝子が修飾されたり、遺伝子発現が制御されたりすることが明らかになってきていたり、幼少期の環境や発達が認知症などの老年期の状態に影響を与えることなどがわかってきており、基礎研究と臨床研究の繋がりがより直接的なものになりつつあります。神経科学者や認知科学者が精神医学や臨床心理学の知識と経験を必要とし、また、基礎研究に基づく臨床応用が求められています。社会の中でも、こころの問題は注目を集めています。うつ、発達障害、認知症といった精神医学的な問題から、いじめ、虐待などの社会問題まで、幅広くとりあげられるようになると同時に、こころの研究に対する期待が高まってきました。

「こころ」は個々人が持っているものですが、人間は一人で生きていくわけではなく、そのこころは社会、文化、教育環境の中で、様々な人々とのやりとりを通じて育まれていきます。「社会や環境の中のこころ」という視点はこころを理解する上で不可欠です。また、人間特有だとされている高度な社会性や言語も、進化の過程の中で形作られてきたものであるため、個人の生涯発達という時間軸とともに、より長期的な時間軸に基づき進化適応的な枠組みで捉える必要があります。人間のこころが他動物種のこころとどれだけ似ていてどれだけ異なるのか、科学的に検討することで初めて人間のこころの特異性が明らかになります。

現在、人間社会は種々の環境問題や社会問題に直面しており、「持続可能な社会」の形成が急務とされています。それらの問題の多くは、自己利益の追求などの生物が元来備えている利己的な特性によるものですが、人間は同時に自分を犠牲にしてでも見知らぬ他者を助けるという利他的なこころも備えています。利他的なこころが発揮される社会の実現には、まずは、人間のこころの利己的、利他的な側面、倫理や道徳性に関する基礎研究が不可欠です。近年では、経済学の手法を用いて人間の行動やこころを検討する行動経済学などの分野も出現しており、そのような他分野融合によって、社会問題の解決の糸口を見つける一助となることが期待されます。

近年では、上記のような負の側面だけでなく、こころの健全な発達、自我や価値観の形成、人間性の成熟など、正の側面も注目されてきています。せっかち、几帳面、おしゃべりなど、人間のこころには多様性があります。自身の特徴を認識し、社会の中で自分の個性に合った適応戦略を見つけていくことは、多様性が増す人間社会では重要なことです。 そして、精神疾患および諸々の社会問題は、個人や社会の不適応と捉えることもでき、逆に考えれば、人間のこころを真に理解することによって解決できるはずです。しかし、こうした仮説はまだ推測の域を出ず、分野間の協調によって初めて明らかにできる大きな問いです。まさに今、こころの多様性と適応について「総合人間科学」の枠組みの中で、多面的な視点を持ち、科学的研究を進めることができる人材が必要とされています。

本教育プログラムでは、学内のこころの科学に関わる教員が結集し、心理学、認知神経科学、実験社会科学、発達精神医学等の融合、および基礎研究と臨床研究の融合を通して、東京大学学生に対して、部局を超えた最先端のこころの総合的人間科学教育を行うことを目的としています。所属学部を超えた学生同士のディスカッションを通じて、履修学生の長期的な視野の拡大を図り、こころの多様性と適応を科学できる人材の育成を目指します。

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