形態形成セミナー

丸山千秋先生
公益財団法人東京都医学総合研究所
神経回路形成プロジェクト 主席研究員

「哺乳類大脳新皮質の発生、進化におけるサブプレート層の役割」
The developing subplate layer is critical for switching the migration mode of newborn neurons and evolution of neocortical layer structure

日時:2014年8月1日(金)17:30~
場所:慶應義塾大学信濃町キャンパス 総合医科学研究棟3階会議室3


要旨
大脳新皮質のサブプレート(SP)層は、発生期に最も早く生まれて成熟するSPニューロンと、それを取り巻く細胞外基質から構成されています。SPニューロンは、胎生後期から新生仔期にかけて皮質-視床間の投射、および最初期の神経回路形成に重要な役割を果たしていることは知られてきました。しかしながら回路形成がおこる前の段階、すなわち胎生中期の新生ニューロン移動における役割については調べられていません。我々はこれまでにRP58転写抑制因子のKOマウスの解析で、RP58欠失ニューロンは多極性—双極性変換に障害が見られ、サブプレート層の直下で移動ができない状態になることを見出しています。ほかにもSP層を越えられない表現型を示すKOやノックダウンの遺伝子も多数報告があることから、SP層は移動ニューロンが乗り越えるべきバリアとなっている可能性が示唆されます。そのバリアを越えてロコモーションモードへとスイッチするためのシグナルは何なのか?この問いに対し、子宮内エレクトロポレーション、スライス培養のタイムラプスイメージング、および免疫組織染色法などを用いて、SPニューロンの、新生興奮性ニューロンの放射状移動における役割を解析しました。その結果、SPニューロンの神経活動および、NMDA受容体、PSD95を介したシグナル伝達が、遅生まれニューロンのロコモーションモードヘの変換に重要あることが示唆されました。さらにはロコモーションの移動モードを持たない爬虫類、鳥類などとの共通の祖先型脳から6層構造を持つ哺乳類新皮質への進化の過程でSP層が重要だったのではないかという仮説についても触れたいと思います。