小野富三人教授(大阪医科大学生理学教室) インタビュー


今日は、大阪医科大学生理学教室の小野富三人(Ono Fumihito)教授のインタビューをご紹介します。
東京大学医学部での学生時代のお話、アメリカでの研究生活のお話、現在の研究、医学生が生理学を学ぶ意義、などなど様々な貴重なお話を伺いました。

◯小野富三人先生 略歴
平成3年 東京大学医学部卒業
平成8年 東京大学大学院医学研究科修了
平成10年 ニューヨーク州立大学(SUNY at Stony Brook)助教授
平成15年 フロリダ大学(University of Florida)助教授
平成19年 米国国立衛生研究所(National Institute of Health)室長
平成26年 大阪医科大学生理学教室教授

Q. 生理学は、小野先生にとってどんな学問でしょうか?
A. ノーベル賞で医学生理学賞ってあるでしょう?なぜそう言うかというと、医学と生理学は互いに対応する学問だからです。医学は病気を扱う学問、生理学は病気ではない正常な状態で身体がどう動いているかを扱う学問なのです。
東大では、4年生から臨床医学の勉強が始まりました。病気が入ってくると、やっと勉強が楽しくなるのが普通の医学生ですが、私の場合は、人体の正常の仕組みを理解する科目が終わってしまったのが寂しかったです。
病気のメカニズムを知るためには、正常なメカニズムを理解している必要があるので、臨床にとって生理学は必要です。また一方で、生理学それ自体がとても面白い、というのが生理学の良いところなのです。

Q. 小野先生が、生理学の研究の道に進んだ理由はどんなものだったのですか?
A. そんなに劇的な理由ではなかったですよ。医学部3年生の生理学の講義が面白くて興味を持ったのです。そのあとの基礎研究室配属で、脳の研究室に入って神経生理学を深く勉強したことがきっかけで、特に神経に興味を持ちました。大学卒業後は臨床研修をしましたが、やはり生理学が面白いと思い、研究の道に進むことにしました。

Q. 小野先生が学生の頃から興味を持たれたという、神経生理学について詳しく聞かせていただけますか?
A. 神経生理学は、脳、記憶、学習といった、興味深いテーマが多いです。神経が面白いと思ったきっかけは、ヒューベルとウィーゼルという、ノーベル賞を受賞した研究者の研究について、実際に見てきた東大の高橋國太郎先生から聞いたことでした。物体を見たときに網膜のどの神経細胞が発火するか、物体が上方に動くとその動きに反応してどのように発火するか、というように、物体が見えることと神経細胞の発火との関連を発見した研究でした。当時の私には、物が見えるということが神経細胞の発火で表せるということが衝撃的でした。
基礎研究室に配属された時から、脳というのは面白いな、と思っていました。神経内科で失語症専門の先生が、学生を集めて抄読会をやっていて、私も参加しました。そこでの、失語症の話、脳の左右のつながりを切った人の話、右脳と左脳には全く別の人格があるといった話に興興味をそそられました。
いろんなところに顔を出せるのは学生の特権です。そうやっているうちにこの道に入っていましたね。

Q. 生理学クイズ大会を2017年の春に大阪医科大学で開催しますが、小野先生は、生理学クイズ大会に対してどんな期待を寄せていますか?
A. 生理学クイズ大会は、クイズをやるということ自体に意味があると思います。生理学を勉強するモチベーションになりますし、自分でいろいろ考えますから。また、英語でやるとなると、英語が身につくので将来のためにもなります。
大学の生理学の授業で扱う内容には限りがあります。クイズ大会を通してより深く生理学を学べるというのは魅力ですね。生理学は、臨床の全ての科目において基礎になるので、深く理解しておけば必ず役に立ちますよ。
同じ生理学をテーマにして、クイズ大会に参加している他大学の医学生、他の国の医学生と交流することができるのもまた魅力です。発展途上国の大学でも学生がこんなに優秀なのか、と感じることもあり、良い刺激になるでしょう。

(取材・構成 安原千晴・井上鐘哲)
(公式Facebookに以前連載したものを編集・再録しました)

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